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【SDGs】「多様性」を追求するセサミストリート、子供のニーズに寄り添う理由

  • 2021年11月1日
  • Walkerplus

世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、各企業でもさまざまな取り組みが行われているが、具体的にはどのようなことが行われているのだろうか?そこで今回は、子供向け教育番組「セサミストリート」の日本国内エージェントであるソニー・クリエイティブプロダクツと、その制作版権元である米国NPO法人セサミワークショップ/セサミストリートジャパンの広報担当者にインタビューを実施。「セサミストリート」が果たす役割などについて聞いた。

■SDGsってなに?
SDGsは、国連に加盟するすべての国が、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成。アジェンダでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。

■キーワードは多様性。「セサミストリート」には約140のキャラクターが登場
SDGsが重視する多様性の重要さを、1969年にアメリカで放映を開始して以来、52年にわたり子供たちに伝え続けてきたテレビ番組「セサミストリート」。

放映開始当時は、人権・貧困・教育格差その他さまざまな社会的問題が渦巻いていたが、そのようななかで、クオリティーの高い教育にアクセスできなかった子供たちのために「平等に、そして楽しく勉強できる場所を提供する」という意味でスタートしたのが、この“テレビという媒体”を使った活動だった。

「セサミストリート」は、「すべての子供たちがかしこく、たくましく、やさしく育つことを支援する」という理念を掲げ、今では世界150以上の国や地域で番組の放映だけでなく、さまざまな活動を実施。それぞれの国や地域が抱える社会問題や、教育のニーズに合わせた多彩なプログラムを展開している。

――「セサミストリート」では、カラフルなキャラクターたちが、多様性豊かな環境のなかで、隔たりを感じさせないグローバルなコミュニティを見せてくれていますが、その世界観について詳しく教えてください。

【セサミストリートジャパン広報担当者】まず、「セサミストリート」のアプローチでは、守っていることが4つあります。1つ目は「子供の早期教育にコミットする」ということ、2つ目が「世界中にいる子供たちの、その場所・ときのニーズに合うものを届ける」ということ。

セサミストリートには時代と共に多様なキャラクターたちが登場しているのですが、例えば、ホームレスのキャラクターや里子として育つキャラクター、南アフリカではHIV陽性という5歳の少女のキャラクターがいたりします。いろいろな場所に、いろいろなニーズを持っている子供たちがいるということを把握して、その子供たちに届くコンテンツを広げていこうと考えているんです。

そして3つ目に、「難しい問題からも絶対に目をそらさず子供たちに寄り添う」ということ、4つ目に「キャラクターたちと一緒に活動する」ということを大切にしています。これらの考え方と共に、キャラクターたちから、温かみ、優しさ、かわいさも伝えていけたらと思っています。ちなみに、現在は約140のキャラクターが登場しています。

最近では、難民キャンプで生活している男の子と女の子のキャラクターが登場しており、大きな反響がありました。「セサミストリート」は、実際に難民キャンプで教育を展開しているのですが、現地では、そこで生活している子供たちがこのキャラクターに自分のことを投影しながら、一緒に困難を乗り越えていくような姿が見られました。

――「セサミストリート」の新しいキャラクターを生み出すとき、どのような流れで進められているのでしょうか?

【セサミストリートジャパン広報担当者】例えば、自閉症のキャラクターが2015年に登場しているのですが、開発は2010年頃から始まっています。開発が始まった当初、アメリカでは68人に1人の子供が自閉症と診断されているというデータがあり、診断数が増加しているにも関わらず、社会の理解が得られていないという事実がありました。

そこで、現状の把握やニーズの分析などにしっかりと時間をかけ、専門家と話し合いを重ねながらキャラクターを開発。同時に、そのキャラクターとともに提供するコンテンツなども制作し、それらの効果測定なども行いながら、エビデンスをしっかりとって進めていました。セサミストリートの活動、そしてキャラクターのすべてには、そういった研究とリサーチの結果が反映され、常にエビデンスで実証されたものを展開しています。

