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メタボの蛇口?おでんから水?大阪らしい「珍蛇口」で、他社に差をつけるカクダイの挑戦

  • 2022年4月12日
  • Walkerplus

日頃何気なく使っている水道の蛇口。長さや大きさ、コックの違いはあれ、さほど大きな差はないと思っていないだろうか。ところが、そんな蛇口の概念に一石を投じる商品を次々投入しているメーカーがある。大阪で水回り商材全般を扱う株式会社カクダイだ。同社のユニークな蛇口やチャレンジングな取り組みについて、取材した。

■143年の歴史ある企業。水回り全般や配管部材など扱うカクダイ
株式会社カクダイは、大阪市西区にある製造メーカー。創業は1879年(明治12年)、設立は1954年(昭和29年)と、長い歴史を誇る。取り扱うのは蛇口や水を受ける器など水回り全般に加え、洗面台下の配管部材にも力を入れる。

洗面台には欠かせない止水栓や、洗面台の下をのぞけば、必ず見られる排水トラップなども同社の製品だ。トラップは洗面台などの下にあるU字やS字状の配管で、下からの排水の臭いやガスを遮断したり、害虫などが上がってくるのを防いだりしてくれる重要な部品。きっと一度は目にしたことがあるはずだ。

よくあるのは銀色の配管だが、同社ではカラーバリエーションをそろえ、隠すだけでなく、あえて見せる配管としての商品も展開している。

■オシャレ蛇口から、おもしろ蛇口に方向転換
同社が注目されるようになったのは、個性豊かな蛇口の製造によるところが大きい。もともと行っていたのは、大手メーカー製品の代替蛇口や交換部品の製造と販売。当時は蛇口の材質や厚みなど細かく規定されていたため、どのメーカーでも互換性があり、代替部品にも需要が見込まれていた。

しかし、規定が緩和されたことにより、各メーカーが独自の規格で蛇口を製造するようになり、部品の互換性がなくなってしまった。さらに大手メーカーが自社で交換部品の販売を開始、交換部品市場がなくなっていくことが予想されるようになる。

そこで同社は生き残り戦略として、オリジナル蛇口の製造に力を入れることに。だが、ここで困難にぶち当たる。「はじめはオシャレな蛇口を作ろうとしていました。でも、それではどうしても大手メーカーや海外メーカーと似たようなデザインになってしまいます。“オシャレ”というジャンルで独自性を出すことは、非常に困難でした」と開発担当者は振り返る。

「ならば独自路線で行くべきだ」と考え、打ち出した路線が「関西の企業らしさ」前面に打ち出した「おもしろ蛇口」だった。そして2011年に開発を開始、実際の商品は2012年から発売された。

■おもしろ蛇口には競争相手もアンチもいない
今までの路線とは全く違う商品ラインナップはまさに挑戦的な試みだったが「オシャレな蛇口は比較対象がたくさんあり、そのデザインをよいと感じる人も、よくないと感じる人も出てきます。もちろん、他社とも激しい競争にさらされます」と続ける。

ところが「おもしろ蛇口」には、比較対象がない。その結果「アンチが出ませんでした」とのこと。さらに「他社からすれば『こんなバカげた商品を作って(笑)』と思われるようなものばかりなので、競争の必要もありません」とメリットが多い。

■技術力を要するオモシロ蛇口
加えて「おもしろ蛇口」は同社にとって重要なプレゼンテーションとなる。「変な形の蛇口を作るには、実は高い技術力が必要になります。製品として使える、なおかつ面白いものを作るために試行錯誤を重ね、結果として技術力が上がりました。その時に培った技術は、別の商品開発にも生かされています」

こうして出来上がった蛇口の中でも出色の製品が、「誰や!こんな蛇口つくったん!?」と言いたくなる「Da Reyaシリーズ」。いずれもかなりの労作だが、特に丸く膨らんだ「誰や!メタボにしたん?」と、細長くくびれた形の「びよ~ん」は、開発に苦労したという。

ユニークなルックスで目を引くのは食品サンプルを使用した「O・DE・N」や、ラグビーで使われていたやかんが由来の「魔法の水」。

学生のアイデアが形になったものもあり、「まぐろ蛇口って言うてるヤツ、誰や?」は、近畿大学と学生インターンシップという形でコラボして開発された。

使った人を驚かすという点では「いや~ん」に軍配が上がる。蛇口をひねると胴体の上半分ごと回るので、一瞬壊したのではないかと驚かれるそうだ。

また、時勢に合わせた製品も登場している。コロナ禍でも楽しく使ってもらえるようなものも開発中だそうで、「衛生水栓(あおむし)」などはその一例。オレンジの上にせっけんやソープディスペンサーを置くことができるので、面白さだけでなく、実用性も伴った商品だ。

同社ではエンドユーザーに直接商品を販売していないため、従来ユーザーの声を聞くことが難しかった。しかし商品がSNSで知られるようになるにつれ、「面白い」「かわいい」「ほしい」といった声が聞こえるようになり、開発の励みにもなっているそう。

■安全で衛生的で、安価に使えるディスタンス水栓を作ろう
新型コロナウイルスを含む感染症対策として、手洗いやうがいの重要性が見直されているが、手を洗った後再びハンドルに触れることへの抵抗感がある人も多い。「Da Reyaシリーズ」の蛇口は三角ハンドルのものが多く、「このご時世では使いにくいのが現状」と同社では分析している。

そこで今、開発に力を入れているのが「ディスタンス水栓」。これは菌との距離を保ち、より安全かつ衛生的に手洗いやうがいができる水栓のことで、代表的なものとしてはセンサー水栓が上げられる。だが、センサー水栓には「電源が必要」「外で使用できない」「メンテナンスが難しく、費用も高い」といったデメリットがある。

そこで同社が着目したのが、昔ながらの「衛生水栓」だ。衛生水栓は吐水口の下部にハンドルが付いているので、手洗い時にハンドルについた汚れを洗い流せるのが特徴。電源も不要で、外でも使えるうえ、メンテナンスも簡単だ。しかも汎用部品で対応できるため、安価で維持できるとメリットがいっぱい。そうした利点はそのままに、現代にあった仕様やデザインの衛生水栓の開発に力を入れている。

「衛生水栓はセンサー水栓に比べると費用も抑えられ、学校や幼稚園など蛇口の多い公共施設、厳しい状況が続く飲食店にも使っていただきやすい商品。あおむしのように、カクダイらしくお笑いの要素も取り入れたディスタンス水栓も出せればと試行錯誤中です」(開発担当者)。

■一人でも多くのカクダイファンを作りたい
今後の目標について尋ねると「Da Reyaシリーズを通して弊社を知ってくださる方も多くいらっしゃいます。きっかけは何であれ、そこから弊社のカタログを真っ先に手に取ってくださる方や、弊社商品を選んでくださる方が増えれば。一人でも多くの『カクダイファン』を作るのが目標です」と前向きな答えが返ってきた。ユニークな蛇口はもちろん、時代にマッチした蛇口など、同社の今後の活躍にますます期待がかかる。

取材・文=鳴川和代

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