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完熟果を埋めてスタート!「自然生え栽培」のやり方

  • 2023年12月29日
  • NUKUMORE

いわば“放牧”!野菜のいきいきとした姿を楽しんでください!タネ育て人中川原敏雄さんが、野菜のすごい生命力と本来の姿を楽しむ“自然生え”栽培の試し方を伝授します!

YD28_p48_map_4_1703223800 「これが自然生えのトマト!」 YD28_p48_map_2_1703223826

タネ育て人 中川原敏雄さん

YD28_p48_map_3_1703223263 なかがわらとしお●
1949年、青森県生まれ。1990年より公益財団法人自然農法国際研究開発センターで、有機栽培向き品種の育成をスタート。定年退職後、2015年より野菜が自立して生育できる育て方とタネの育成に取り組んでいる。 YD28_p48_map_1_1703223835

野菜のすごい生命力と本来の姿を楽しむ

タネをまいていないのに、畑の隅っこなどで雑草のように生えてくる自然生えの野菜。ときにコンクリートを割って育つ“ド根性ダイコン”など、その驚くべき生命力が話題になることもある。

そんな野菜のたくましい“自生力”を引き出す栽培を試みているのが、タネ育て人の中川原敏雄さん。公益財団法人自然農法国際研究開発センターを定年退職後、草生栽培を独自の理論と経験から進化させ、タネの育成と自給野菜の栽培に取り組んでいる。

「“自然生えの野菜はよいものが収穫できない”というのが一般常識だと思いますが、それは誤解です。自然の土で育った自生野菜は、たとえば放牧牛や山菜と同じで、いきいきとした本来の元気な姿を見せてくれます。1種類1坪ほどの小さい面積で、手軽にできますよ」

自然生えから生命力にあふれたタネが自然に生まれる

ただし自然生え野菜は、“肥えた畑”が苦手。肥料を施した好条件の畑ほど、根の張りが悪く、病虫害にあいやすい株になってしまう。また、弱いものが自然淘汰されず、本来の生命力を発揮できないため、最終的には集団ごと共倒れになる。これが“自然生えの野菜はよくない”、といわれる所以だ。

つまり自然生え野菜は、無肥料・不耕起栽培が必須条件。たとえばハコベなどの草がこんもりと生える、施肥していない場所を選ぶとよい。堆肥やボカシ肥料なども一切使わず、手入れは草を刈って敷くのみ。「栽培」という概念から離れて、野菜自身を自立させる。
「一般に市販されているF1品種(一代交配種)を、無施肥の土で自然生えさせるとおもしろいですよ。F1品種は固定種より遺伝的多様性が高いため、多様な色や形のものが出現し、その雑種性に富んだ苗のかたまりの中で交雑します。すると、そこからこれまでにない魅力的なタネが生まれる可能性が高いといえます」

固定種は形質をそろえすぎると雑種性が低下して生命力が弱まる。しかし、自然生えさせてタネを採ることで雑種性のある個体が自然に選ばれ、パワーアップできる。

トマト

[自生栽培にとくにおすすめの品種]
『ブラジルミニ』(自然農法国際研究開発センター)
※大玉の品種は自然生え率が低い。 トマトはもっとも自生しやすい野菜のひとつ。F1品種を自生させると、ピンク色や赤色、色も形もさまざまな果実が出て楽しい。もっとも多く出たタイプが、その土地に適応したというサイン。割れにくいものを選んでタネを採っていくと、2年目からパワーアップし、3年目で新種ができる。 1. 秋、最後に熟した完熟果を集め、雨が当たらない風通しのよい場所に1か月ほど置いて追熟。11月、初霜が降りてから、自生させる痩せ地に20~30cm間隔に1個ずつ置き、果実が隠れるくらい浅めに土をかけて枯れ草で覆う。目印に棒を立てておく。
YD28_p49_map_1_1703223415 2. 桃の花が咲く頃に発芽。雑草の中で生き抜くために、あえて早く発芽し、“苗団子”(サルが集まって寒さをしのぐサル団子から中川原さんが命名)になって強い根をゆっくり張る。 YD28_p49_map_2_1703223429 3. 生育ステージの違う“苗団子”の集団が点々とできる。晩霜のリスクを分散するため、わざと発芽時期をずらしているようだ。定番作業の間引きや芽かき、整枝は最後まで一切しない。 YD28_p49_map_3_1703223450 4. 6月頃、もっとも大きい集団から勢いのよい株が1~3株ほど伸びてくる。これが子孫を残すのにふさわしいとして集団から選ばれたリーダー。ほかの株はあまり生育しなくなり、1株6本ほど強い側枝が出る。支柱なしでもよいが、周囲に6本ほど支柱を立てて、ヒモで支えてもよい。来年、再び自然生え栽培をする場合は、条件の悪い新しい痩せ地に果実を埋める。
YD28_p49_map_4_1703223466 品種不明の自然生えから中川原さんが育成した品種『自生え大玉』(自然農法国際研究開発センター)。
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ピーマン

