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「なるべくラクして稼ぎたい」とのたまう小3息子。もっと夢を持って欲しい!!【小川大介先生の子育てよろず相談室】

  • 2021年11月30日
  • レタスクラブニュース


2021年1月発売の書籍『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て 』の著者、小川大介先生が、悩める親たちにアドバイス。「うちの子のこんなところが心配」「私の接し方、コレでいいの?」など、子育てに関するありとあらゆる悩みにお答えします。連載第91回目のお悩みはこちら。

【お悩み】

小3の息子がいます。先日学校で将来の夢を書く授業があり、息子は「YouTuber」と書いていたのですが、その理由を聞くと「ラクそうだから」とのこと。本人としては、例えば医者やスポーツ選手などは大変そうだけど、YouTuberはパソコンの前でちょこちょこやってれば簡単に稼げると思っているようです。まだ小3で何でも夢を見られる時期なのに、「なるべくラクをして生きていきたい」という発想で将来を選ぼうとする息子。この先何か困難にぶち当たった時も逃げようとしたり、踏ん張るべきところで踏ん張れなかったりするような子になってしまうのではないかと心配です。

また、なんでもお金に繋げて考える傾向があり、「この仕事は儲かる」とか、「お金は欲しいけど、なるべくラクして稼ぎたい」という発想になっているところも気になります。私としては、仕事はお金を稼げばいいだけというものではなく、やはり自己実現としての仕事ということを夢でもいいから持ってもらいたいと思っています。これをしていると自分は楽しいとか、何かの役に立ちたいとか、誰かを喜ばせたいとか、そういう発想で将来のことを考えるようになってもらいたいです。そのため、ニュースなどで偉業を成し遂げたり、子どもからみてもかっこいい活躍をした人が取り上げられていたりすると、「すごいね。こんなに苦労したんだね」みたいな話をしてみるのですが、息子の胸には響いていない様子です。将来の自分について、もう少し夢を持ってもらいたいのですが、どのように接すればいいのでしょう。(Yさん・39歳)

【小川先生の回答】

■「ラクをする」ためにはできることを増やす必要がある
そもそも「ラクをする」とはどういうことでしょう?「ラクしたい」という発想でいると、大事な場面で逃げる子になるのではと危惧されているようですが、「ラクをする」ことと「逃げる」こととは全く異なります。「ラクをする」とは、苦痛がない、ストレスがない、無理がないという意味。つまり、自分が持っている能力や興味関心をそのまま発揮するだけで、成果につながるものがラクなのです。例えば、数の好きな子であれば算数に取り組むのはラクだし、昆虫が好きな子なら理科に取り組むのはラク。そしてラクに取り組めるから楽しめるのです。

裏を返せば、楽しめるということは、本人にできることがあるからに他なりません。できないことだらけ、知らないことだらけ、自分への期待もないという状態だとしたら、毎日が全然楽しくはないでしょう。そしてスポーツにしろ勉強にしろ、いっぱいできるようになるには、それ相応の練習なり学習なりが必要です。つまりラクして楽しくするには、自分がやれることを増やしていくことが大事なのです。何もせずにゴロゴロした先にラクはこないということ、ラクに楽しむためには、できることを増やしていく必要があることをまずは教えてあげましょう。

■親子の会話で仕事観を育てる
そのうえで「ラクして稼ぐ」とはどういうことかを考えてみると、自分自身が楽しく取り組めて、かつ収入が得られるものということになります。そして仕事として収入を得るには、いかに「社会課題を解決できるか」、「人の役に立つか」ということが不可欠です。いくら自分がラクに楽しくできても、それが他の人にとって興味がないものであれば、お金はもらえませんからね。つまり、人の役に立つこと、喜んでもらえること、人が求めていることで、かつ自分も楽しいものというのが、一番楽しい仕事であり、それが「ラクして稼ぐ」ことになります。そういった会話を親子でしながら、本人の仕事観というものを育ててあげましょう。

偉業を成し遂げた人について話をするのもいいのですが、「すごいね、この人」だけで終わってしまうと、その人の話で完結してしまいます。そうではなく、「10年後20年後は、あなたは何をしてるかな?」「どんな仕事をしてみたい?」というような話を足してあげると、本人にとっても自分なりに考えるきっかけになると思います。

また、自己実現としての仕事を選んで欲しいなら、「同じやるなら自分自身気持ちいいことのほうがいいよね」とか、「人が喜んでくれると自分も楽しいよね」など、その仕事が自分にもたらしてくれるであろうことをきちんと話してあげることも必要です。仕事というものについて、子どもとの話がなされていない段階で、子どもに何がしたいかを聞いても、それは子ども世界でわかるレベルの短絡的な回答になるのは仕方のないこと。今はまだ、本人の中で仕事観が育っておらず、「仕事すればお金もらえるんでしょ?」って一番わかりやすい単純な理解で止まっているだけなんだと思います。だから「ラクそうだし、お金稼げそうだからYouTuber」くらいの感覚で言っているのでしょう。

■YouTuberで成功するには、膨大な知識と努力が不可欠
ちなみにYouTuberについてですが、そんなに簡単に稼げる仕事ではないことは教えておいてあげたほうがいいと思います。YouTubeチャンネルの登録者数を上げるためのノウハウ動画を見せてあげたら、どれだけ面倒くさいかが一発でわかりますよ。成功しているYouTuberはみんなITの知識も豊富だし、マーケティングの戦略的思考もしっかりやってるし、起業家としての素養もある人たち。だからこそYouTubeで稼ぐことができているのです。

画面上ではおどけたことをして、たまたま当たっているように見えているかもしれませんが、偶然でお金を稼ぎ続けることなど絶対にできません。そこにはきちんとしたロジックがあり、それを実行し、しかもやり続けた人しか、人気YouTuberの座を手に入れられません。そういったことをきちんと子どもに教えてあげ、それでも「YouTuberやりたい!」と言ったら、がんばらせたらいいのではないでしょうか。

まずは、「仕事をする」「ラクをする」ということについて、親子で会話しながら理解を深めていくこと。そのうえでどう感じるかは本人に委ねつつ、できる応援をしてあげてください。

回答者Profile


小川大介

教育家。中学受験情報局『かしこい塾の使い方』主任相談員。

京都大学法学部卒業後、コーチング主体の中学受験専門プロ個別塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。個別面談の実施数は6000回を数え、受験学習はもとより、幼児低学年からの能力育成や親子関係の築き方指導に定評がある。各メディアでも活躍。最新刊は『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)。

小川大介の見守る子育て研究所YouTubeチャンネル、公式LINEアカウントでも情報発信中。

文=酒詰明子

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