Instagramに投稿する赤裸々なエッセイ漫画が反響を呼んでいるみくるべ(@mikurube_manga)さん。この秋には「心や身体が弱い人の暮らし方」を連載し話題に。原因が見つからないのになぜか体調不良が収まらず、心もどんどん弱っていく…そんなつらさを描いた話だ。みくるべさんの日々の生活や思いなどを聞いてみた。
■自分でも手に負えない「病む」ことのつらさを共有する
みくるべさんは短大卒業後に就職し、入社4か月後から体調を崩すようになったという。毎日ミスを繰り返すなどいろいろな心労が重なり、結局12月には退職した。その後もなんとか体調を戻そうと思い、いろいろな病院を訪ねてみたが、結果はすべて「異常なし」。子宮内膜症の一種である「チョコレート囊胞(のうほう)」を発症した期間もあったものの、総じて体調不良の直接の原因になりそうな異常はなく、自分は元気なんだと思えば思うほど、逆に心も体もどんどん弱っていく日々が続いた。
前向きであろうと踏ん張る一方で、好きで体調不良になっているわけじゃないのに…と、思い通りにいかない苛立ち、不甲斐なさを感じていたとか。そんな中ずっと考えていたのは、心や体が弱くて「どうして自分は普通じゃないのだろう…」と悩みをもつ人が、実はたくさんいるのでは？ということ。この疑問がのちに「心や身体が弱い人の暮らし方」を配信するきっかけになった。
「新卒で入った会社をうつ状態になり10か月で辞めてしまったことから、長年キャリアに対してコンプレックスがありました。誰かが作った『普通』の呪いを取っ払って自分らしく働ける方法を、同じような人たちと見つけて共有したいと、連載を決めました」
■「悩んでいるのは自分だけじゃない」孤独を取り除く助けになれば
連載したところ、かなりの反響があったそう。「自分だけではないのだ、と安心しましたね。『自分らしく働ける道を探したい』などと、共感のコメントやDMをたくさんいただきました。また、自分なりの働き方を見つけたロールモデル(模範となる人物)といえる方からの声も。いろんな道があるんだなと、とてもワクワクしました！」
漫画の中では、そのロールモデルの一人、りなさんにもインタビューしている。「自分に合う働き方はなんだろう？と自己分析し、そこへ導いてあげることが大事だと感じました。りなさんはコンピュータのコーディングが得意という強みを見つけて、自分のペースでお仕事をされています。人それぞれいろんな強みがあると思うので、周りと比べず模索していけたら」
これからもいろんな人から話を聞き、漫画を通してさまざまな生き方・働き方があると伝えていきたいそう。「(描くことで)心や体が弱くて悩んできた人へ『自分だけじゃないんだ』と安心をお届けできた。自分を責めながら悩まれてきた人たちの孤独を、少しでも取り除けていたらうれしいですね」
■とことん落ちた時には「マッスルみくるべ」が現れる⁉
漫画の中に出てくる印象的なキャラがある。何事にも肯定的で不安を吹き飛ばしてくれる、みくるべさんの分身(？)ともいうべき存在「マッスルみくるべ」だ。
「とことんまで落ちると、自分の中で突如出現します(笑)。気分が落ち込むと『自分はダメ人間だ』と自己嫌悪に陥るのですが、心の奥底ではそんな自分を変えたくて…」。そんな時に「大丈夫だよ」と言ってもらいたくて現れる、頼もしい存在なのだという。
長年自分と付き合っていると、もう一度立ち上がるためにそれなりの解決法が生まれてくるもの、とみくるべさん。「痛いものは痛い、苦しいものは苦しい、人と比べる必要はない。落ち込んでもいいけど、大切なのは元気になった時にどうするか」。仕事で頑張りたいと思うなら改善点を探して、誰でもない自分なりの生き方を模索しようと決意した。
■今後、挑戦していきたいと思っていることは？
そんな、みくるべさんは今、フリーランスとして生計を立てている。「初心者さん向けのお絵かき講座もやってみたいですね。私自身コミックエッセイがきっかけでいろんな方と出会えたので、描くことでご自身の強みを発信する機会が増えたらいいなと思います」
今後は、自分の体験記以外にさまざまな人のエピソードを描いていきたいとのこと。「読んでくれた人が元気になることで、自分もとてもパワーをもらえて、お互いに励まし合える。うれしい相乗効果です。また、いろんな人の意見を知ることで『こんな選択肢もあるんだなぁ』と知ることができますし、みんなで共有してワクワクしていけたらと思います」。
みくるべさんの得意分野は、つらい話もギャグにしてしまうこと。これからもコミックを通して共感とちょっとした笑いを届けてくれる、みくるべさんの漫画に注目だ。
取材・文＝斉藤育世(エディターズ・キャンプ)
