「人が集まる場所が苦手」「参加を断れず、疲れ果てて後悔することをくり返す」。これがいつものこととなると、発達障害の傾向がありそうです。
人との関わり方に独特な傾向があり、コミュニケーションがうまくとれない——そんなASDの人は少なくありません。
相手の気持ちを気にせず、グイグイ距離を詰めてしまう“押しの強いタイプ”がいる一方で、今回のように、人が集まる場所が苦手で「何を話せばいいのかわからない」と感じる人もいます。
押しの強い人と、静かでおとなしい人。性格は正反対のように見えますが、「人とほどよい距離感で付き合うことが難しい」という点では共通しています。
この方は、ASDのなかでも「受動型」と呼ばれるタイプです。
誰かに話しかけられれば応じますが、自分から人と関わろうとはしません。心の中では「どうしよう、どうしよう」と不安を抱えていても、それが表に出づらいため、周囲にはわかりにくいのです。
もしかすると、そんなNさんに気をつかって、仲良くなるきっかけにと飲み会に誘ってくれる人もいるかもしれません。しかし、受動型の人は従順で、誘われると「ノー」と言えない傾向があります。そのため、善意での誘いがかえって本人の負担になってしまうこともあるのです。
変化に対して臨機応変に対応するのが苦手なASDの人にとっては、飲み会での会話やランチタイムの雑談といった日常的なコミュニケーションでさえ、想像以上に疲れるものなのです。
職場の飲み会や食事会が苦手な人は、徹底して聞き役に回るのも悪くありません。
「私はおしゃべりが苦手ですが、みなさんのお話を聞いているのが楽しいです」と伝えれば、周囲もあまり気を使わずにいられますね。
無理に話をしようとがんばらなくてもいいのです。「こういう場ではあまりしゃべらない人なんだ」と周囲にわかってもらいましょう。黙っていることが受け入れられると、とても気持ちがラクになります。
ちょっとした役割を引き受けるのもいいですね。たとえば、ドリンクバーの係になって、ちょこちょこと飲み物を補充するのはどうでしょう。
あるいは「今日は写真係になりますね」とあらかじめ伝えて、談笑しているところを撮るのに徹するのもいいかもしれません。
最初に「こういう役を引き受けます」と表明すれば、話さずに動いていても目立ちません。
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部屋が片づけられない、約束の日時を間違える、集団から孤立しがち…など、あるあるな発達障害傾向と「ラクに生活するための考え方や生活のヒント」を伝授。「もしかして発達障害!?」の夫や子ども、仕事関係の人の理解にもつながる1冊です!
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