――「セサミストリート」の活動・取り組みの中で、特にSDGsの理念に通じるものについて教えてください。

【セサミストリートジャパン広報担当者】「セサミストリート」は、特に下記4つの項目を目指すべきゴールとして取り組んでいます。

<「セサミストリート」・4つの目標>

【3】すべての人に健康と福祉を
【4】質の高い教育をみんなに
【5】ジェンダー平等を実現しよう
【6】安全な水とトイレを世界中に

【4】は、「セサミストリート」の活動全般に当てはまることで、「質の高い教育をみんなに届けていく」というのは活動開始当初からのミッションでした。学校に行っていない子供たちも「家にテレビがあって、学校に行っていない間はテレビを見ている」というデータがあったので、そこからテレビを使って教育を届けるという手段を選びました。

時代とともに、子供にリーチできる最適な方法を考え続け、今は、紙の媒体やラジオはもちろん、ウェブやソーシャルなどのデジタル媒体も活用しています。日本ですと小学校を通じて教材を配布していたりもします。

■世界中の子供たちから反響の声が集まる
――「セサミストリート」によってSDGs促進に影響を与えたと思われるエピソードや反響があれば教えてください。

【セサミストリートジャパン広報担当者】【6】の「安全な水」で言うと、シリアやロヒンギャ難民の問題も含み、現在、WASH UP!(ウォッシュアップ)というキャンペーンを15カ国で展開しています。これは手洗いや衛生管理、きれいな水の大切さなどを伝えるもので、国連のヘルスアンバサダーに選ばれたキャラクター「ラヤ」が、トイレの使い方や生理の問題など、大人から見ると少しタブー視されがちなテーマを「子供の目線で伝えていく」ということを行っています。

この活動の結果、インドではキャンペーンに参加すると、48%の子供たちの「家でのトイレの使い方が改善された」という報告がきています。また、ザンビアでは5万2000人の子供たちがこのプログラムに参加し、学校教育でもこのプログラムが使われるようになりました。さらに、ナイジェリアでは、番組を見ていない子に比べ、見ている子は2倍近く「手を洗うようになった」という報告もありました。

日本では公立小学校に、心の健康や、お金の使い方を通した経済的健康、夢の実現や多様性について学ぶ「セサミストリートカリキュラム」という教材を提供しています。これは一般学級と特別支援学級の子供たちが一緒に学べるプログラムで、子供たちの学力の向上だけではなく、社会性や情緒的行動、生涯学習における基礎的な資質の育成することを目標としています。

授業では、「答えのない問題」を考えるというプログラムなのですが、子供たちからは「答えのない問題の答えを考えるのが楽しかった」「普通の授業では発言できなかったけど、セサミストリートのクラスなら発言できた」「思い描く『夢』について具体的に考えることができた』といった声をいただいています。

「セサミストリートカリキュラム」は現在72のテーマがあるのですが、その1つのテーマで使用されている質問としては、例えば「海に行くとき、あなたは何を持っていきますか?」といったものがあります。これは、“ほしいものといるものは同じか”と、価値について考える単元で出題しているのですが、子供たちからの回答では「お水」「クッキー」「ゲーム」「日焼け止め」などさまざまなものが出てきます。

そういった、多様な価値観があることを意見交換しながら、子供たちは「ほしいものといるものは違うということ」「使えるお金などリソースが限られているとき、いるものの方が優先されること」「自分にとってほしいものでも、ある人にとっては必要なものだ」といったことを学びます。

――SDGs促進において「セサミストリート」が果たす役割とはどんなものですか?

