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眠れぬ夜を支えてくれたのはお菓子作り。辛い心に寄り添うエッセイ漫画が話題

  • 2021年9月8日
  • Walkerplus

あなたは、眠れない夜を過ごしたことはありますか?何もできないまま1日が終わってしまって、落ち込む時はどうしている?

そんな“しんどい時間”を少しでも軽くする方法を描いたエッセイ漫画「眠れぬ夜はケーキを焼いて」がTwitterで共感を呼んでいる。料理レシピ本としても注目を集めており、2021年9月7日には「第8回料理レシピ本大賞」のコミック賞を受賞した。

作者は午後さん(@_zengo)。シンプルな線と柔らかなアースカラーで描かれたエッセイ漫画が生まれたきっかけを聞いた。

■苦しい夜の過ごし方を描くことで同志への恩返しをしたかった
3時間睡眠の日もあれば、18時間以上眠ってしまうこともあるという午後さん。特にここ数年は苦しい夜を過ごすことが多く、そんな時はTwitterを眺めていることが多かったのだそう。

「深夜Twitterを眺めていると、毎晩いるメンバーは大体同じで、自分と同じように苦悩を抱えた彼らの存在に、いつも相当救われていました。そんな彼らへの恩返し…というと大げさですが、私なりの“気持ちが辛い時の解決法”を発信することで、彼らが少しだけでも楽になってくれるのではないかと、2020年4月ごろに思い立ったのがきっかけです。漫画という形をとったのは、しんどい時、一番ストレスなく読める媒体は(人によるとは思いますが…)多くの人にとって漫画だろうと思ったからです」

そうして描いたのが第1話の「真夜中にケーキを焼く話」。10P以上の漫画を描くのは初めてのことで、コマ割りや構成、絵のアングルなど考えなくてはならないことが山積みで大変だったという。「でも、とてもワクワクしながら描きました。ペンダブ(ペンタブレット)を持つのも初めてだったので、今見ると絵の出来がひどいのですが、それもまたよい思い出です」とのこと。

漫画の中で、午後さん自身はオオカミの姿で描かれているが、これは幼少時から大好きな絵本からインスパイアされたもの。

「佐々木マキさんの『やっぱりオオカミ』という絵本が大好きで、その作品からの影響が大きかったのが一番の理由です。ほかにも、“動物占い”でオオカミだったり、ゲームの『どうぶつの森』のオオカミのキャラクターに似ていると言われたりと、何かとオオカミとの接点が多かったので、じゃあオオカミにしちゃおうと思い、決めました」

眠たげな目をしたスラリとしたオオカミがケーキ作りに勤しむさまは、童話の世界を感じさせ、漫画をより優しい世界に仕立てる効能もあるようだ。

■「なくても困らないけど、あるとうれしい」お菓子作りの魅力
お菓子作り以外の話もあるが、作中でパウンドケーキ、カップケーキ、プリン、レモンケーキと様々なお菓子作りの様子を披露している午後さん。お菓子作りには小学生の頃から親しんでいたという。

「甘い物も、物作りも、実験も好きだったので、私にはぴったりの行為だったのだと思います。学校に行けず、外にも出られない時期がありました。その時に、何かから逃れようと狂ったようにお菓子を作っていて、辛い時の救いとしてのお菓子作りを始めたのはこのころからです」

最近はコンビニスイーツなどもレベルが高く、気軽においしいスイーツが楽しめるようになってきたが、そんななかで単純に買うのではなく、お菓子作りという手間のかかることをする魅力は何だろうか?

「お菓子ってご飯と違って、なくてもいいものなんですよね。そんな“なくても困らないけど、あるとうれしいもの”にかける時間こそが、心のゆとりや豊かさを培う時間になるのではないかと思っています。うまく言い表せませんが、回り道のような魅力があるかと」

■「あなたの存在が、私の大きな力になっています」
苦しい夜を過ごす方法を共有するために始めたエッセイ漫画。読者からの「感覚や感情、苦悩がとてもよく分かる」「読んで少しだけ楽になった」という反応が午後さんの喜びになっている。

「私は誰かと、精神的に追い詰められた時の蘇生術のようなものの共有をしたいのですが、残念ながらそこまでの話ができる仲の友人がほぼいません。でも、作品を通してたくさんの人とそういった話ができたことが、本当にうれしかったです。読者の方にはいつも感謝しています。あなたの存在が、私の大きな力になっています。これからも『もう色々嫌になっちゃうよねえ』なんて言い合いながら、ゆるくお付き合いいただけましたら心からうれしいです」

お菓子や料理作りの話のラストにはレシピも掲載。「実際に作ってみた」という人も多いそうで、その報告もうれしいとのこと。第1話のパウンドケーキは主材料になるバター、砂糖、卵、薄力粉の分量が同じなので試しやすいレシピ。眠れぬ夜に限らず、気分転換したい時や、無心になりたい時にチャレンジしてみてはどうだろうか?

取材・文=西連寺くらら

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