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まるで“読む水族館”!魚専門書店「SAKANA BOOKS」で魚にまつわる意外な事実を聞いてきた

  • 2022年8月24日
  • Walkerplus

日本人にとって、趣味としても食材としても欠かすことができない「魚」。その世界は実に奥深く、魚について調べようとインターネットで検索をかけただけではわかることが少ない。たとえば同じ魚種に対してもまるで違う意見や認識がヒットするなど、調べれば調べるほど余計わからなくなるなんてこともある。

そんななか、2022年7月に日本で初めて“魚の専門書店”がオープンした。その名も「SAKANA BOOKS」。店は東京・曙橋の住宅街にある株式会社週刊つりニュースの本社1階にあり、この書店の運営は同社によるもの。扱う書籍類は魚をはじめとする水生生物やそれらが棲む自然環境に関するものが中心で、一部魚に関する雑貨や水産加工品も扱うという。

今回は同書店に行き、さまざまな魚の文献を覗くとともに、知られざる魚トリビアについて聞いた。

■「SAKANA BOOKS」&「釣り文化資料館」に行ってみた
曙橋駅から徒歩5分ほど、靖国通りから住宅街のなかに入ったところに週刊つりニュースの本社がある。モダンな自社ビルなので、すぐに見つけることができた。

そのビル1階の左手の一角に「SAKANA BOOKS」があるのだが、開店してからまだ2カ月ということもあってか、そのスペースは思いのほかこじんまりとしていた。しかしそのラインナップは実に幅広く、マニアックな図鑑、魚種ごとの研究書、釣りや海にまつわる紀行書、子供向け絵本などが陳列されている。魚は人によって有識度が大きく異なるものだが、単にマニアックだったり、あるいは逆に入門書ばかりだったりしないところに「SAKANA BOOKS」の配慮を感じて好感を持てた。これなら老若男女、誰でも楽しく魚の文献に触れることができるはずだ。

「SAKANA BOOKS」に陳列されている本を興味深く見ていたが、ふとその隣を見ると、「釣り文化資料館」の入口が目に入った。こちらは週刊つりニュースが運営する伝統的釣具などを展示するスペースで、1989年から継続して公開しているという。日本の釣り文化の長い歴史を物語る和竿などの名工の技を目で見ることができる貴重な展示。「SAKANA BOOKS」とあわせて見学するのがおすすめだ。

■なぜ出店した?リアル書店ならではのメリットを意識
魚・釣りにまつわるファンにはたまらないスペースだが、よく考えてみると日本人にとって馴染み深い分野であるにもかかわらず、こういった専門的な書店やスペースが今まであまりなかったことを不思議に思う。今回「SAKANA BOOKS」開店に踏み切った経緯を、週刊つりニュース代表取締役の船津紘秋さんに聞いた。

「確かに魚は日本人に馴染み深いものですが、魚だけに特化させるというのはあまりにニッチなのか、一部のオンライン書店さん以外ではあまり見かけませんでした。デジタル全盛の時代ではありますが、だからこそ1つのリアルな場所に集約させて陳列させる意義があると思い、出店に至りました。個人的にも、たとえばAmazonであらかじめ欲しかった特定の本を買うことはありますが、それ以外の本に出合うことは少ないです。その点リアル書店であれば、特定の本を買いに行ったとしても特に買うつもりもなくふらっと訪れたとしても、意外な本に出合うことがあります。リアル書店だからこそできることはあるはずだと思い、出店することにしました」

現状、本のラインナップは船津さんともう1名のスタッフで懸命に探し、厳選して陳列しているという。

「魚にまつわる本をなんでもかんでも仕入れて陳列するのではなく、『SAKANA BOOKS』にお越しいただく方に気づきを与えられるような内容・テーマのものを意識的に探して陳列しています。まだ試行錯誤をしているところですので、今後はまた変わってくるかもしれませんが、今のところはそういった判断で選書しています」

■空気を読んで性転換!?魚にまつわる3つのトリビア
開店から2カ月が経った今の客層は、魚に対する知識の度合いはさておき20〜30代の男女が中心だという。また、必ずしも魚や釣りのファンというわけではなく、水族館が好きな人や魚をモチーフにした創作活動をしている人など、「魚」という共通項はありながらさまざまな人が訪れるという。