【セサミストリートジャパン広報担当者】「セサミストリート」としては、これからも世界中の子供たちに、幼少期から良質な教育を届けていくということをミッションに活動していきたいと思っています。そして、子供たちに投資をするということが、貧困をなくすことやジェンダーの平等を実現すること、世界の平和など、SDGsを達成するということにもつながっていくと考えています。

またそれ以上に、教育・医療・経済などの面においてもいろいろな利益を生むということがリサーチで分かっていますので、早期教育の重要性を伝えながら、多くの専門家やパートナーの皆様と一緒に、世界中の子供たちを支援していきたいと思っています。

――9月のSDGs週間では、黒柳徹子さんの公式YouTubeチャンネル「徹子の気まぐれTV」で、エルモと黒柳さんが共演していました。「セサミストリート」の番組にも、活動に賛同するセレブリティが続々と出演されていますが、反響の大きかった方はいらっしゃいますか?

【セサミストリートジャパン広報担当者】「セサミストリート」とのコラボ曲「あきらめないで」をブルーノ・マーズさんが披露した回や、ナタリー・ポートマンさん、エド・シーランさんの回などですね。放送50周年を記念して、たくさんのセレブリティが再登場してくれた回も反響がありました。

元ファーストレディのミシェル・オバマさんが、ビッグバードと一緒にホワイトハウスのキッチンで健康的な生活や食について教えた回は今も人気があります。

【ソニー・クリエイティブプロダクツ担当者】黒柳徹子さんとは弊社で他IP(キャラクターなどの知的財産)でもご一緒し、今回はSDGsの機運を高めることを目的に同期間に東京スカイツリーが点灯する「SDGsをイメージした17色の特別ライティング」のバーチャル点灯式を、エルモと一緒に務めていただくことができました。

収録時、徹子さんと直接お話した際に、彼女は昔からセサミストリートのファンで、ニューヨークに住んでいたときには出演のためのオーディションを受けに行こうかと思ったほどだと仰っていました。またユニセフの親善大使をされていらっしゃるということで、SDGsにも非常に関心があり、世界中を周り、いろいろな方々に会っていろいろな風景を見てきて、第一に貧困をなくすということが実現され、皆が一日も早く幸せになってほしいと仰っていました。

彼女のYouTubeチャンネルでは、エルモも一緒に魔法のじゅうたんで飛んで「SDGsをイメージした17色の特別ライティング」のバーチャル点灯式を行う様子の動画がアップされており、温かいコメントがたくさん寄せられています。

――今秋から番組の動画配信がスタートしたり、来年も番組を企画中の「セサミストリート」。今後は、どのような活動や企画をお考えでしょうか。

【セサミストリートジャパン広報担当者】今秋、大手動画配信サービスにて、日本未公開のセサミストリートのエピソードを公開する予定です。

また、日本においては、先ほどお話した「セサミストリートカリキュラム」のほか、医療機関を「健康について楽しく学べる場所」にすることを目的とした「セサミストリートクリニック・ファーマシーメンバープログラム」、自閉症をはじめとする発達障害や多様性について学ぶプログラムなどをもっと広めていきたいと考えています。

併せて、日本独自のイニシアチブを立ち上げていけたらと考えています。地方に住む子供たち、外国籍の子供たち、教育が届きにくい場所にいる子供たちを支援したり、子供たちのメンタルヘルスに寄り添う活動をしたり。多様性を軸に、日本のニーズを入念にリサーチしていますので、これらのイニシアチブも立ち上げて活動を展開していきたいと考えています。

【ソニー・クリエイティブプロダクツ担当者】さまざまな事業を行うソニーグループとして、グループ内での協業を考えています。ソニー・ミュージックエンタテインメントでは、音楽やアーティストとのコラボレーション活動も考えています。

セサミストリートは性別関係なく、三世代に渡る幅広いファン層を持っているIP(キャラクターなどの知的財産)ですので、子供たちはもちろん、親世代やZ世代など、いろいろなタッチポイントを増やして皆さんに楽しんでいただけるよう、商品化やイベントなど仕掛けていきたいと思います。また、コロナ禍が収束すれば、「セサミストリート」と一緒に、ソニーの教育玩具・プログラミングトイを使って、親和性のあるワークショップなどを行ってみたいと考えています。

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