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コーヒーで旅する日本/九州編|日本を代表する芸術的なラテアートをきっかけに、コーヒーで人と人とをつなぐ「Connect Coffee」

  • 2022年2月14日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第12回は、福岡県・福岡市にある「Connect Coffee」。日本屈指のラテアーティスト、安藤貴裕さんがオーナーを務める、福岡が全国に誇る一店だ。コーヒーと真摯に向き合い、数々の受賞歴を有するバリスタならではのコーヒー理論に触れる。

Profile|安藤貴裕
1986(昭和61)年、福岡県北九州市生まれ。大学在学中からカフェを巡り歩き、コーヒーに親しむ。大学卒業後、シアトル系のコーヒーチェーンで働き始めたのを機にエスプレッソの魅力にハマる。townsquare coffee roasters(店舗営業は現在、終了)で約5年半、バリスタとして働きながら競技会にも積極的に出場。主な経歴にUCCコーヒーマスターズ全国大会 ラテアート部門2013年3位、2014年1位、2016年2位など。2017年9月に「Connect Coffee」をオープン。

■“日本一”はひたむきにコーヒーと向き合い続けた結果
オーナーの安藤貴裕さんの代名詞と言えば、ラテアートだ。2014年のUCCマスターズ全国大会 ラテアート部門優勝、同年のCoffee Fest ラテアート世界大会準優勝をはじめ、最近では2021年のFBCインターナショナル主催のラテアートチャンピオンシップ優勝など、受賞歴多数。全国的に注目を集めている。

もともと大学生のころからコーヒーが好きで、カフェ巡りを趣味としていた安藤さん。卒業旅行で山陰地方に訪れた際には、2005年のバリスタの世界大会で準優勝に輝いた門脇洋之氏が営む島根県のCAFE ROSSOにも足を運んだ。

「門脇さんが淹れたエスプレッソに衝撃を受けました。使用している豆は深煎りだったのですが、今まで飲んできたエスプレッソとは一線を画す甘味を強く感じたんです。この体験を機に、エスプレッソという飲み物に一気に引き込まれましたね」と安藤さん。

大学卒業後、一度は大手スーパーに就職したが、バリスタになる夢を諦めきれず、退職。シアトル系のコーヒーチェーンに入り、本格的にエスプレッソマシンに触れた。エスプレッソをおいしく淹れたいという一心で日々仕事に励み、店で淹れるだけでは飽き足らず、自宅用にエスプレッソマシンまで購入したというから、そのひたむきさには驚かされる。「エスプレッソを抽出するのが楽しくて仕方なかったんです。毎日淹れているうちに、次第にラテアートにも興味を抱きましたね」(安藤さん)。

townsquare coffee roasters時代に一緒に働き、今回「Connect Coffee」をレコメンドしてくれたタリル珈琲の稲永さんが「安藤さんはいつも進んでエスプレッソを抽出していましたし、毎日ラテアートの練習をしていました。とにかく勉強熱心なんです」とコメントしていたように、黙々と努力を積み上げる人だ。

そのことを伝えると、安藤さんは「ただ楽しかったから、続けてきただけなんですよ。勉強というよりはもっと上手に、もっとおいしくという思いしかなかった。さまざまなラテアートの競技会に出場したのもそのためですし、全国のバリスタさんたちの技術に触れて、もっと成長したいという思いが強くありました」と教えてくれた。

安藤さんが得意とするラテアートはフリーポアと呼ばれる、スチームドミルクをエスプレッソに注ぐ動きだけで模様を描いていく技術。フリーポアで美しい模様を描けるということは、エスプレッソの抽出、ミルクのスチームがうまくできているということの証でもある。

なぜなら、おいしいエスプレッソはコーヒー成分と湯が程よく乳化し、上質なクレマ(※1)が表面に浮かぶ。さらにミルクは蒸気によって口当たりにも影響するきめ細やかな状態にすることで、美しいラテアートを描くことができる。つまり、ラテアートが美しい一杯はエスプレッソ、ミルクともに最上の状態ということだ。

■ブレンドに込めたオリジナリティー
「Connect Coffee」は2017年9月に開業し、当初から自家焙煎に着手。もともと、前職ではバリスタとして働いていただけに、焙煎に関してはほぼ独学だ。

「『Connect Coffee』をオープンさせる前、同じ場所にコーヒーショップがあり、僕自身、そのお店の常連でした。そのお店が焙煎だけのスタイルになることから、店舗は閉店することになり、そのまま物件を引き継がせてもらった経緯があります。なので、ラッキーコーヒーマシンの直火式1キロの焙煎機はそのまま使わせていただくことができました」と安藤さん。

