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タグ裏に謎のメッセージ!?奈良県のスポーツブランドが発信するアツい思い

  • 2021年12月29日
  • Walkerplus

「ユニフォームをたたんでたらタグの裏になんかよいこと書いてあった」「ママさんバレーのユニフォームのタグの裏に熱いメッセージが」。しばらく前から、SNSでこんな投稿を見ることが増えてきた。

タグ裏には「勝つことだけが目的では、勝負には勝てない」。ユニフォームを着る人の心に響くメッセージだ。こんなメッセージを発信しているのはどんな企業なのか、探ることにした。

■「勝つことだけが目的では、勝負には勝てない」メッセージ誕生の背景とは?
メッセージの入ったユニフォームは、サッカーやバスケットボールなどの球技を中心とした「チームスポーツウェア」ブランド「SQUADRA(以下スクアドラ)」のもの。ちなみにスクアドラとはイタリア語で「チーム」を意味する。このブランドを展開する株式会社アクラムの勝谷仁彦(かつやきみひこ)社長に、メッセージについてお話を聞いた。

なぜ、ユニフォームにこのようなメッセージを入れるようになったのだろうか。勝谷社長はその理由を2つあげる。

「一つは、スポーツをする子供たちへの指導方法が、社会問題になっていること。勝利至上主義になるあまり、指導者の体罰や暴言などが取り上げられるようになりました。スポーツだけではありませんが、一方的にやらされるだけでは勝つことはできません。確かに勝つことは大切であるし、そのために厳しい練習に耐えて頑張るわけですが、それだけではなく、その勝利の先にチームメイトや家族、関わる人たちが喜んでくれることによって自らの人生に影響を与える、と考えるからです」

そしてもう一つ。これは自身の経営体験から来ているという。「先代から引き継いだ当初、会社の業績が苦しく多大な借金がありました。それをどのように解消していくか考えるうちに、会社の規模や利益の大きさだけでなく、その先の目的を考えるようになりました」

さらに勝谷社長は言葉を続ける。「売上を目的とするのではなく、その先のお客さんが喜んでいる姿や、納入先のチームが強くなることを社員と共有することが、一番の目的だと考えています。スポーツと経営がリンクした瞬間に、『勝つことだけが目的では、勝負には勝てない』というメッセージが浮かんできました」

このメッセージは自社ブランドのスクアドラを立ち上げた2012年からスクアドラの試合用公式ユニフォーム、プラクティスシャツ、プラクティスパンツ、ジャージ、ウィンドブレーカーの衿タグに記載されている。

■メッセージに共感したお母さんたちがSNSに投稿
当初、このメッセージについてはあまりPRされていなかったが、2018年ごろから同社ブランドの認知度が徐々に高まると同時にSNSの普及もあり、「衿タグを見付けた方からの投稿が急に増えだしました」と勝谷社長。そこにはうれしい誤算もあった。

「弊社としては、選手や指導者にタグを見つけてほしいと考えていましたが、一番SNSで投稿が多いのが『洗濯をする保護者の方々』。洗濯機に入れるときにふと見つけたお母さん方が、子供に対する悩みや指導に対する悩みと合致するところがあり、共感をいただいて、SNSへの投稿が急激に増えました」

■カタログのメッセージもアツく響く
ユニフォームに加えもう一つメッセージを発信しているのが、毎年1月に発刊しているチームオーダーウェアのカタログだ。これは毎年スローガンとしてのメッセージを決め、記載している。こちらは2012年の「ユニフォームは『買う』じゃない。『共に創る』んだ!」、2013年の「『勝つ』ことだけが目的では、勝負には勝てない。」、2014年の「伝統がはじまる。」、2016年の「チームとは、物語だ。」、2020年の「背負っているのは、番号だけじゃない。」など毎年様々なものが発信されている。

カタログのメッセージは「私たちブランドの思いを、スポーツをする選手や指導者、とくに子供たちにどのように伝えるか毎年苦労します。わかりやすくしようとすると深みがなかったり、難しくて伝わりにくかったりをクリアするのに毎回半年程度かけて、メッセージを考えます」と、時間と熟慮を重ねたうえで発信されている。だからこそ、読む人の心に響くと言えよう。

■ユニフォームは思いを一つにするアイテム
同社の本社、工場ともに奈良県北葛城郡広陵町にある。昇華転写プリントという技術を使い、チームスポーツのユニフォームをチームごとのオリジナルデザインはもちろん、選手ごとの番号、サイズなどをカスタマイズして約3週間で届けるサービスを展開している。

ユニフォームは特定の競技に特化せず、「チーム」であればなんでも作成するというコンセプトでブランディング。野球やサッカー、バスケットボールといったメジャーな競技だけでなく、ハンドボールやラグビー、ラクロス、アイスホッケーなど幅広い競技ユニフォームを取り扱う。素材の調達から、裁断、デザイン、プリント、縫製、出荷まで一貫生産していて、新規注文は5着から受け付け、同価格で1着から追加注文も可能だ。

今後の展開や目標について「私たちの目的はユニフォームをたくさん売るということもありますが、いかにスポーツに対する考え方や生き方を考える人が増えるかということにもあります」と勝谷社長。

「そういった意味では、スポーツという枠にとらわれず『チームであればなんでも作ることができる』ブランドを目指しています。家族や地域、会社など、なんでもチームだと考えることができます。その人たちが思いを一つにするアイテムをオリジナルで作ることができれば、世の中が少しでも良くなるのではないでしょうか」

最後に、読者やお客様へのメッセージを尋ねると「スクアドラはまだ10年しかたっていない小さなスポーツブランドですが、機能性や利便性と、考え方や哲学を併せ持つ新しいブランドとして、日本から世界に発信していきたいと考えています。チームで起こったさまざまな物語を、スクアドラと一緒に育んでいきたい」と熱い思いを語ってくれた。

スクアドラはまだまだ若いが、これからののびしろが楽しみなブランドだ。

取材・文=鳴川和代

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