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実は第三勢力もいた!?20年続く「きのこの山派vsたけのこの里派」の議論が白熱するワケを明治に直撃!

  • 2022年2月14日
  • Walkerplus

スーパーやコンビニのお菓子売り場の定番である「きのこの山」と「たけのこの里」。子供から大人まで多くの人に愛されているロングセラー商品だが、時に人々の心に火をつけることも。それが「きのこの山派vsたけのこの里派」の議論だ。

消費者間やSNSでたびたび行われている「きのこの山とたけのこの里、どっち派?」という議論。ひとたび火がつけば「きのこのほうがおいしい!」「たけのこのほうが好き!」とつい白熱してしまうことも。そして発売元である株式会社明治(以下、明治)も、ファンの熱い愛をさらに加熱させるべく、2001年より「きのこ党」「たけのこ党」と分かれての“国民総選挙”を行うなど、激しい派閥争いを繰り広げている。

かわいいフォルムとは裏腹に切磋琢磨して互いを高め合い、しのぎを削っている「きのこの山」と「たけのこの里」だが、なぜこんなにも議論が盛り上がるのだろうか。そして何より、発売元である明治はこの議論についてどう思っているのだろうか。今回はマーケティング担当の船山慶さんに、論争が始まったきっかけや現時点ではどちらのほうが人気なのか、そして社内ではどのような意見があるのかを聞いた。

■誕生秘話と自然発生した「どっち派?」問題
きのこの山が生まれたのは1975年。同じく明治のロングセラー菓子「アポロ」を作っている工場で、たまたま従業員がアポロにカシューナッツを刺して、キノコ状のお菓子の試作品を作ったのが始まり。そこから試行錯誤を繰り返し、5年の歳月をかけてできあがったのが「きのこの山」だった。

そして4年後の1979年に、兄弟ブランドとして「たけのこの里」が発売。きのこの山は柄の部分にクラッカーが使用されているのに対し、たけのこの里は根本部分がクッキー生地で作られているのが大きな違いだった。

「この2つが発売された当時は高度経済成長期の真っ只中でした。そんななか日本人がふるさとを思い出せるような、里山の風景がコンセプトになりました。また『キノコ』『タケノコ』は、昔から日本に馴染みがあるというのも理由です」

「日本を代表するお菓子になってほしい」という明治の思いが込められた2つのお菓子は、どちらも発売後すぐに大ヒット。明治のトップブランドとして君臨することになった。発売以来お菓子売り場にいつも隣同士で並んでいる「きのこの山」と「たけのこの里」だが、それが要因なのか、いつしか消費者の間で「きのことたけのこ、どちらのほうが好きか」という議論がされるようになっていたという。

「このような議論はお客様の間で自然に生まれたように感じています。それを受けて当社では、2001年には『きのこ党』と『たけのこ党』を結成し、それぞれが人気を競う『きのこ・たけのこ総選挙キャンペーン』を実施しました」

激しい選挙戦の結果、勝利を果たしたのはたけのこ党。2002年には負けたきのこ党による「追い越せ『たけのこの里』きのこの山100万人党員募集キャンペーン」が開催されるなど、きのこ党・たけのこ党の派閥争いはこの頃から熾烈を極めるようになった。

■どっちが好き?地域差よりも年齢差にあり!
公式としては2001年に始まったきのこ党・たけのこ党の派閥争い。2018年に行われた2回目の国民総選挙では、前回に引き続きたけのこ党が勝利。翌年の2019年にはきのこ党がおよそ146万票もの大差をつけて初勝利を飾った。

しかし2020年に行われた「きのこの山たけのこの里国民大調査・愛こそニッポンの元気プロジェクト」では「どれだけ好きか」という愛の深さを測る調査になり、「どちらが好きか」という両党の戦いは一時休戦となった。

「これまでは『きのこ党』と『たけのこ党』に分かれて戦っていたのですが、コロナ禍で世界中が大変になっているなか『争っている場合じゃない』と思い、それぞれの愛を確かめ合う調査になりました。ちなみに2020年には国勢調査もあったので、それにも乗っかりました(笑)」

日本全国からアンケートの回答が集まり「日本で最もきのこ愛、たけのこ愛の量が多かったのは千葉県」、「47都道府県のうち、福島県以外の46都道府県でたけのこ愛がきのこ愛を上回った」という結果に。全国的な偏差はあまり見られず、トータルでたけのこの里が僅かに人気が高い、ということがわかった。

というのも、きのこの山とたけのこの里、実は好みが大きく分かれるのは地域の違いではなく年齢差という説もある。きのこはチョコレートが少しビターで柄の部分が軽めのクラッカーなため、40代以上によく好まれる傾向にあるという。逆にたけのこはチョコレートが甘めでクッキー生地のため、子供から20〜30代くらいの若者がたけのこを好むことが多いそうだ。

