サイト内
ウェブ

スターバックスで開催された“小さな写真展”が好評 そこに乗せた思いとは?

  • 2022年2月4日
  • Walkerplus

豪雪地帯で知られ、雁木(雪よけのために家屋の一部やひさしを延長したもの)のある町家が連らなる新潟県上越市南部の高田地区。町のシンボル・高田城のほど近くにある「スターバックス コーヒー 上越高田城址公園店」で春は桜、夏には蓮で彩る小さな写真展が行われた。「コロナ禍で疲れた心を少しでも癒やしたい」そんな思いで始まった取り組みを紹介する。

■きっかけはソーシャルディスタンス。上手に使って癒やしの空間に

高田城址公園は、復元された高田城三重櫓がそびえ、春には4000本が咲き乱れる桜名所。また夏に花開く外堀の蓮は“東洋一”と伝わるほど見事だ。その公園のすぐ近く、内堀に隣接した場所に2020年3月、スターバックス コーヒー 上越高田城址公園店がオープンした。

オープンしてすぐ、コロナ禍で時短やテイクアウトのみの営業など、状況に合わせた運営を余儀なくされる。ソーシャルディスタンスを保つために、座席には等間隔に空席が設けられていた。そんな店内を見て、「もしよければそのスペースに写真を飾らないか」と声をかけた一人の男性がいた。アマチュア写真家の佐藤真司さんだ。

店の近所に暮らす佐藤さんは、スターバックスが公園のすぐ近くにできることをとても楽しみにしていたそう。しかし友人と訪れた時に空席を寂しく感じ、自身が撮影した高田城址公園の桜の写真を手に「店長に直談判したんです(笑)」という。「感染症対策で座れない席がたくさんあってね。そこに飾ってもらって、写真を見て元気になってもらえたらうれしいと思って」と佐藤さん。

そんな佐藤さんの話に共感したのが、ストアマネージャー(店長)の中川瑞輝さんだ。オープンを待ち望んでくれたお客がたくさんいたが、コロナ禍での営業縮小や地域の人へ向けたイベントが行えないことに心を痛めていた。

「当時は急なことで、席の間隔を開けるために養生テープで対応しなければならなくて。そんなときに『お客さんの心が少しでも安らげば』と佐藤さんからご提案いただいたんです。やりたい!と思って上司に掛け合いました」

コロナ禍でなかなか外出できない地元の人たちを写真を通して元気づけたいという思いと、スターバックスの地域への思いが結びついたのだ。

桜と高田城三重櫓、桜のライトアップ、桜祭りの神輿、桜が舞う広場で遊ぶ子供たち…高田城址公園の桜のさまざまな風景を切り取った写真を、飾れるだけ店内に飾った。こうして小さな写真展がスタートしたのだ。その後、夏は高田城址公園の蓮、秋には稲刈りなど上越の風景の写真を飾った。

公園に近く、周囲に学校も多いことから、学生やファミリー、シニアなど幅広い年代のお客が訪れる上越高田城址公園店。写真展は好評で、お客からは「写真に癒やされた」「雨の日でも桜が見られてうれしい」「蓮を見に、朝も来てみたい」といった声が多く寄せられ、佐藤さんもパートナー(従業員)もそうした反応がとてもうれしかったという。そして翌2021年にも春と夏の2回、写真展を開催した。

こうして続けている写真展には、お客の心を癒やす以外に、もう一つ思いがある。

■写真を通して知る「私たちが暮らす街は美しい」ということ

「佐藤さんの写真を見て、心が動きました」という中川さん。特に印象に残っているのは、稲刈りの写真だ。

「当たり前に見ていた稲刈りの様子が、こんなにきれいな情景なんだと感動して。こんなに美しい土地に私たちは暮らしているんだということを知りました」

そして“もっと地元のことを知ってもらいたい”という願いを込め、高田城址公園で行われる春の「観桜会」、夏の「観蓮会」に合わせてスターバックスの店舗で桜と蓮の写真をそれぞれ1カ月展示。ブラックボードで解説したり、お客にパートナーが魅力を紹介したりと工夫を凝らした。

展示会の準備を担当したアシスタント ストアマネージャー(副店長)の水野光希さんは、佐藤さんの地元愛に驚いたという。

「高田城址公園の蓮は108種類もあるそうなんですが、私は生まれも育ちも上越なのに知りませんでした。そうしたお話をお客様にできるようにと、佐藤さんが蓮の歌や種類などをまとめた資料まで持ってきてくださったんです。地元を誇りに思っていらっしゃるんだなと感じました」

その資料のおかげで、パートナーたちも知識を深め、お客への質問にも答えることができたという。

実は佐藤さんは高田城でボランティアガイドを15年務め、現在は後進を育成中。

「お店で写真を展示することは街のPRにもなる。いろいろな世代の方が訪れるので、町の魅力を知るきっかけになってくれたらうれしい。地元民の誇りをなくさないようにお城を大事に守っていきたい」

そして、こんなことをうれしそうに教えてくれた。

「お店がある場所はね、古地図で見るともともとは高田城の敷地なんですよ。城の敷地でコーヒーを飲みながら城の桜や蓮の写真を見るって面白いですよね」

そんな高田愛にあふれる佐藤さんへ、パートナーからささやかなプレゼントを贈った。感謝の気持ちを込めたメッセージカードだ。「コーヒーを売るだけでなく、上越の観光のPRに貢献したいです」などと書かれたカードに、「こんなにうれしいことはない」と佐藤さんは顔をほころばす。中川さんも「今後も高田の魅力を発信する場として続けていきたい」と、2022年の春の開催に向けて佐藤さんとで相談中だ。

また写真展以外にも、地元の魅力を発信するため、お客や地域のさまざまなコミュニティと想いを共有し、できることから地域とのつながりを深めていく予定だという。「ゆくゆくは、モノづくり体験を通じて地元の魅力を知っていただけるような企画をしたいと考えています。そして体験に訪れる人と人とをつなげたいと思っているんです。コロナ禍だからというだけでなく、一人暮らしでも、家族がいても、いろいろな形の孤独があると思います。お店を、人と人をつなぐ場所にしたいです」(中川さん)

スターバックスのパートナーが写真を通じて見つけたのは、地元への誇り。そして、地域の人々とのつながり・笑顔だったのかもしれない。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.