そんななか、特に「SAKANA BOOKS」で売れているのが魚にまつわる雑学系の本だという。特定魚種の図鑑や自然環境の未来を考える本も一定の支持があるようだが、意外な“魚のトリビア”に出合えるのも「SAKANA BOOKS」の楽しさだろう。

ここで3点ほど、意外な「魚のトリビア」を教えてもらった。

■(1)サーモンは「白身魚」、アジは「赤身魚」。魚種ごとの身の色は分類に関係ない
「サーモンピンク」とも呼ばれる赤系の身を持つサーモン。定義上ではサケ・マス類は「白身魚」なので、サーモンも実は「白身魚」となる。実はこのサケ・マス類、餌となるオキアミなどの甲殻類に含まれる赤い色素の影響で赤みがかった色味になっているが、本来の身は白い。

また、アジ科・サバ科などの青魚は、種類や個体により身の色が大きく変わるのが特徴である一方、白い身のものが多いため「白身魚」と呼びたくなるが、実は「赤身魚」に分類される。青魚の多くは高速遊泳が可能だが、これができるのが筋肉中に酸素をためておけるタンパク質「ミオグロビン」を多く含んでいるため。ミオグロビンは色素タンパク質とも呼ばれるが、これを多く持っているものを一般に「赤身魚」と分類する。

こういったことから、魚種ごとの身の色と「白身魚」「赤身魚」といった分類は必ずしも一致せず、分類はかなりややこしいことになっている。

■(2)「ヨダレ」「ハナタレ」など残念な呼ばれ方をする魚がいる
海水の水温が上がってくる時期に釣り場などで目にする機会がある小魚・ヒイラギ。銀白色のボディに黄色や黒の差し色があり、外見は美しい魚だ。

しかし釣りなどで実際に上がったばかりのヒイラギに触れると、全身を覆う強いぬめりに難儀する。また背ヒレ、腹ヒレの先端が尖っており、手に刺さると非常に痛いため嫌われがちな魚でもある。このため、東京地方では年配の釣り人を中心に「ゲドウ」と呼ばれるほか、地方によってはそのぬめりの多さから「ヨダレ」「ハナタレ」なんていう、かわいそうな呼ばれ方をする場合もある。

しかし、このかわいそうな名前に反し、煮付けや唐揚げにするとアジにも似た味わいで実に美味だとも。

■(3)「空気を読んで」自発的に性転換をする魚がいる
瀬戸内海を代表する魚種の1つ・コブダイは、1匹のオスと複数のメスでできた群れで暮らしている。生まれたときは全てメスだが、なんらかの事情で群れのオスがいなくなった場合は、最も大きなメスがオスへと自発的に性転換を行う。

実は魚の多くは、「女性ホルモン分泌量を変化させる」ことで成体になった後も容易に性転換でき、遺伝的・先天的に生物学上の性が決まる哺乳類などと大きく異なる。

ちなみにコブダイが性転換をする際は、「空気を読んで」行うと考えられている。「相手の性が周囲にいない・いなくなった」ことを視認した後、魚が自発的にオスやメスへと性転換を行う。

■水族館のように多くの人が楽しめるようなラインナップを
このような魚にまつわる意外な話、興味深い話を知ることができるのも、長きにわたって魚・釣りに関わってきた週刊つりニュースならでは、そして「SAKANA BOOKS」ならではと言って良いだろう。

最後に、今後の「SAKANA BOOKS」の展望を船津さんに聞いた。

「魚に興味がある方はもちろん、現時点では興味がない方でも、お越しいただければ間違いなくなんらかの楽しさを発見していただけると思います。本の背表紙、タイトルだけを見るだけでも『へぇ〜』と思うことがあると思いますし、ぜひふらっと立ち寄っていただければうれしいです。先日ご来店くださった方がSNSで『まるで“読む水族館“だ』と投稿してくださいまして、大変ありがたい表現をいただいたと思いました。水族館のように多くの方に楽しんでいただけるよう、これからも楽しい本をラインナップしていきたいと思っています」

取材・文=松田義人(deco)

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