SNSでスピリチュアル好きな信者を集めて小遣い稼ぎ。ごく普通の主婦がカリスマ化して悪徳商法に手を染めるまで

  • 2025年3月2日
  • レタスクラブニュース
  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

ごく普通の主婦がちょっとした人生相談をきっかけにスピリチュアルカウンセラーを名乗るようになり、SNSを利用してファンを集めてカリスマ的存在にのし上がり大金を手にするように……。そんな手口を詳細に描いて注目を集めているのが、『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』です。

ぐいぐいと続きを読ませる小咲ももさんのnote小説が注目を集めて、漫画家・稲美杉さんによってコミカライズ。満たされない気持ちを抱えてくすぶる主婦の人生が少しずつ狂っていく様子を、テンポよく描いたこの作品。原作者の小咲さんに、作品についてお話を伺いました。

まずは作品のあらすじをご紹介しましょう。

『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』あらすじ


  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

主人公のミカは、夫の転勤で実家から遠い街に引っ越し、パート先にも馴染めず孤独な日々を過ごしていました。子どもが欲しいけれど夫は乗り気ではなく、ミカは不満を抱えています。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

ミカは孤独を紛らわすために参加した手芸サークルで、たまたま知り合った女性・エリの悩みを聞き、ちょっとしたアドバイスで彼女の気持ちを軽くします。さらに天使の刺繍入りのハンカチを渡してあげたことがきっかけで、スピリチュアル好きのエリから「ミカさんには天使の力がある」と持ち上げられます。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

エリからスピリチュアル好きな仲間が集まる「スピリチュアル会」に誘われたミカは、そこで様々な人に出会います。スピリチュアルな力を心から信じている人や、ちょっと不思議なタイプの人、そしてそういった人を相手にビジネスをしようとする人まで……。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

そして、「ミカさん手作りの天使の刺繍のハンカチのおかげで運が開けた」というエリの話を聞いて「自分もミカにカウンセリングして欲しい」という人々が現れます。ミカは乞われるままにカウンセラーとして話を聞くことになり、刺繍のハンカチと1時間のカウンセリングで1万円の報酬を得ることに成功します。


  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

相談者は次々と増えていき、ミカはカウンセリング料金を値上げします。さらに手っ取り早く稼ぐために、彼女は会費制のお茶会を開催します。心の中ではどす黒い言葉で毒づきながらも、天使が言いそうなポジティブな言葉で相談者を勇気づけていきます。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より
『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より / (C)稲美杉、小咲もも/KADOKAWA

高額の報酬を得るようになった彼女は、高級ブランドのバッグや服を買ってSNSに投稿し、承認欲求を満たすようになっていきます。その浪費行動が破滅への道につながっているとも知らずに……。


この注目のコミック作品の原作者・小咲ももさんにお話を伺いました!

原作者・小咲ももさんインタビュー


――この作品は小咲さんの体験をもとにしたフィクションとのことですね。

小咲ももさん:
実は私の母がスピリチュアル界隈に詳しいので、母や周りの人からもエピソードの着想を得ています。最初はやめてほしいな、と思ったんですけど、趣味の範疇でやるぶんには自由なので、今はあまり口を出さないようにしています。幸い私の母は金銭感覚はしっかりしているので、目を瞑れるのかもしれません。無理せず楽しむ分には、スピリチュアルも他の趣味と変わらないとも思います。

ただスピリチュアルビジネスの場合は、人を依存させたり際限なくお金を使わせたりする仕組みが多いので、精神的に不安定な時ほど頼らない方が良いと思います。
ちなみに私もスピリチュアル自体は信じていますよ。色々と不思議な経験もしたことがあります。


  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より

――作品のなかで印象的なシーンはありますか?

小咲ももさん:
第8話の、ミカがカウンセリングの中で天使になるシーンです。「天使みたい」という言葉は、普通だったら褒め言葉になりますよね。ですがこのシーンでは、天使であることを"苦しいこと""孤独なこと"として描いています。

特別な存在として崇められることは、羨ましく感じるかもしれませんが、誰にも心を開くことができず、孤独なことでもあると思います。作画の稲先生が卓越した画力で美しく、切なく描いて下さっていて、理想通りのシーンになりました。


  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より
『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より / (C)稲美杉、小咲もも/KADOKAWA

――この作品を執筆した経験を通じて、得られた気づきや学びがあれば教えてください。

小咲ももさん:
私がミカの人生を追体験した気持ちになって、普通の人間で良かったと思うようになりました(笑)。若い時は、特別になりたいとか、チヤホヤされたいという気持ちが強かったんですけど、その結果ミカのようになってしまうなら、今のままでいいなあと思います。

あと、これから出てくるキャラクターの中に、私の友達をモデルにした子がいて。私が間違ったことをするといつも注意してくれるんですけど、それがありがたいことだなと改めて実感しました。

  『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より
『スピリチュアル教祖になった主婦 ~天使さまと呼ばないで~』より / (C)稲美杉、小咲もも/KADOKAWA

――作品の連載が始まってからの周囲の反応はいかがですか?読者さんからの感想などで特に印象に残っているものがあれば教えてください。

小咲ももさん:
小説連載時の話ですが、作品のおかげで高額なスピリチュアル詐欺を抜け出せた、というコメントをいただいたことがすごく嬉しかったです!また、自分もミカのように教祖になりかけていたというコメントをくださった方もいて、これは誰にでも起きうることだと思いました。


   *     *     *

ちょっとしたお守りを買ったり、パワースポットを訪れて気持ちをアゲたり……というようなことは誰でも体験があるかと思いますが、気持ちが不安定なときは思わぬ罠に落ちてしまいがちなのがスピリチュアルの世界。人の心のスキマにつけこむ人に騙されないためにも、この作品を通して「スピリチュアル商法」の闇に触れてみてください。

取材=ツルムラサキ/文=レタスユキ

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