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ペットボトルがもはや本物!リアルすぎる切り絵に「脳がバグる」と話題

  • 2021年12月14日
  • Walkerplus

水の入ったペットボトル、氷と水が入ったグラス。一見普通の写真に見える4枚に添えられた言葉は、「全て、切り絵作品です。。」。本物にしか見えない切り絵作品が、SNSを中心に話題になっている。投稿には9.4万以上のいいね!が付き、「脳がバグります」「切り絵に見えない」と驚きのコメントが殺到。作者である立体切り絵作家のSouMaさんに、作品に込めた思いや創作活動について聞いた。

SouMaさんがアーティストとして活動をスタートしたのは2012年。子供のころにはすでにカッターを使った作品作りを始めていたそう。「折り紙などの立体的な造形物によく切り模様を施していました。小学生のころに浮世絵を写して作った平面作品を家族が保管してくれていたので、展覧会で時々展示しています」

■独自の手法を生かした繊細で多彩な作品を発表

本物と見紛う繊細な作品に使うのは、和紙とデザインカッター1種類、カッター板のみ。さらに美術やデザインを学んだ経験はなく、師匠もいないというから驚きだ。

そんなSouMaさん独自の技法として注目されているのが、陰影を表現するために随所に使われているという「剥がし切り」。「通常では紙をくり抜くために紙の厚みの最後まで刃を刺して切り取りますが、刺す深さを途中で止めて切ることで紙が薄膜の状態で剥がれます。紙の厚みを感じながら、カッターの刃を刺す深さを変えて削るように切っています。剥がし切りをすることで何段階ものグラデーションを表現することが可能です。紙を削っていくと説明するとよく厚みのある紙を想像されますが、使用している紙はコピー用紙ほどの薄さです」

剥がし切りは、光って見せる点でも活躍。「作品には紙そのものの白い線が全体に残っているように見えますが、より光って見せたいポイントを強調させるために、それ以外の白い線全体を、目では濃淡を区別できない程度に少しだけ剥がして明度を落としています。近くで見ても剥がし切りをしていることが分かりませんが、作品全体を引いて見た時に自然と光って見せたいところだけ明るく感じるように工夫しています」

立体切り絵では、紙を濡らして捻り紐を作って編む、空洞のある丸い玉を作る、折り重ねて厚みを出した紙板を作って彫刻のように削るなど、さまざまな手法を駆使。現在創作に使用している手漉き和紙だからこそできることだという。

多彩な作品は、数時間で完成するものもあれば数か月かけて完成させるものも。作り始める時には、下絵や設計図すらないことも多いという。「立体切り絵は、パーツで作るのではなく、つながった1枚の紙からできています。複雑に組み立てていくので紙の裏や表は関係なくなります。そのため、下絵を描くと丸見えになってしまうのでなるべく描かないようにしています。使用する和紙に大まかな印をある程度書いた後に、ぼんやりと完成形をイメージしながらとりあえず切り始めることが多いです。そして何かの作品を切り始めると、作りながら別の作品の構想もスタートさせていきます」と制作過程も独自のスタイルを持つ。

■水害の経験から生まれた新たな代表作はペットボトルがモチーフ

冒頭でも紹介した最近の作品はリアルすぎて立体にしか見えないが、「シンプルな平面の切り絵です。1枚の平面の白い紙をカッターで切り取って黒い背景紙に貼っています。皆さんが切り絵と聞いて思い浮かびやすい、とてもベーシックでシンプルな切り絵の手法だと思います」とのこと。

ペットボトルというモチーフは、これまでの作品とは異なる印象を与えている。「水と光の表現は以前から挑戦したいテーマでした。普段は抽象的で想像上のものを作ることが多いのですが、今回のような写実的でシンプルな平面の切り絵を作るきっかけになったのは、シリーズ最初に完成したペットボトルの2部作品を作ったことです。これは今年、私の住む地域で起こった水害でのある出来事から、生かす水と奪う水をテーマに、作業机にあったミネラルウォーターを見ながら一心不乱に作ったことがスタートになっています。それ以降は、水と光のテーマになりそうなモデルを探して作っています」

また、「ペットボトルという容器に入った飲水は現代に生きる人の生活を象徴した素材であると感じましたし、水害といったエピソードを1本のペットボトルというシンプルな題材に込めることは私にとってチャレンジでした。ペットボトルの2作品は水と光を表現する創作のきっかけにはなりましたが、その後のグラス作品とは別の意識を持って取り組んだ作品です」と、熱い思いが伺える。

作品に関する感想で印象的だったものを聞くと、「技術面よりもなぜその作品が生まれたかなど、作品の奥にあるストーリーに興味を持っていただけた時はうれしいですね。今年の春にはコロナ禍で特に面会を厳しく制限された長期療養施設で、患者さんと医療スタッフの皆様限定の院内展覧会をさせていただきました。その後、患者さんから『アートを見て自分も何かを始めたい』という感想があったことを聞きました。アートは受け身になりがちですし切り絵はどうしても見た目の技術ばかり目立ってしまうのですが、見た人がその先へ動かされるような作品作りを頑張っていかなければならないと改めて感じました」と話してくれた。

■紙以外の作品にも携わっていきたい

これから作りたい作品については、「まずは貪欲に和紙の表現を追求した作品を生み出すことに励んでいきたいです。また、過去には百貨店のイベントで、高さ2m、幅6mの壁面の立体作品と高さ2mのオブジェを洋紙で創作し演出しました。洋紙は現場で瞬時にアレンジを加えてスピーディーに作業を行うことができますし、洋紙の真っ白でインパクトのある華やかな存在感は普段とは違うイマジネーションが湧いてくるので、そういった機会を大切にして大型作品の表現の幅を広げていきたいです」と語る。

今後の展望については、「紙作品に限らず、SouMa監修でさまざまな作品や演出の企画に携われたらと考えています。これからも切り絵の可能性を信じつつも切り絵というジャンルにも縛られない、SouMaらしい作品を国内外問わず発表し続けていきたいと思います」と意気込む。

最後に、「新型コロナの影響で中止になりましたが、海外での展示や企画のお話もありました。今はまず、日本全国の美術館で展覧会を開催したいと思っています。また、企業からの依頼でインスタレーションや大型造形物の制作、デザインコラボなどさまざまな分野にさらに挑戦していきたいと思っています。ホームページでは作品の販売やオーダーのご相談も可能です。これから、YouTubeも本格的に始めていきます。ぜひ皆様にSouMaの世界を知っていただけければと思います」と話してくれた。

取材・文=上田芽依(エフィール)

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