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文庫本がアイスバーに変身!大阪の「街の本屋さん」が作るブックカバーが全国に展開中

  • 2021年8月28日
  • Walkerplus

ある書店で文庫本購入者に無料で配布しているブックカバーを付けるとあら素敵!本がアイスバーやクリームソーダ、紙袋から顔を出したバゲットに大変身。ブックカバーと栞の組み合わせを利用したデザインが秀逸で、これを目当てに来店する人もいるほどだ。

このブックカバーを制作・配布しているのは大阪市鶴見区にある「正和堂書店(せいわどうしょてん)」。2021年4月にはオリジナルブックカバーを使って全国の書店を盛り上げたいとクラウドファンディング(以下、CF)を実施。8月から47都道府県の260店舗の書店でオリジナルブックカバーの配布をスタートさせ、好評を博しているという。オリジナルブックカバーができた経緯やCFの狙いを、ブックカバーのデザイナーであり、CFの立ち上げ人である小西康裕さんに聞いた。

■来客数増加を狙って自腹で始めたオリジナルブックカバー
正和堂書店は小西さんの祖父が1970年に創業。一時期は本店に加えてもう2店舗あったが、出版不況のあおりを受けて今は本店のみ営業している。小西さんの母と弟が経営に携わる家族経営の「街の本屋さん」で、印刷会社に勤めている小西さんは週末のみ書店の手伝いをしているそう。その手伝いの一環として始めたのがインスタグラムの利用だった。

「2017年ころからインスタグラムを利用しておすすめ本の紹介をするようになりました。選書、撮影、投稿と私が担当しています。SNSをご覧になっている方の9割が女性ということもあり、『主観を入れずに見てくださっている方に寄り添うこと』が選書のコンセプトです。自己啓発系の書籍が人気ですが、マイノリティなテーマにも時々触れるようにしています。SNSで紹介した本をひと目でわかるように展示している棚を用意したり、SNSで話題の本をカテゴリー化してフェア展示をしたりと、SNSと連動した書棚作りもしています」

小西さんの地道な投稿が実を結び、2021年8月現在でインスタグラムのフォロワー数は約9万人に。ところが、直接的な来客数増加には繋がらなかった。そこで小西さんが考えたのがオリジナルブックカバーの配布だったという。

「最初に作ったのは夏に合わせてアイスバー風のカバーで、2種刷りました。当店のプロモーションを兼ねての制作だったので、配布枚数も少なく、私の自腹を切る分、好き勝手やらせてもらっていました(笑)」

自腹を切ったかいあって、回を重ねるごとに来客数は増加。反響が大きくなったため、小西さんの自腹ともいかなくなり、現在はネット販売も活用することで費用を捻出している。

オリジナルブックカバーは今や10種類以上展開。そのなかでも特に人気なのはスイカのアイスバーとクリームソーダなんだとか。制作のこだわりポイントを聞くと「栞だけ、ブックカバーだけを使ってもデザインとして成り立つようにしているところ」とのこと。また、夏らしいデザインだけではなく、焼き芋や毛糸など季節に合わせたデザイン展開も魅力だ。

■書店を盛り上げたいと始めたCF。「本屋を応援してくれる人の多さに勇気をもらった」
こうしてオリジナルブックカバーは正和堂書店に全国から来客者を集めた。「久しぶりに本を読みたくなった」「読書が楽しくなる」といったコメントももらい、本を読むきっかけを提供できたことにも手応えも得られた。そんな中、新たな問題として起きたのがコロナ禍だった。

「遠方に住んでいるため、本を買いに行けないといった声をいただくことが増えました。そしてコロナ禍で苦労しているのは当店だけではなく、全国の書店みんなです。そこで、当店のブックカバーを全国の書店で配ることができれば、より多くの書店に足を運ぶきっっかけを提供できるのではと考えました」

そして「競争よりも協業を!」をスローガンにCFを開始。キャンペーンロゴを配した全国配布用のブックカバーの制作協力金と、配布に協力してくれる書店を募った。

「今までブックカバーのデザインは私一人でやってきましたが、CFは出版社、編集の方、書店員の方、出版取次の方と、本に関わるさまざまな方が応援してくださり、実現に至りました。文学Youtuberのベルさんに紹介動画を作ってもらったり、兵庫県の出版社・ライツ社の方にもCFの拡散をしていただいたり。おかげさまで、1か月半という期間よりも早く、2週間程度で資金が集まりました。本屋を応援してくださる方がこんなにもいたことに、まだ本屋を継続していけるとたくさんの勇気をいただきました」

資金だけではなく、47都道府県の各書店に協力をしてもらうという目標も達成。協力店の方からは「コロナ禍でイベントの開催ができない中のブックカバーチャレンジ。同じ思いを抱える多くの書店にとっての灯になっている」「お客様も経営に苦しむ書店にもうれしい、素晴らしい企画だと思う」「今回の企画を機に自分なりのオリジナリティーを考えていきたいと思うようになった」と好意的な反応が集まった。ブックカバーも即日配布終了になった店舗も出たそうだ。

「今後も本屋に行きたくなる施策をたくさん検討しているので楽しみにしてほしい」と語る小西さん。今冬には、コーヒー機器総合メーカーの「カリタ」と協力し、コーヒーショップとブックカバーを繋ぐ企画を実現予定だ。

「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです」

これはCFのキャンペーンロゴのモチーフとなった科学者ニュートンの言葉。先人の知識・経験の積み重ねのおかげで、新しい発見を得られたことを指しているという。小西さんは書店もこの言葉を体験できる「巨人の肩に乗れる場所」と考え、ロゴを作成したそう。あなたも、あなたの街の「巨人の肩に乗れる場所」に足を運んでみてはどうだろうか。新しい発見がそこにはあるはずだ。

取材・文=西連寺くらら

※「ブックカバープロジェクト」のカバー在庫状況は、店舗によって異なります。各協力書店にお問い合わせください

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