「自分はダメな人間なんだ」子ども時代の劣等感を投影した『世界で一番嫌いな女』【著者インタビュー】

  • 2025年5月24日
  • レタスクラブニュース
『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち

26歳のOL・エリは、大手企業に勤めるカズマと婚約し、幸せの絶頂にありました。でも、全てがうまくいっているかのようなエリの心の奥底には、拭い切れない大きな不安があったのです。それは、実の妹・まりあのこと。常に姉妹で比べられ、ことあるごとに大切な物や大切な人を奪われてきた経験から、エリは妹のことを嫌悪していて…。

姉と妹の確執を描いたセミフィクションコミックエッセイ『世界で一番嫌いな女』。リアルな人物描写と関係性が「まるでうちの妹みたい」「うちもこうだった」などの共感を呼んでいます。
今回は、作者のただっちさんに個性的な登場人物たちがどのようにして生み出されたのか、お聞きました。

『世界で一番嫌いな女』あらすじ


『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

エリが今も忘れられないのは、高校生の頃の出来事です。学校生活はそれなりに充実していて、自分の家よりも学校の方が居心地良いと感じていました。そんなエリは、同じクラスの男子を好きになり、毎日メールをする仲に。しかし、エリの好きな相手を知りたがる妹のまりあについヒントを教えてしまったことから、思いもよらない事態に…。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

姉の好きな相手を知った妹は、どういうわけかその相手と急接近。こうしてエリの初恋はあっさりと終了したのでした。
姉の大切なものや大切な人を次々に奪っていく妹。そんな苦々しい記憶があるからこそ、エリは妹に婚約者のカズマを紹介したくなかったのです。なのに、実家に結婚の挨拶をしに行くと、呼んでいなかった妹が突然現れて…。


【著者インタビュー】悪気のない「比較」は作者の実体験がベース


『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

――主人公の母親は何かと姉妹を比較していますね。おそらく本人にはその自覚がなさそうな点も含めて、「毒親あるある」なのかなと思いました。この母親はどのようにして生み出されたキャラクターでしょうか。

ただっちさん:
この物語の母親の比較癖は、私の祖父が私と優秀な従妹をよく比べて話をしていたことを思い出して作りました。たとえば、「1000円のお小遣いを渡したら、従姉妹の方は貯金したけど、ただっちの方はゲームセンターであっという間に使ってしまった」「従妹の方はこの時期にもうこんなことができた、ただっちはまだ…」というふうに、私は従妹を引き立てるための話のオチのような役割。
祖父からすれば、出来損ないも可愛い、みたいな気持ちだったかもしれませんが、私はそれがとても嫌で、自分はダメな人間なんだ、と劣等感を抱いてしまいました。

しかし祖父も、それで笑っていた家族も、私がこんな気持ちだったことは知るはずもありません。その無自覚で、悪気のない祖父の比較癖を母親に投影しました。

――主人公のエリが妹と不仲なことを知っていながら、婚約者のカズマは優柔不断な態度を取ります。この時の彼はどんな心理だったのでしょうか。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

ただっちさん:
まりあの天真爛漫さに惹かれ、なんだかんだエリがまりあへの嫉妬で大げさに心配してるものだと軽く考えています。素直に自分に甘えてくれて、「お兄ちゃん的存在」として自分を立ててくれる所が、エリとは対照的です。まりあのように妹感満載の女性に「やれやれ仕方ないな〜」といいながら、わがままを聞いてあげるのが好きな人は多いんじゃないかな、と思っています。


――ただっちさんがこの作品の中で特に気に入っているセリフを教えてください。

『世界で一番嫌いな女』より
『世界で一番嫌いな女』より / (C)ただっち/KADOKAWA

ただっちさん:
27話でのまりあのセリフ「お姉ちゃんはそういう所が可愛くないんだよ」「遠慮ってある意味 相手の好意を台無しにする好意だと思うんだよねーっ」が、正論の暴力という感じがして、気に入っています。私もエリのように褒められたときに「いや、私なんて・・・」と照れて否定してしまったり、いろんなシーンで遠慮しがちです。

昔はその方がいいと思っていたのですが、私自身も、まりあのように素直に喜び、甘える時は思いっきり甘えてくれる後輩を可愛く感じます。

***

何かと比較されてきたせいで主人公のエリは妹に対して劣等感を抱えていますが、妹のまりあも実は優等生の姉と比べられることで気持ちをこじらせていました。大人が悪気なく子どもたちを比較することの積み重ねが、姉妹の間にある事件をもたらします。二人の結婚はこのままスムーズにいくのでしょうか。その後の展開にもハラハラさせられます!


取材・文=宇都宮薫

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