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【漫画】自閉症と診断されるまでを描いた漫画が話題。声をかけても指差した方を見ない娘に不安を覚えて…

  • 2022年9月25日
  • Walkerplus

自閉スペクトラム症の娘・まゆみちゃんの様子を描いた漫画「まゆみに自閉症の診断がつくまで」。2022年4月に投稿を開始以来、6月には1万フォロワーを突破、9月には2万人以上のフォロワーを獲得するなど、同じ境遇の親御さんを中心に大きな反響を呼んでいる。まゆみちゃんとのこれまでや、どんな思いで漫画を投稿しているのか、作者であるにれさん(@nire.oekaki)に話を聞いた。
※本作で紹介しているものは、個人の体験談でありすべての人に当てはまるものではありません。

■子供の発達に悩む人たちに「あなただけじゃないよ」と伝えたい
漫画を描き始めたきっかけは、お子さんの発達に悩んでいる親御さんに「あなただけじゃないよ」と伝えたかったからだというにれさん。まゆみちゃんは、3歳前に自閉スペクトラム症と診断されたそうで、漫画では、その診断を受けるまでが描かれている。にれさんから見たまゆみちゃんは、「別次元に目が行っている超絶マイペース人間……というイメージでしたが、近ごろは母親である私と同じ世界を見てくれているなと感じることが増えてきました。前触れなく急に泣いたり大笑いしたりして困らせたかと思えば、次の瞬間に抱きついてきて『だすきー』(大好き)と言ってくれたり、とにかく予測不可能で飽きさせない子です」とのこと。

にれさんは子育てに奮闘する一方で、まゆみちゃんの自閉スペクトラム症の診断をきっかけに、大学の通信学部に編入学して臨床発達心理を勉強中。また、乳幼児食指導士と児童発達支援士の資格も取得したというから驚きだ。

まゆみちゃんの発達について最初に違和感を覚えたのは、1歳ごろ。「散歩中に犬を見つけて『見て、ワンワンがいるよ』と話しかけた際、指差した方を見ようともしなかった時です。同じころ、名前を呼んでも振り返らないなど、耳は聞こえているのに、人からの働きかけに応じる気配が一向に見られないことが日常の中で積み重なっていくうちに『ちょっと他の子と違うな』と思い始めました」

心配するにれさんに対し、旦那さんは楽観的だったという。「その後、障害が確定した時はショックを受けていましたが、ありのまま事実を受け入れてくれたので、夫婦で子育ての方針が食い違うこともなく同じ方向を向くことができました」

大きな転換点となるのが、1歳半健診。健診前の心境を聞くと、「不安を抱えて子育てする中で、『もしかすると発達がゆっくりなだけで、1歳半健診までには他の子に追いつくかもしれない。そうであってほしい』と願っていた部分があったので、とうとう客観的な評価が下される時が来たという思いでした」と答えてくれた。

■我が子と心が通うことはあるのか…不安に押しつぶされそうになった健診の帰り道
1歳半健診では、臨床心理士さんとの相談も経て、発達について「心配ですね」と言われる結果に。「『やはり引っかかってしまった』ということは大きなショックでしたが、夫がぽやんとした人なので、『私しか方針を立てられる人がいない!』と気負っていました。その結果、まゆみの発達を促すことがより明確に第一課題となり、日々の遊びの中でどうにかまゆみの成長を促そうとアレコレ頑張っていました。とにかく本人を楽しませることが脳の発達に大事だと考え、まゆみの興味のありそうなものには見境なく飛びついては空回りを繰り返していました」

心理士さんは「様子を見ましょう」と言うが、にれさんの希望により、子供の発達を促す支援である療育も開始することに。「『今、家庭でやれることはもう全部やってるよ!』という気持ちが強く、様子を見ることで解決するようには思えませんでした。何かの記事で見た『早期発見・早期療育』という言葉が頭に残っていて、明らかに問題があるのだから、少しでもまゆみの将来を明るくする可能性のある選択をしたいという一心で支援を申し込みました。その後のまゆみの成長を振り返ると、我が家の場合は1歳半健診の時点で申し出て本当によかったと思っています」

強く印象に残っていることを聞くと、「1歳半健診の帰り道、信号待ち中にどうしても赤信号を見てくれないまゆみを前にした時のことです。信号機を指差して『赤だね、止まれだよ』『青だね、進もうね』と毎日話しかけていましたが、やりとりが成立したことはなく、この日もいつもどおりに私を無視して歩こうとするまゆみを抱き止めていました。ただ、この時は『やっぱり異常があったんだ』という沈んだ気持ちでの帰路だったせいか、これまでの問題行動や抱えてきた不安が一気に思い起こされ、『この子は信号を見ていないのではなく、母親の私が目に入っていないんだ』と突き付けられた気がして涙があふれてしまいました。『今後、我が子と心が通うことはあるのだろうか』と思うと足元が崩れていくようで、この帰り道の光景を一生忘れることはないだろうと思うくらいショックでした」