「きのこは昔からの熱狂的なファンが多いです。たけのこはどちらかといえば間口が広く、チョコレートの選択肢の1つとして買われる傾向があります。いわゆるライトなファンが多いイメージですね。そのため、売上はやたけのこのほうがやや大きいですが、きのこは1人の方にごっそりとまとめて買われることもよくあります」

きのこ党員の中には「うちは代々きのこしか食べません」「たけのこなんて認めない」という過激派もいるという。マニアから根強い人気を誇るきのこと、子供から大人まで幅広く愛されるたけのこ。それぞれ支持層が違うからこそ、国民総選挙や論争が白熱すると言える。

また、きのこたけのこの派閥争いは明治社内でも行われている。社長をはじめ経営層はきのこ党が多いが、会社全体での党員数ではたけのこ党が多いんだとか。その大きな理由としては年齢層の高さが関係していると考えられている。また、社員間でもよく「どっち派?」という話題が持ち上がるそうで、社員は1人1枚「党員証」を所持している。

ちなみに社内での通称名は「きのたけ」。きのこの山・たけのこの里を縮めたこの呼び方は社内での会議などで連発されるという。船山さんは「たけのこを認めないきのこ過激派には『同列に扱うな!』と許しがたい呼び名かもしれないですね(笑)」と話す。

■実は存在した第三勢力!「みんな知ってる」と「対立構造」
日々しのぎを削るきのこ党・たけのこ党だが、過去に第三勢力が存在したのはご存知だろうか。それは「すぎのこ村」。ビスケットの棒の部分にアーモンドとチョコレートがかけられた、杉の木をイメージしたお菓子だった。しかし圧倒的なきのこ党・たけのこ党の人気に敗れ、いつしか姿を消したという。

「ビスケットの棒にチョコレートがかかったこの商品、どこかで既視感がありませんか?よく似たデザインのお菓子が販売されていることもあり、あまり差別化ができませんでした。やはり“きのたけ”のオリジナリティには勝てなかったみたいですね」

かくして勝ち残ったきのこ党とたけのこ党だが、この2つが今も愛される理由は、「キノコ」と「タケノコ」という誰もが知っているモチーフだからだという。2018年には「きのこの山」が、2021年には「たけのこの里」が食べ物では珍しい「立体商標登録」を取得。「お菓子として唯一無二の形があったからこそ、40年以上にも渡る人気が続いているのではないか」と船山さんは話す。

そして愛されるもう1つの理由が「対立構造」。きのこの山とたけのこの里、この2つを誰もが食べたことがあるからこそ「こっちほうが好き」などのライバル関係が生まれ、「どっち派?」という話題が発生する。おかげで定期的に話題になっては買いに走るという、“消費者自らがプロモーションをおこなう”というサイクルができているのが、ブランドとしての大きな特徴だ。

きのこの山とたけのこの里が持つ「誰もが知っている」「ライバル関係」という2つの要素が、老若男女問わず「どっち派?」の議論で盛り上がることができる最大の理由だ。またSNSなどでは時々、対立が激化して事実とは異なる話や画像が出回ることもあるが、明治はある程度ネタとして受け入れているそう。

「お菓子だけでこんなに盛り上がれるのって、本当にすごいですよね。皆さんがきのこの山とたけのこの里の話題で熱くなっているのを見ると、『お客様のブランドなんだな』と実感します。これからもどんどん盛り上がっちゃってください(笑)」

■たぶん永遠に続く論争。目指すのは「世界中での認知」
きのこの山とたけのこ里を巡る議論が全国民を巻き込むほどに白熱し、20年以上もおこなわれ続けているのは、ひとえに大勢の人々がこのお菓子を愛しているからだった。愛しているからこそ「なぜ好きか?」を語り、そして語るからこそさらに愛が深まっていくのではないだろうか。

「お菓子の本質は、人と人とのコミュニケーションだと思います。子供も大人も同じ話題で盛り上がれるお菓子ってなかなかないですよね。きのこの山とたけのこの里がそのようなお菓子として愛されていて、本当にうれしいです。また『どっち派?』は私としてはまだまだ決着はついてないと思っています。お菓子が販売され続ける限り続く、永遠のテーマですね!」

今や国民的チョコレート菓子となったきのこの山・たけのこの里が目指すのは、“世界各国の人々に食べてもらうお菓子”。将来、世界各国の人たちと「きのこの山とたけのこの里、どっち派?」と話せる日も近いかもしれない。

グローバルに認められるのは一体どちらだろうか?これからの活躍と議論の行く末が楽しみだ。

取材・文=福井求

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