サイト内
ウェブ

中田英寿がシェアしたい“日本の新たな価値”「一毬一果、至宝の栗ブランド『飯沼栗』」

  • 2021年7月9日
  • Walkerplus

中田英寿氏が47都道府県を旅して出会った日本の「わざ」と「こころ」。日本のことを知るために47都道府県を巡る中田氏の旅は6年半におよび、移動距離は20万キロになった。その間、訪れた地は約2000に。そこで中田氏は、現地に行かなければわからない、素晴らしき日本があることを知った。

ウォーカープラスでは、中田氏の「に・ほ・ん・も・の・」との共同企画として、珠玉の“にほんもの”をお届けする。

中田英寿
「全国47都道府県の旅で出会ったヒト・コトを、”工芸芸能・食・酒・神社仏閣・宿”に分けて紹介。日本文化を多くの人が知る『きっかけ』を作り、新たな価値を見出すことにより、文化の継承・発展を促していきたい。」

茨城県は、栗の産地として生産量・栽培面積ともに全国1位。その茨城県東茨城郡茨城町下飯沼の名物「飯沼栗」を手にした中田が驚きの声を上げた。

「あれ?栗ってこんなに大きかったっけ」

驚くのも無理はない。県央部に位置する茨城町下飯沼地区で生産されている「飯沼栗」は、大きいもので直径4センチ以上。ふっくらまんまるに育った栗は、中身がみっしり詰まっているため重さも見た目以上だ。

「飯沼栗」とは品種名ではなく、下飯沼栗生産販売組合による特別な栽培・出荷方法が施された栗につくブランド名。栗は世界中に100種類以上があるというが、飯沼栗は「石鎚」という品種にこだわり、50年かけて磨かれた栽培技術によって生まれたもの。他産地との差別化を図るため、高品質な栗を作って他産地の出荷のピーク時期からずらして出荷を始めたというのがスタートだ。

2017年には、特別な生産方法や25年以上継続した地域の農林水産物をブランドとして国が保護する「地理的表示保護制度(GI)」に栗として日本で初めて認定。東京の市場では「最高級の栗」ともいわれるほど評価が高く、取引き価格は平均価格の2倍以上になるものも。全国的にも、栗を扱う者ならばその名を知らぬ者はいないほどの逸品だ。

「普通の栗は、イガのなかに3つ実が入っていますが、飯沼栗はひとつだけ。だから形も平らなところがなく、全体が丸くなるんです」と下飯沼栗生産販売組合の東ヶ崎直人さんは話す。

このひとつのイガの中に実を一粒だけ育てる「一毬一果(いっきゅういっか)」の栽培法は下飯沼地域だけ。長年研究を重ねて培った技術は門外不出で、現在11農家が秘伝の飯沼栗を生産している。その収穫方法も独特だ。

「この栗は大きく育つとイガを割ってぽろりと落ちてくる。だから収穫はイガから栗を取り出す作業がなく、落ちているのを拾うだけで1個を拾うのは楽なんですよ。拾う量は組合全体で50トン近くありますけど(笑)」と東ヶ崎さんが飯沼栗の収穫について話してくれた。

この地域で一番ポピュラーかつおいしく食べる方法だというゆで栗をいただく。湯気をあげるほくほくのひと粒をナイフで割って、スプーンで中身をくりぬいて食べる。甘さはしっかりとあるが、雑味がない。まるでマロンのスイーツを食べているような感覚だ。

「イタリアにいたころもよく栗を食べていましたけど、こんなに大きくなかったし、味ももっと大雑把だった記憶があります」と中田も唸るほど他の栗との違いが。

「飯沼栗」の出荷時期は、本来の栗の最盛期である9月、10月を過ぎた10月下旬から11月中旬。理由は収穫した栗を水洗い洗浄し、1回目の選果をおこない、オガ粉をまぶした状態で最低2週間以上、20日程度を目安に全量冷温貯蔵するから。こうすることで乾燥や腐敗を防止し品質低下を防ぎながら、糖度が2倍近く高くなる。その後、冷蔵庫から出しオガ粉を落としながら適度に乾燥させ2回目の選果を行ったあと、集荷場に持ち寄り馬毛ブラシで磨き上げ、他の組合員による3回目の選別選果と独自の出荷規格による等級階別を経て出荷する。

「天候にも左右されますし、毎年大きな栗を育てるのは簡単ではありません。でも、やればやっただけ自分たちに返ってくる。いずれは海外に出荷したいとも考えていますが、まずは国内ナンバーワンのクオリティを維持して、飯沼栗の名前をどんどん知ってもらいたいと思っています」と今後の志向について東ヶ崎さんが語ってくれた。

ケーキ屋で売っているモンブランくらいしか食べたことがないという人は、一度この飯沼栗を食べてみてほしい。栗そのもののイメージがガラッと変わるはずだ。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.