しかし、このエピソードには後日談があるそう。「それから3年近く経つ現在、当時の私の思いを裏切ってくれるように、まゆみと心の通う瞬間がたびたび生まれています。まだ言葉でのやりとりは上手くできませんが、笑顔で鼻を寄せてきたり、首を絞める勢いでギューッと抱きついてくれたり、不意打ちで頬にキスをくれたり、頻繁に愛情を示してくれるようになりました。互いに大切に思い合う気持ちが伝わっていると感じています」

普段のまゆみちゃんは、かなり活発で驚かれることも多いという。「4歳を過ぎたころから若干落ち着いてきましたが、部屋の中を走り回る、親に飛びついて一緒に倒れる、でんぐり返りで移動する、高いところに上る、体操選手のように高いところから開脚ジャンプする、といった様子で本人は日々忙しそうにしています」

また、「こんな調子なので、診断済の自閉スペクトラム症のほかにADHDの疑いもある、と発達外来の医師からは投薬の話を受けたりもしましたが、動いている時のまゆみがいつも満面の笑みで楽しそうなのと、そこまでの物理的被害が出ていないので、今のところ投薬はしていません。ただ、テンションの高い時はブレーキが利かずに壁に激突することがあるので、なるべく怪我をしにくい生活環境になるよう工夫しながら見守っています」と、これまでの様子を教えてくれた。

■同じ境遇の人やきょうだい児、さまざまな立場の人からの感想が励みに
漫画の読者からは、もらう言葉のすべてがうれしいと話す。「やはり同じ境遇の親御さんからの反響が大きく、まさに今悩んでいる方から『自分だけじゃないと思えて涙が出ました』『参考になります』と言っていただけた時は、私の経験が少しでも役に立てたとうれしくなります。また、お子さんがある程度大きくなった方からは『うちもそうでした』『当時はこうでしたが、その後こんな風に成長しました』と教えてもらったりして、逆に私の方が勇気や元気をもらえたり、就園や就学の指針を示してもらえるので本当にありがたいです」

なかでも印象に残っているのは、自身の弟がまゆみちゃんと同じく知的障害を伴う自閉症という、いわゆる『きょうだい児』の方からの感想だったそう。「『両親は、きょうだい児だからと我慢させることなく、さまざまなことを一緒に体験させてくれ、同じように愛情を注いでくれたからか、小中高と周りからブラコンと言われるくらい仲良く育ちました』という内容に始まり、私の漫画を読んだことで『両親のしてきたであろう苦労に思い至り、また自分がきょうだい児として幸せに過ごしてきたことを思い出せました』と綴ってくださっていました」

「我が家もまゆみの下に娘がいるので、きょうだい児として育つ下の子の心のケアや育て方についての不安があったのですが、この感想を読んでいるうちに『きょうだい児で苦労したという話は多く聞くけれど、こんな風に幸せに育ててもらったとご両親への感謝の体験を寄せていただけるなんて』と感動で涙が抑えられなくなり、私の方こそ感謝でいっぱいでした。このお話は、我が家の育児のモデルケースにさせていただいています」

最近は、発達障害とはあまり縁がなく過ごしてきたという人からの反応も増えたという。「『関心のなかった分野ですが、漫画を読んで引き込まれました』『発達障害の子のことを理解したいと思います』と言っていただけた時は、もしかすると投稿を通じて発達障害の周知や啓発に一役買えているのかもしれない、と少しだけ光栄に思えたりしています」

現在のまゆみちゃんの様子については、「4歳過ぎになった今、一番成長したなと感じる部分は、少しずつ意思疎通が図れるようになってきた点です。『ポイしてきて』『ドア閉めて』などの簡単なお願いを聞いてくれることが増え、やりとりができるようになった喜びを噛みしめています。この『応じる力』がついてきたのは、療育によるところが大きいと思います。3歳ごろに母子通所の療育から単独通所の療育に変更したのですが、母親不在の状況で先生やお友達と過ごすなか、社会性の芽が出てきたのか『家の中の顏』と『家の外の顏』を使い分けるようになってきました。家の中ではまだまだ甘えん坊の聞かん坊な面も多く見られますが、療育園では先生の言うことを聞いて椅子に座ったり工作に取り組んだりできているようです」

今後については、「投稿することで私自身も人とつながれて救われたりする面が大きいので、続けていきたいと思います。そして活動を続けるなかで、もし私とまゆみの経験がどなたかの助けになれたら、とてもうれしいです」と話してくれた。Instagramでは現在、1歳半健診が終わったころの話を更新中。今後も、まゆみちゃんとにれさんたち家族の様子を見守りたい。

取材・文=上田芽依(エフィール)

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