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「暑さ対策をして秋冬野菜の苗づくり!」│家庭菜園のコツ

  • 2022年8月2日
  • NUKUMORE

秋冬野菜の苗づくりのやり方について分かりやすく解説しています。ここでは、人気の野菜、キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー、ハクサイ・レタスを取り上げます。コツを理解して美味しい野菜を育てる準備をしましょう!

水やりや害虫チェックなど目が届く涼しい場所で育苗

監修:瀬山明(せやまあきら)さん
日本の有機農業のパイオニアのひとり。埼玉県本庄市の瀬山農園(2001年有機JAS認証)で有機・無農薬での野菜づくりを長く続ける。現在は息子に農園代表を譲り、本業の農業の傍ら、畑の一角に家庭菜園をつくって、おもしろ実験栽培を実践中。
長年学んできた、栄養週期理論と農業気象学を野菜栽培に活かしている。

秋冬野菜の苗づくりは夏に始まります。私の場合は、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーは8月上旬にタネをき、ハクサイとレタスは8月下旬にタネをまきます。

夏野菜の育苗は寒さ対策に気を使いますが、気温が高い時期に育苗する秋冬野菜の場合は、涼しい環境での苗づくりが基本です。木陰や軒下など日差しが強くない場所で、水やりがしやすく、生育や害虫のチェックがすぐに行える目が届く場所で育苗するとラクです。
この時期は虫の活動も活発なので防虫対策にも工夫が必要です。幼い苗を外に並べたままにせず、必ず寒冷紗や防虫ネットなどで覆っておきます。

それでは、私が毎年行っている、根がしっかり発達する秋冬野菜の苗づくりを紹介しましょう。 YD17_p48_flow_1_1659061298 涼しいところで育苗します。

育苗スタートは8月上旬!地床で育てるキャベツ・ブロッコリー・カリフラワー

長期収穫できるように品種を選んで育苗する

8月上旬にスタートするキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーの育苗は畑で行います。畑の中でも涼しくて日陰になる場所に苗床を用意して、タネを直まきするのです。私の畑では、アーチ支柱を立ててツルを這わせているキュウリやインゲンの葉陰を利用して行っています。

同時に多く採れると困るし、長期間収穫が続いた方がうれしいので、キャベツやブロッコリーはひとつの品種だけをまかずに、左の表のように早生や中生、晩生、春向きの品種など、それぞれの品種の特徴を考えて数種類育てています。そのため、同じ頃に植えつけても収穫時期がずれるので長く収穫が楽しめます。カリフラワーはあまり本数が多くないので、「スノークラウン」(タキイ種苗)だけ育てています。
【品種を変えてリレー栽培】
<キャベツ>
収穫:11月~4月中旬
・初恋(トーホク)早生
・金春(サカタのタネ)早生
・彩音(タキイ種苗)中晩生

<ブロッコリー>
収穫:10月下旬~4月上旬
・おはよう(サカタのタネ)中早生
・こんにちは(サカタのタネ)中生
・こんばんは(サカタのタネ)晩生
・すばる(ブロリード)早生
・ゆめさくら(野崎採種場)晩生

01 畑に苗床をつくる

◆タネまき1か月前までに太陽熱土壌消毒をする

畑にタネを直まきして苗づくりをする場合、タネまきをする1か月前から苗床(地床)の土を太陽熱土壌消毒しておくのが、成功のポイントです。

苗床にする畝に堆肥をすき込み、たっぷり水をかけて透明マルチをピンと張ります。

6月下旬頃に苗床の準備をしておけば、タネまきまでの間に太陽熱によって土が高温で蒸らされて、土中の病原菌や害虫の卵、草のタネなどがかなり死滅し、土の状態がよくなります。

土の量が限られている育苗ポットや育苗トレイでの育苗と違い、地床での育苗は管理がラクです。根を自由に伸ばせるので老化苗になる心配がなく、水やりなどの管理の苦労も減ります。 下図:畝を3本用意し、両端の畝にアーチ支柱を立てて園芸ネットを張る。両端はキュウリ畝なので黒マルチ、真ん中は苗床なので透明マルチを張っておく。 YD17_p48_flow_2_1659061475

