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1本の歯ブラシから生まれたアイデアで、サステナブルなアメニティを作る「株式会社豊和」

  • 2022年8月9日
  • Walkerplus

店舗のプロデュースや設計に関わる企画、施工、家具備品や消耗品調達までを行う「株式会社豊和」。取締役の山本美代さんは使い切りのプラスチックアメニティ製品に疑問を感じ、「捨てることを前提としない、竹を使ったサステナブルなアメニティ」を発案。現在多くのホテルで採用されている。その開発ストーリーを伺った。

■プラスチック製歯ブラシの廃棄量を考えたことがきっかけに

山本さんが竹の歯ブラシを思いついたのは、2018年のこと。出張先のホテルでアメニティの歯ブラシを使いながら、朝晩たった2回使っただけで捨てられてしまうプラスチックの歯ブラシに違和感を感じたという。「当時、世間はまだそれほど環境問題について意識を向けていませんでしたが、私は外国人の友人が多く、彼らの影響で以前から環境問題に関心を持っていました。全300室のこのホテルに300本の歯ブラシがあり、それが1回で捨てられる。1日でいったいどのくらいのゴミを出しているのだろうと考え、なんとか減らせないかと考えたのです」と山本さんはいう。

「自分で作る発想はなかった」といいながらも、自分で作るしかないと山本さんは竹で歯ブラシを作ることを決意。しかし、最初はなかなかうまくいかなかったと振り返る。「関係各所へ1件1件問い合わせましたが、全部断られました」。山本さんはヨーロッパや中国、台湾へ視察に行き、友人を介して環境活動家とも話したという。「ヨーロッパでは竹の歯ブラシはおしゃれで使い心地がよいと人々に受け入れられていました。竹以外にもアップサイクルできる素材を探していたのですが、竹は成長過程でCO2を吸収し、成長スピードも速く3年で資源として使える大きさになる。枯渇しない唯一の天然資源です。見た目もおしゃれにできそうで、使っていてテンションが上がる感じもいいと思いました」。

■割り箸と歯ブラシの製造工程にヒント

「竹の歯ブラシを日本の竹で作りたい」と考えた山本さんは全国を奔走。しかし加工先が見つからず、暗礁に乗り上げかけた時に「もしかしたら、割り箸と歯ブラシは同じ製作過程でできるのでは?」という考えにたどり着いた。もともと会社で割り箸を扱っていた縁でメーカーを探し、ようやく竹の歯ブラシを製造してくれる工場が見つかったのだ。
こうして発想から2年後の2020年5月、「MiYO Organic」ブランドの竹製歯ブラシが完成した。

歯科衛生士とともに開発した「MiYO Organic」の竹の歯ブラシは、日本人に合うコンパクトヘッドが特徴。竹には薬品を塗布せず、カビないように水分の含有量を削減。ブラシ部分はひまし油から作られる植物由来のナイロンにするなど、隅々までエコを徹底した製品だ。さらに使い捨てではなく、約1カ月使えるのもこの歯ブラシの大きな利点。「ホテルで捨ててくるのでなく、持ち帰って家でも使ってほしい。そのためおしゃれなデザインにも配慮しました。歯ブラシは1カ月で1本取り替えるのが望ましいといわれているので、歯の健康を考えたよい循環もできると思います」と山本さんはいう。

コロナ禍真っ最中だったこともあり、竹の歯ブラシは急激に売れることはなかったが外資系ホテルを皮切りにじわじわと拡大。2022年にプラスチック資源循環促進法が制定されたのを転機に、ホテルなどから一気に問い合わせも増加。ついに売上100万本を達成した。「エシカルなものに興味を持っている人からのSNSへの問い合わせも多くなりました」。こうした反響が功を奏し、ホテルだけではなく大型雑貨専門店、ドラッグストア、オーガニックショップでも取り扱われるようになった。


■チューブの概念を覆す歯磨きペーパーを考案

山本さんは歯ブラシだけではなく、歯磨き粉もエシカルなものにしたいと思っていたという。「チューブの歯磨き粉を使い切ったことがなく、いつももったいないと感じていました」。しかしペースト状の歯磨き粉はチューブのパッケージでないと扱いが難しいことから、山本さんは中の形状を変えることに着目。アイデアを探していた際に、歯磨きペーパーの技術を持つ工場と出合ったのだ。歯磨きをペーパーにすることで、パッケージも紙製に。「チューブに比べて98%のプラスチックを削減することができます。竹の歯ブラシと一緒に使うことで、より一層の削減が期待できます」と山本さんは笑顔だ。


■幸せの循環を広げて、世の中に貢献

現在はペットボトルのキャップを素材に、歯磨きペーパーのケースを開発中。また食器ソムリエとして飲食店のスタイリングやプロデュースも行う山本さんは、こうしたペットボトルのキャップや工場から出る廃材を使ったアート作品も作り、ホテルや結婚式場へ提案したいと話す。「自分たちの得意分野を生かして世の中に貢献できることはとても幸せなこと。母の代から始まった仕事をアップデートしながら幸せの循環をさらに大きく広げていきたいと考えています」。山本さんのエシカルな発想と挑戦はこれからも続いていく。

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