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【漫画】現役書店員が描く、ゆるーい日常。書店あるあるが共感呼ぶ『本屋の堀ちゃん』が生まれたワケ

  • 2022年3月22日
  • Walkerplus

ネット通販や電子書籍が普及しても、通りかかるとふらっと立ち寄りたくなるのが書店。何気なく本を買うお店にも、客や店員のさまざまな人間模様があるもので――。漫画『本屋の堀ちゃん』(双葉社)は、店で働く書店員の視点から、「本屋さんの日常」を描いた物語だ。

■書店員の「あるある」を、現役書店員がゆる~く描く『本屋の堀ちゃん』
主人公の「堀ちゃん」は、村上春樹と村上龍がごっちゃになったり、「アズミノ」がどんな字を書く地名か分からなかったり、知識も経験もまだまだな新米書店バイト。そんな堀ちゃんは、先輩たちから時に優しく、時に厳しく支えられながら、毎日の仕事の中で行き会う印象深い出来事や、個性豊かな客に触れていく。書店を利用する側が読めば新鮮で、書店員からは思わず「あるある」と共感してしまう日々のエピソードをつづった作品だ。

作者は、『猫ニャッ記』(文藝春秋)や『そこらへんのおじさん物語』(青林工藝舎)などの作品を発表している佐久間薫(@sasakumako)さん。漫画家として活動するかたわら、現役の書店員としても働き、自身の体験をベースに『本屋の堀ちゃん』と、シリーズの前作にあたる『カバーいらないですよね』で、書店で起こる日々の出来事や書店員の思いを漫画にしている。

ウォーカープラスでは佐久間さんに、『本屋の堀ちゃん』シリーズの制作秘話や、書店で働き続ける思いなどをインタビューした。

■「漫画は好きだから」と書店バイトに。その経験から生まれた「堀ちゃん」
――佐久間さんは現在も書店員として働かれているそうですね。書店で働くようになったきっかけは?

「バイトを探しつつ散歩をしていた時に、今の本屋でバイト募集の貼り紙がしてあったのを見つけました。特に本屋で探していたわけではなかったのですが、漫画は好きでしたので面白そうかな~、と思い応募しました。それがなかったら今はこうして本屋の漫画を描いていなかったわけです(笑)」

――そうした縁があって「堀ちゃん」は生まれたんですね。バイトに応募した当時から漫画家として活動されていたのですか?

「当時は漫画は描いてましたがデビュー前でした。持ち込みや投稿してもうまくいかずつらい時期だったと思います…」

――本作には書店を舞台にさまざまな出来事が描かれています。実際の体験とフィクション、どのくらいの割合で作品にされているのでしょうか?

「そうですね、出来事で言えば9割以上は実体験ですね(笑)。店員は全員架空なので構成とか細かいところは作ってます」

■小さな、けれど「書店らしい」仕事を拾い上げてエピソードに
――作中で反響の大きかったエピソードや、ご自身で印象に残っているエピソードはありますか?

「やはり『お客さんのレタスクラブはオレンジページでもある』でしょうか。描いた当時はまさかこのネタがこんなに注目されるとは思いませんでした。私たち書店員には普通のことなので(笑)」

――そうした「あるある」の部分のほか、接客トラブルなどのネガティブな側面や、店員たちの毒のある台詞ももさらっと描かれているのも印象的です。

「この漫画はあるあるネタがメインですが、全体は淡々とシュールな空気感にして、わかりやすいけど味わい深い漫画になればいいなと。あと、いろんなお客さんがいて時に困ることもありますけど、一方的な悪口のような漫画にはならないように心掛けているつもり…です」

――また、書店の仕事を描く上で意識していること、こだわっているポイントはどんなところですか?

「私は元々どうでもいいような小さな事柄に興味があります。漫画にも出てきましたが、包装紙で袋を手作りしたり、虫を出したり、本屋のメインの仕事とは呼べないような、雑務を好んで取り上げています」

■レジ袋有料化、コロナ禍……。書店員の目から見た変化は?
――現在も書店で働かれているということは、佐久間さんが働く書店の売り場にも『本屋の堀ちゃん』は並ぶことになったんですよね。

「最近は慣れましたけど、まだ時々不思議な気分になりますね。作る方と売る方、両方に属している自分……。店の検索機で自分の名前が出てくるのも不思議です」

――書店で働きながら漫画家として活動することでよかったことはありましたか?

「やはり何と言っても本屋の漫画が描けたことですね。『本屋の堀ちゃん』シリーズ以外にも、『ねこ書店』『本屋の今泉くん。』という漫画も描いているので、ホントに助けてもらってます(笑)」

――反対に、大変だったことは?

「大変なことは……書店だからということではありませんが、以前『ねこ書店』を描き下ろしで出版する際、書店の仕事が週5で入っていたので、それは本当に大変でした。今ではもうできませんね」

――作中にもあったレジ袋有料化をはじめ、ここ数年はさまざまな変化があったかと思います。書店で働く中で、大きく変わったなと感じた出来事はありますか?

「いろいろあるんですが、一番印象に残っているのは、やはりコロナ禍のマスクですね。実はコロナ禍以前は、店員のマスク率があがるとお客さんから『ご意見』が来てしまい、なるべくマスクは控えるように言われていました。今や当然マスク率100%ですけど、さすがにもうご意見は来ません(笑)」

――出版不況やネット販売の拡大で書店を取り巻く環境は厳しいと言われています。そうした中でも、書店で働き続ける思いを教えてください。

「リアル書店ならではの良さはありますよね。思いがけない本に出合ったり、眺めるだけでも楽しい。貴重な空間なので電子書籍やネットは便利ですが、書店も是非ご利用ください…!」

――最後に、今後「堀ちゃん」シリーズの展望や、描いてみたいエピソードがあれば教えてください。

「現在のWEB連載は再連載なので、シリーズは一旦終了しています。しかし、もし爆発的に売れて…再び描けるとしたら!漫画に出てくる、いばりんぼうキャラの泉さんが主人公の堀ちゃんに対して『お前』って言うのを指摘する話を描きたいですね。嫌ですよね、職場で『お前』って呼ばれるの…。『堀』でもなく、ちゃんと『堀さん』って呼ばせたいです(笑)」

取材協力:佐久間薫『本屋の堀ちゃん』発売中(@sasakumako)
『本屋の堀ちゃん』 (C)佐久間薫/双葉社

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