02 タネをまく

◆1粒ずつていねいにまき発芽までは乾燥に注意

キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーの育苗期間は約1か月。私は8月上旬に太陽熱土壌消毒をしていた地床の透明マルチをはがし、畝の一部に2mm間隔でタネをまきます。タネが小さいので大変な作業ですが、ていねいに1粒ずつまきます。地床を用意できなければプランターでも大丈夫です。

タネは若干密にまいた方がよく発芽するような気がします。タネをまいたらジョウロで水をやさしくかけて、新聞を広げてかぶせておきます。発芽するまでは土の乾燥に注意し、発芽を確認したら新聞ははずします。

その後の水やりは不要です。苗が幼いうちに畑の環境を覚えさせるのです。水も肥料も簡単にもらえなければ、自分で根をしっかり伸ばして水分や養分を取りにいき、元気な苗に育ちます。 YD17_p48_flow_3_1659061528 YD17_p48_flow_4_1659061535 【Point】虫が入らないようにすぐに寒冷紗で覆う!

虫よけ効果だけでなく遮光効果もある寒冷紗
秋冬野菜を育苗するときにとくに気をつけなければならないのは、害虫被害と夏の日差しの厳しさです。
まだ気温が高く、虫が活発に活動している時期なのでちょっと油断すると、発芽したばかりの芽や幼い苗をボロボロに食害されてしまうことがあります。

害虫から苗を守るために、タネをまいたらすぐに寒冷紗のトンネルで畝をカバーしましょう。隙間がないように、裾をしっかり土に埋めてガードしておくと、這って侵入するネキリムシの幼虫などの被害も防げます。

畑の中では比較的涼しいキュウリやインゲンの葉陰に地床をつくってはいますが、遮光効果のある寒冷紗トンネルで覆うことで、虫よけの効果以外にも発芽した幼い苗を強い夏の日差しから守ることもできます。 下図:地床はタネをまいたらすぐに寒冷紗のトンネルで覆う。裾は面倒でもしっかり土に埋めて虫の侵入を防ぐ。 YD17_p48_flow_5_1659061598

03 本葉3~4枚で移植する

◆一度植え替えて根を切り新しい根を出させる

畝の一部に密まきしたタネが発芽し、本葉が3~4枚出た頃に、一度植え替えをします。植え替える場所は空いている畝の部分です。今度は株間5~6cm、隣同士の葉と葉が重ならない程度の間隔で植えつけます。

移植することで一度根を切って新たな根を出させるのです。畑に定植するのは本葉が4~5枚の頃なので、期間はそれほど長くありませんが、このひと手間でより丈夫な苗に育ちます。

苗の移植を終えたらすぐに寒冷紗トンネルで畝を覆います。裾もしっかりと土に埋めて害虫から苗を守ります。地床で育苗すると定植日が多少遅れても根が老化しないので、自分の都合に合わせて定植できるのが利点です。 下図:キュウリの茂った葉の陰ですくすくと育つ苗。移植したらすぐに寒冷紗トンネルで覆って育てる。 YD17_p48_flow_6_1659061676

04 本葉4~5枚で畑に定植する

◆日差しが弱い曇りの日に苗の大きさをそろえて定植 

9月中旬頃、本葉が4~5枚ほど出て、草丈15cmほどになった苗を畑に定植します。定植は曇りの日の午後など、気温や日差しが強くないときに行うと苗の負担も減ります。
移植ゴテを苗床の土に挿して根鉢をブロック状に掘り上げ、左のイラストのように用意しておいた畝に株間30cmで植えます。このとき、苗の生長具合を見て、大きさをそろえて植えつけるとその後の育ちも足並みがそろいます。 下図:移植ゴテを斜めに挿して傾けて植え穴をつくり、本葉4~5枚まで育った苗を定植する。植え穴に根をまっすぐに入れて株元に土を寄せる。 YD17_p48_flow_7_1659061720

