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旬の食材を使った丁寧な食卓が眼福!夫婦の食卓を描いた漫画「盛りつけ上手な円山さん」が話題

  • 2023年1月6日
  • Walkerplus

寒い時季の定番料理といえば、鍋。具材を何にするのか、スープはどんなものにするのか、締めはご飯にするのか麺にするのか…鍋料理はバリエーションが豊かなだけあって、想像するだけでも楽しいが、ある漫画で描かれた夫婦が選んだのは“獅子頭(しーずーとう)”と呼ばれる大きな肉団子と白菜がたっぷり入った中国風の鍋。食材の調達から調理、食べる過程を丹念に描いた漫画は、読者の食欲をかきたて、Twitterで1.5万いいねの反響を呼んだ。

描いたのは漫画家の蟻子さん。作品は「盛りつけ上手な円山さん」としてWebメディア「MATOGROSSO(マトグロッソ)」で連載中だ。在宅ワーカーの夫婦2人で旬の食材を使った料理を作り、食卓を囲む。漫画としてはそれだけのことなのだが、2人が食事をしているところを見るとお腹が空いて自分も同じレシピに挑戦したくなってくる。そんな魅力を持つ「盛りつけ上手な円山さん」の誕生きっかけや、制作のこだわりなどを蟻子さんに聞いた。

■メニュー選びから食べるまで。2人で作る食卓はきっと一番楽しい
「盛りつけ上手な円山さん」は編集担当からの依頼で制作がスタートしたのだそう。しかし、そのコンセプトは依頼時からは少し変化しているのだとか。

「依頼をいただいた時点では『夫が作った料理を夫婦が食べる』というコンセプトでした。内容を詰めていく時に、夫が1人で作っているより、夫婦2人一緒に作ってできあがった食卓のほうがおいしく感じられると思って、2人で一緒に料理をする話になっていきました。メニュー決めも2人で考えたほうがアイデアが広がりますし、5月のエピソードで描いた『かつおの卵黄漬け丼』では、妻のねりが翌朝にアレンジしているんですけど、そういうのも2人いるからこその広がりだと思っています」

「盛りつけ上手な円山さん」の最大の魅力はなんといっても、おいしそうな料理の絵だが、蟻子さんにとって“ご飯”は特別思い入れの強いテーマではなかったのだそう。

「企画をいただいた当時、Twitterでドラマの感想絵をアップしていたんですけど、その時に食卓の絵をちらっと描いたことがあったんです。それを担当さんがご覧になってご依頼をくださいました。もともとご飯の絵を描くことが取り立てて好きで…ということはなかったんです。ですが、デビュー作ではアイスクリームが出てくる話を描いていたり、今回もこうやってご飯の漫画を描くようになって、自分の中で“ご飯”というテーマは腐れ縁のような感じですね、描き続けることで愛着が湧いてきました。漫画内で登場する料理やレシピは私が考えているんですが、料理についても特別やるということはなくて、人並みです」

人並みと話す蟻子さんだが、過去ダイエットをしたことがあり、約2年で20キロほど体重を落とした経験を持つ。その時の経験が「盛りつけ上手な円山さん」でも生きていると話す。

「ダイエットを経て食べ物観が変わったんです。野菜をいっぱい食べるようになったので、それまで野菜をただ“なんとなく”食べていたのが、自分は白菜が好きなんだとか、春菊ってこう料理すると好みになるんだとか、そういうのがわかってきました。食材への目線とか、旬の食材の選び方の部分は『円山さん』に反映されているかもしれません」

見せ場というべき料理が出来上がったシーンの構図も、ダイエットで磨かれたもののようだ。

「ダイエットのために食事の写真を記録する習慣があって、そうすると段々『この角度がいいな』と写真としてこだわる部分が出てきたんです。そういう経験の積み重ねがご飯の見せ方の構図を考える時に役立っていると思います」

タイトルが“盛りつけ上手”なのも印象的だが、これにはどんな思いがこめられているのだろうか。

「実はタイトルは担当さんが考えてくださったものなんです。タイトルよりも先に数話描いていて、タイトルに付けられそうなキーワード…献立とか、料理上手とか…そういったものをたくさん出して、それで付けてくださったタイトルなんです。なので、盛りつけのハウツーを期待されると申し訳ないというのはあるのですが。ただ、毎話、食卓を大きく見せてはいるので、そこを“盛りつけ”と思っていただけたらと思います(笑)」

■料理に集中してもらうために。擬音語の使いどころにも工夫
タイトルにある通り、主人公夫婦の名字は“円山”であることはわかるのだが、夫婦はお互いを名前で呼び合うことはほとんどなく、2人とも在宅仕事をしているとはあるが、仕事の詳細についてなど、細かい個人情報については描かれていない。

「キャラ漫画ではないので、読者の方に感情移入してもらうためにもキャラクターの匿名性は意識しました。漫画の中で一番料理に注目して欲しいというのがあって、それ以外の要素は極力省いていった感じです。ただ、設定としてはいろいろと決めてはあります」

今後、エピソードとして2人の設定について言及する可能性があるか聞くと「出てこないと思います(笑)」とのこと。あくまでも主役は“料理”という思いがあるからだそう。料理に注目を向けるために、ほかにもこだわりのポイントがあるそう。

「料理中のシーンにあまり擬音を入れないようにしています。ジュワ~とか描いてしまうと、絵を描くのを怠けてしまうので。ジュワ~と描かなくてもジュワ~を感じられるように頑張って描いているので、円山さんたちにも料理に集中してもらいたいし、読者の方にも伝わったらうれしいです。会話パートになると書き文字多いですけどね。“食材が料理になる”。その過程を見せたいというコンセプトがはっきりしている漫画なので、そのベストな方法を探っている感じです」

フルカラー連載なこともあり、作画には時間がかかっているのではないかと聞くと、フルカラーなこと自体は労力にさほど影響していないのだとか。

「料理の過程で、どのシーンを作画にするのかという部分に苦心していますね。工程のつなぎをどう表現するのかとか、絵にしてみたら『塩入れ忘れた!』と途中の工程が抜けてしまったり…。『盛りつけ上手な円山さん』に登場させる料理は毎月考えているわけではなく、最初に1年分ガチッと決めたんです。月ごとに食材とか煮る・揚げる・炒めるなどの調理方法のバランスを見て考えたんですけど、いざ描くにあたって何個かアドリブでメニューを変えたりもしています」

その苦労の甲斐があるのだろう。読者の中には、漫画に触発されて、同じレシピを作ってみたと報告してくれる人も多いのだとか。

「漫画のレシピで作ってみたと料理の写真をアップしてくださるのはうれしいことです。獅子頭は絵よりも素敵!という写真を読者さんからたくさんいただきました。漫画に登場させているレシピは自分でも作っているんですけど、私もまた食べてみたくなりましたね。私は漫画として一つの例しか提示できないんですけど、盛りつけをこうしてみたとか、味付けをアレンジしてみたとか、漫画から発展した形を見せてもらえるのが楽しいです」

最後に蟻子さんに今後の目標も聞いた。

「ずっと漫画を描いていたいです。料理漫画だけではなく、キャラクターをしっかり描く話も手掛けてみたいです。毎日漫画を描いていられるように、力をつけて今後も頑張っていきたいです」とのこと。

4月のエピソードから連載がスタートした「盛りつけ上手な円山さん」。1年分のレシピが集まる2023年3月のタイミングで単行本の発売も決まった。旬の食材を取り入れた丁寧な食卓。温かな時間を円山さんたちと楽しむのもいいかもしれない。

取材・文=西連寺くらら

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