
元ゲーム会社所属デザイナーで、現在はストーリー漫画をメインに執筆している吉良いと(@kilightit)さん。個人で作品を公開・販売するほか、商業誌にも作品を掲載するなど、精力的に活動している漫画家だ。代表作「ようこそ亡霊葬儀屋さん」は、「このお話ほんとに好きです」「1度見た事あるはずなのに泣いてしまった」など、多くの読者に感動をもたらしている。
今回は、Twitterなどでも公開されている「幽霊が視(み)える葬儀屋さん」シリーズから、「ひとりぼっちの黒猫」をお届けする。“視える”葬儀屋・烏丸枢(からすま・くるる)が担当する通夜の会場に現れた1匹の黒猫。それが故人・藤乃の友達だと気付いた烏丸が話しかけると、黒猫は烏丸から逃げるように家の中へと入り込んでしまう。
逃げ込んだ部屋で遺影を見上げながら、黒猫は藤乃との日々を思い出していた。勝手に家に寄り付くようになった自分に、「ウチの子になるかい?」と言ってくれた優しい顔が脳裏に浮かぶ。思い出に浸っていると、襖の向こうから藤乃を悪く言う参列者の声が聞こえてきた。
そんな参列者たちに、故人に配慮をするようにと注意を促す烏丸。場を落ち着けたあと、烏丸は黒猫に「藤乃からプレゼントがある」と告げる。目がだんだんと見えづらくなり、家にやってくる黒猫に気づくのに苦労していたという藤乃からのプレゼント。それは「鈴の付いた首輪」だった。チリン…と鈴が鳴る。この鈴があれば、幽霊になった藤乃にも黒猫の居場所がわかるはず。「聴こえますか?藤乃さん」
涙を流しながら「聴こえるよ、ここにいる」と答える藤乃。そして黒猫を優しく抱き寄せ、「ウチの子になるかい?」という約束を守れなかったことを悔やむように謝った。藤乃とのお別れを経て、黒猫はすっかり烏丸に懐いたようだ。烏丸は悩んだものの、「いっそうちの子になりますか?」と黒猫に提案する。
「ひとりぼっちの黒猫」の後日を描いた「黒猫の居場所」編では、烏丸に引き取られた後の様子が、黒猫の目線から描かれている。「ひとりぼっちの寂しさ」を知る、似た者同士の烏丸と黒猫。黒猫は思う「私は彼のそばにいてあげよう」と…。黒猫の気持ちを描いた短編も併せて読むと、感動もひとしおだ。
画像提供:吉良いと(@kilightit)