育苗スタートは8月下旬!〝ごろ寝〟移植するハクサイ・レタス

ハクサイが結球するよう逆算して育苗を始める

ハクサイの育苗期間は25~30日で、私の畑では8月下旬にタネまきをします。品種の特徴や地域の気候にもよりますが、最近は秋口でも気温が高めで、昔よりもタネまきを少し遅くした方がいいように感じています。

しかも、ハクサイは苗を植える時期が遅れると結球に至らないことがあるので、いつ畑に定植するかを逆算して、キッチリ合わせてタネをまくことが大事です。

レタスには結球する玉レタスと結球しないリーフレタスがあります。巻かない分、リーフレタスは気軽に育てられます。1週間くらい間隔をあけてタネを少量ずつ何度かずらしまきすると、収穫時期もずれ、長く楽しめます。

レタスは暑さが苦手ですが、育苗はまだ夏の暑さが厳しいときに行うので、日が当たらない涼しい日陰で育苗するようにしましょう。

01 タネをまく

◆ハクサイは1粒ずつレタスはバラまきする

8月下旬、ハクサイとレタスの育苗を家の近くの涼しい場所で始めます。ハクサイは市販の育苗用の土を入れた128穴のセルトレイに1粒ずつまき、5mm程度覆土して鎮圧します。

レタスは育苗用の土を入れた育苗トレイにタネをバラまきします。好光性種子なので発芽に光が必要です。タネをバラまいたら覆土はごく薄くして、手のひらで鎮圧します。育苗する数が少ない場合は、底に水抜き穴をあけた豆腐やミニトマトの空パック、または直径15cmくらいの育苗ポットを使ってもいいでしょう。

タネをまき終わったらジョウロで水を与えてから、発芽するまでは新聞紙をかけておきます。湿気が保たれて発芽がよくそろいます。 【Point】高いところで育苗し寒冷紗をべた掛けする!
タネをまき終わったセルトレイや育苗トレイは、地面に置かずに家のそばの涼しい日陰になる場所につくった台の上に載せておきます。台の高さは1mくらいあればいいでしょう。コオロギなど、幼い苗を食害する虫を遠ざけます。苗の上には虫よけのための寒冷紗をべた掛けしておきます。
育苗中の水やりは、朝に土をチェックして、乾いていたらジョウロでやさしく与えます。夕方に水やりすると夜の間に徒長して弱い苗になるので要注意です。 下図:家のそばで育てると目が届きやすく、水やりもしやすい。涼しくて日陰になる場所に高さ1mほどの台をつくり、その上で育苗するといい。 YD17_p48_flow_8_1659061960

02 本葉1~2枚で〝ごろ寝〟移植する

◆1本ずつ根傷みが少ない〝ごろ寝〟移植する

ハクサイもレタスも本葉1~2枚出るまで育てたら、一度移植します。私のおすすめは、下のイラストのように土を入れた育苗トレイに苗を横に寝かせた“ごろ寝”移植です。

まず、育苗トレイの土の上に条間10cm、深さ5mmほどの溝を指か棒でつけます。その溝にハクサイやレタスの苗を1本ずつ寝かせ、根の部分にだけ土をかぶせておきます。苗を寝かせると根傷みが少ないうえに、しばらくするとしっかり起き上がって根付き、新しい根や次の本葉も出てきます。

03 本葉4~5枚で畑に定植する

◆根を傷めないように定植しトンネルを掛けて防虫対策

本葉4~5枚に育ったら定植のタイミングです。移植ゴテで1本ずつ苗を掘り上げ、植え穴に根鉢を入れたら土を株元に寄せます。強く鎮圧すると根を傷めるので軽めに鎮圧します。

ハクサイは株間40cm、レタスは株間30cmで定植します。
定植したら畝全体に不織布や寒冷紗のトンネルを掛けて防虫対策をします。 YD17_p48_flow_9_1659061997 YD17_p48_flow_10_1659062002 YD17_p48_flow_11_1659062008 上図:本葉1~2枚出た苗を1本ずつ植え替える際は、スプーンやアイスクリームに付いている木のヘラなどで苗を掘り上げると根を傷つけにくい。

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