[自生栽培にとくにおすすめの品種]
『京ひかり』(タキイ種苗) ピーマンは、果菜類の中でもっとも自生しにくい野菜。自然発芽率が低く、10個の完熟果を埋めても1~2個しか発芽しない。さらに生長が遅く、アブラムシが媒介するウイルス病の被害にあいやすく、根張りも弱い。おすすめは耐病性の高い品種を使うこと。痩せた畑では縦に伸びる立性が向き、肥えたところでは横広がりの開帳型に育つ株が向く。 1. 赤い完熟果を、雨が当たらない風通しのよい場所に1か月ほど置いて追熟。12月初め、20~30cm間隔で1個ずつ置き、果実が隠れるくらい土をかけて鎮圧し、枯れ草で覆う。空洞果なのでしっかり鎮圧して土と密着させること。目印に棒を立てておく。 YD28_p50_map_1_1703223569 2. 5月頃に発芽。発芽後の生長が緩慢で、しばらく小さい苗のままのかたまりでじっとしている。 YD28_p50_map_2_1703223581 3. 根張りが弱いピーマンは、勢いのある少数の株が突出するトマトやキュウリと違い、複数の株がひとかたまりとなって集団でゆっくりと育つ。 YD28_p50_map_3_1703223592 4. 1株のように見えるピーマンの集団。株元には小さい株が淘汰されずに残っている。初期は小さい実を摘果して株を育てる。1株に1~2個、集団全体で10~20個ほどの果実がつく。採種集団は、基本的に収穫せず、すべて完熟させる。ほかの集団を収穫用にする。 YD28_p50_map_4_1703223603 5. 自然生えから中川原さんが育種した『自生えピーマン』(自然農法国際研究開発センター)。やや小ぶりで肉厚、着果数が多い。 YD28_p50_map_5_1703223616

キュウリ

[自生栽培にとくにおすすめの品種]
『バテシラズ3号』(自然農法国際研究開発センター) 収穫が終わる1か月前の果実を樹に残しておく。または採り残して、黄色くなった巨大キュウリを使ってもよい。曲がっていても遺伝的にはまったく問題ない。1本に300粒ほどのタネが入っているので3本ほどあれば十分。畑で腐熟させてもよいが、鳥に食べられやすいので、雨が当たらない風通しのよい場所に移して追熟させる。 1. 秋、完熟果を雨が当たらない風通しのよい場所で1か月ほど追熟。11月、初霜が降りてから、自生させる痩せ地にまるごとのキュウリを20~30cm間隔に1本ずつ置き、果実が隠れるくらい土をかけて枯れ草で覆う。目印に棒を立てておく。 YD28_p51_map_1_1703223704 2. 4月下旬頃に発芽。全部発芽することはなく、ばらばらに発芽してくる。 YD28_p51_map_2_1703223716 3. 本葉3枚程度までは、大小の苗のかたまりで生育する。最初に出てきた大きい苗の葉が霜よけになって小さい苗を守るので、全滅しない。苗の草丈が高、中、低と分かれ、どの苗にも光が当たるようにお互い調整してうまく育つ。 YD28_p51_map_3_1703223728 4. 大きい苗の集団から、勢いのよい株が1~2本伸びてくる。開花が始まった頃、ツルの伸びがよい株に支柱を立てる。ほかの集団の株は収穫用にそのまま地這いで育てる。じゃまになったら地際で切ってその場に敷く。 YD28_p51_map_4_1703223750 5. 最初についた実は小さいうちに若採りし、まずは株を大きく育てる。親ヅルの10~15節あたりに着果した実を肥大させる。1株に1~2個の果実を完熟させ、翌年の自生栽培に使う。 YD28_p51_map_5_1703223761 自然生えから中川原さんが育種したキュウリ。 YD28_p51_map_6_1703223772

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「野菜だより2023年11月冬号」では、今回紹介した野菜以外にもたくさんの家庭菜園の情報を、わかりやすく丁寧に紹介しております。 YD28_book_1703223928

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