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多摩川は未来を探す場所。たくさんの「ステキ!」を見つけてほしい|俳優・中本賢さんインタビュー

  • 2023年7月1日
  • 暮らしニスタ

体験した子どもたち誰もが夢中になる「ガサガサ体験」。多摩川流域に40年以上住み続け、自然観察をライフワークにしている俳優の中本賢さんは、この「ガサガサ体験」の第一人者!そもそも多摩川との出会いはいつなのか?ガサガサ体験の魅力とは?賢さんにインタビューしてきました。

ごみと洗剤だらけの多摩川。そこで出会った尊い「命」

――賢さんは多摩川での自然観察をライフワークにされているそうですが、いつから?

本格的な俳優を目指していた約40年前、多摩川沿いのアパートに暮らしていてね。まだ俳優の仕事なんか全然なくて、暇つぶしに息子を連れて、誰も居ない多摩川に通い始めたのがきっかけ。

浅草生まれの下町育ちで、身近な川といえばコンクリートに囲まれた隅田川。自然の中で遊んだことがなかったから、自然への強烈な憧れがあって。土や草花に囲まれた多摩川はめちゃくちゃおもしろかったんだよね。

――当時の多摩川は、今とは随分違っていたそうですね

多摩川は台所や風呂、洗濯、トイレなどのあらゆる生活用水が流れ込んでくる川。昼になると洗剤の泡だらけになるし、濁った水は異臭を放っていた。ビニール袋や財布、かばん…いろんなごみが流れてきていたね。

今は下水処理施設が整備されてずいぶんときれいになったけれど、子どもが泳いだり、魚を釣ったりするような川ではなかったんだ。

そんなある日、川の中に落ちていたヘルメットの中に魚が4匹いるのを見つけて「こんなに汚い川にも魚がいるんだ!」って、息子と一緒にとても驚いたなぁ。

モツゴという魚だったけど、どの子も可哀そうに奇形をしていてね。ひとまず、初めて捕まえた魚だし、息子と相談して家に持ち帰って飼育することに。そしたら数日後、驚くべきことに水槽の中で産卵したんだよ。

「生きることを諦めない」。その姿に、涙がボロボロこぼれて止まらなかった!

子どもたちが「楽しい」と社会は変わる

――――それ以来、多摩川の水、そこに生息する生き物、土手の草花に至るまで、多摩川のすべてを愛してきた賢さん。

その活動が周囲に広がり、近隣小学校からも課外授業を行って欲しいというオファーがくるようになったそうですが…

当時は、多摩川は「汚い・危ない」と思っている大人も多かったから、最初からスムーズというわけではなかったんだよね。当然反対する親御さんもいたわけで。

そこで、小学校の先生方と相談して、親子一緒にガサガサ体験に参加してもらうことにしたんだけど、みんな驚いていた。自分の子どもがあんなにはしゃいだり、楽しそうにしていたりするのを初めて見たわけだから。

「汚いはずの多摩川に生き物なんか居るわけがない」と思っているから、魚がたくさん獲れてまたまたびっくり。いつの間にか、子どもより親の方が夢中になってたりしてね(笑)。その時のことは今でも話題に上がるよ。

子どもが楽しそうにしているという事実だけで、社会は変わる。子どもたちが希望であることは、間違いないんだと思うよ。

子どもたちの笑顔は、誰もが「幸せ」を感じる宝物かもしれませんね。

――ガサガサ体験を通じて、子どもたちに望むことは?

現在の多摩川は、アユやどじょうが住めるほどきれいになっているし、あまり知られていないけれど、都市部の水質は「上水道水源」として利用できるほどに改善している。

それでもまだ、家庭排水やごみやマイクロプラスチック問題など解決しなくてはならないものがあるのも事実。

でも、多摩川は問題を探す場所じゃない。多摩川は未来を探す場所。

問題を探して解決するだけでは、問題が起こる前の状態にただ戻るだけ。環境とどう共生していくのか、その先にどんな素敵なことがあるのかを見つけていく。

魚を買ってきて放流するんじゃなくて、産卵できるような場所を準備してあげればいい。水がきれいになったら、どんな魚が増えて、どの環境が魚にとってよかったのかを調べるべき。

子どもたちにはそういう目を養っていってほしいと思うよ。

中本 賢(なかもと・けん)●1956年、東京・浅草生まれ。俳優。映画『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』『鉄道屋(ぽっぽや)』のほか、『下町ロケット』などテレビドラマでも活躍中。約40年以上続けている多摩川での自然観察を記した『ガサガサ探検隊』『多摩川ノート 土手の草花』など著書も多数。

撮影/目黒-meguro.8- 取材・文/山川麻衣子

https://kurashinista.jp/column/detail/8897

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