開業当初から店の柱に掲げたコーヒーが、中深煎りのコネクトブレンドクラシック。エスプレッソの抽出にもレギュラーで使用しているブレンドで、ビターチョコやカカオ、ビターオレンジを思わせるフレーバーが特徴だ。焙煎度合いについて、「エスプレッソ、ドリップコーヒーともに味わいとして大切にしているのは、ボディ感と焙煎に由来する甘味です。シングルオリジンでは浅煎りの豆も用意していますが、どちらかというと中煎り〜中深煎りがメイン」と説明。

バリスタから焙煎の道に進んだ安藤さんだけに、抽出したときの味わいのイメージが明確で、深めに焼いた豆でも素材が持つ個性はしっかり主張。とくにブレンドへのこだわりは強い。

「シングルオリジンでその豆が持つポテンシャルを表現するのも焙煎のおもしろさの一つですが、店のオリジナリティという観点で言うと、ブレンドに勝るものはないと考えています。例えば同じ生豆を使ったとしても、焙煎の仕方や使用する豆の比率などで味わいはまったく変わってきます。そういう意味で中深煎りのコネクトブレンドクラシック、中煎りのコネクトブレンドは当店の顔ですね」と安藤さんは2つのハウスブレンドの重要性を説く。

■常に淹れ手に寄り添う姿勢
安藤さんが選んだ焙煎機は、半熱風式や熱風式が主流になっている昨今では珍しい直火式。前述したラッキーコーヒーマシンの1キロ窯は譲り受けた経緯から選択肢はなかったとはいえ、開業2年目で新たに導入したフジローヤル5キロ窯も直火式なのはなぜなのか。

「チョコレートやナッツを思わせるフレーバーを持つコーヒーが個人的に好きなことが大きな理由。僕は焙煎することで付く、いわゆる“焼き味”もプラスの要素として捉えているため、香ばしさをより顕著に表現できる直火式を採用しました。また、深めの焙煎をメインに掲げる理由の一つが、コーヒー豆の卸先のことを考えてのこと」と安藤さん。

「Connect Coffee」は九州各県をはじめ、東京などのカフェへの卸しも積極的だ。「自分で抽出するなら、湯温や抽出時間などで味わいの調整はできるのですが、卸し先の場合、従業員の数やオペレーションの関係上、僕が理想とするレシピを毎日再現するのが難しい場合があります。深めに焙煎したコーヒーは比較的抽出のストライクゾーンが広いため、そんなケースでも理想的な味わいを表現できるのが魅力」と安藤さん。淹れ手を選ばないコーヒー。それは家庭でコーヒーを楽しむ際にも、ありがたい要素になるだろう。

■より多くの人がつながるように
生豆は商社や問屋から仕入れているが、シングルオリジンの中には、中国やミャンマー、ドミニカ共和国など、普段なかなか目にしない産地のスペシャルティコーヒーがラインナップすることもある。産地としては後発で、客への味わいのイメージの共有が難しそうだが、安藤さんは「あまり飲んだことのない産地のコーヒーって面白いでしょ」と一言。もちろん、サンプルを取り寄せて、納得したクオリティのものだけを仕入れているので、味わいは安藤さんのお墨付きだ。そんなチャレンジングな姿勢も「Connect Coffee」の魅力かもしれない。

今後、どんな展望を考えているのか。
「屋号の『Connect』に込めたのは、人と人がつながる場でありたいという思いです。ロゴの“C”を囲んだ丸も、つながった人との輪を表現しています。そういう意味でも、全国各地に卸先を増やして、『Connect Coffee』のコーヒーを飲める場所を新たに作っていけたらと思っています。それが、結果として多くの人と人がつながるきっかけになれば」と安藤さん。

ラテアートなどセミナーを毎月2回は行い、さらにマンツーマンのレッスンにも積極的な安藤さん。自分なりにコーヒーの魅力を広めつつ、さらにセミナーやレッスンをきっかけの一つに、卸先を増やすという目標にもしっかりつなげる。現実的にコーヒーと向き合い続けてきた安藤さんらしいスタイルが確立されていると感じた。

■安藤さんレコメンドのコーヒーショップは「ZELKOVA COFFEE」
次回、紹介するのは福岡県・うきは市にある「ZELKOVA COFFEE」。
「『ZELKOVA COFFEE』のオーナー兼ロースターの田中さんはいい意味でマニアック。コーヒーの産地や品種はもちろん、焙煎についてもすごく勉強されていて、明確なこだわりを持たれています。質の高い店づくりを行っているのもさすが。公式Instagramもおもしろい投稿が多くて、毎回楽しませてもらっています」(安藤さん)

【Connect Coffeeのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル直火式5キロ、ラッキーコーヒーマシン直火式1キロ
●抽出/エスプレッソマシン(LA MARZOCCO strada AV-2)、ハンドドリップ(HARIO V60)
●焙煎度合い/浅煎り〜中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/ブレンド3種、シングルオリジン4〜5種、100グラム680円〜

※1…エスプレッソ表面にできる細かい泡の層のことで、キメの細かさが良し悪しのポイント。香りを閉じ込める役割がある




※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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