モルトかすを魚養殖飼料として再利用する実証実験を現在、アグリ王(横浜市港北区新横浜1)が進めている。(港北経済新聞)
室内で水耕栽培を行う植物工場事業を営む同社。昨年10月には、水耕栽培と魚の養殖を合わせた循環型農業「アクアポニックス」を手がけるアクポニ(中区)と共同で、年間を通してイチゴを水耕栽培できるアクアポニックス栽培システムの販売を始めた。魚の排せつ物を微生物が分解することで養分豊富な水を作り、イチゴ栽培に使うシステム。使った水は再び養殖の水槽に戻すことで、これまでの水耕栽培に比べて使用する水の量が減るほか、栽培に使う養分液を調達する必要がなくなる。
これまで魚の養殖には餌として魚粉を使っていたが、近年魚粉の価格が高騰。循環型農業のために食品の残りかすを餌に代用できないか昨年8月から検討してきた。その結果、ビール製造過程で発生する副産物の「モルトかす」が大麦由来のタンパク質と食物繊維を多く含み、餌として利用できる可能性があるため、実証実験を始めた。
養殖するのは関西では高級魚として扱われる淡水魚のホンモロコ。2月から社内でホンモロコの産卵と稚魚を育成し、5月からは4基のアクアポニックスシステムで15匹ずつ飼育を始めた。モルトかすは協力企業の横浜ビール(中区)から調達。粉末にしたモルトかすを魚粉とまぜて、その配合比率でホンモロコの成長率や養殖水の栄養成分分析などを進める。
同社括部長の石田健治さんは「システム内における資源循環だけにとどまらず、地域社会から排出される未利用資源や排エネルギーの活用にも貢献できる。今後はより多くの企業と連携して、循環型経済を推進していきたい」と話す。
実証実験は秋までを予定。養殖したホンモロコは、横浜ビールが運営するレストラン「UMAYA」のメニューとして提供予定。