「できない」と言えず円形脱毛症になった幼少期。子どもを目一杯ほめる大人でいたい|料理家ヤミーさん

  • 2023年4月5日
  • 暮らしニスタ

人気料理研究家として、レシピ本の出版やテレビへの出演、料理教室の運営まで幅広く活躍するヤミーさん。パッと明るい笑顔、そして快活な話ぶりなどから、人前に立つことやコミュニケーションを築くのがとても上手な印象です。でも、実は子ども時代はそうでもなかったそう。子ども時代に感じていたこと、そして今の子どもたちへの思いを聞きました。

「できない」と弱音を吐けず、常に緊張していた子ども時代

—ヤミーさんは子ども時代、どんなお子さんでしたか?

「今は全然平気なのですが(笑)、子どもの頃は人前で喋るのが苦手でした。学校の授業でも、先生に指されるのが嫌で常に緊張していましたし、注目されるのが苦手で人間関係もうまく築けず、小学6年生の頃に円形脱毛症になっちゃったくらい。

常に『ちゃんとしないといけない』と思っていて、なかなか『できない』と言えなかったことも覚えています。子どもながらに『理想的な自分』の枠からはみ出でないように、自分を律していたように思いますね。

弱音を吐くと怒られそうだったからそうしていたわけですが、弱音を吐かずに頑張ってもほめてはもらえませんでした。だから親をはじめ大人たちには、『できない』と言わせて欲しかったなと思います。

子どもだから、自分の気持ちを理路整然と話せなかったと思いますが、気持ちを聞いてもらえたら、もう少しラクになっていたかもしれない、とも思いますね」

—ヤミーさんは3人きょうだいの一番上のお姉さんですよね。「ちゃんとしないといけない」という思いは、そのことも影響していたのでしょうか

「それは影響していたと思いますね。長女だから、何かにつけ『お姉ちゃんでしょ』と言われ、理不尽を感じていました。それに反発して、小学6年生の頃に家出したこともありますよ(笑)。

父親の実家が山奥にあったので、夜にそこに向かったのですが、親戚一同で大捜索になってしまって。私自身は暗い山道が怖くなって途中で引き返したんですが、子どもなりによほどストレス溜まっていたのでしょうね(笑)」

 —逆に楽しかったことや癒しだったことは何でしょうか

「物心ついたときから絵を描くのが得意で、夏休みの宿題などで提出した絵で賞をもらったりしていたんです。受賞すること=自分を認めてもらえた気がして、それで前向きになれた気がします。

でも父からほめられた記憶はありません。自分自身は絵を描くことでモヤモヤを解放できましたが、親や周囲の大人には、もっとほめてほしかったですね」

思い切りほめることができる大人でいたい

—どういう大人が、子どもにとっての「いい大人」だと思いますか?

「人って、プラスのほめ言葉より、マイナスな文句のほうが口に出やすい気がしていて。例えば『何やってるの!』とか…。家族同士だとより顕著ですよね。

お互いほめ合うのは照れくさいのもわかります。でも、昔勤めていたKALDIの上司が『10ほめて、1指摘するくらいじゃないと、みんなは嫌になっちゃうよ』と言っていて、まさにそうだ!と大納得したんです。

職場の人材育成についての言葉でしたが、それは子どもに対してもそうだなと。当たり前のことでもほめる、家族でも口にしてほめることの重要性を改めて感じましたね。

例えば、部屋が片付いていたら『ありがとう!』、食事をしたお皿を片付けてくれたら『助かった!』など。私には子どもがいませんが、子ども向け料理教室などで子どもたちと接するとき、このことを意識しています。『素晴らしい〜!』も連呼しちゃいます(笑)」

子どもたちの“素直さ”にホッと安心する

—常日頃、子どもたちと接していて思うことはありますか?

「子どもは反応が素直でいいなと思います。美味しい、楽しいなどの反応がビビッドでわかりやすく、ホッとしますよね。大人は建前と本音があったりしますが、子どもにはないですから。

悔しくて泣くとか、素直の最たるものですよね。ギャーギャーしていても、『お、頑張っているな!』と微笑ましく思っちゃう(笑)。

素直と言えば、大人でも素直な人とそうでない人だと、一緒にいて疲れ度が違いますよね(笑)。私は“素直”でいたいなと常々思います」

—子どもたちを取り巻く社会や将来について、どんなふうになるといいなと感じていますか?

「日本は消費やスピード重視の社会ですよね。電車が1分でも遅れると、多くの人たちがイライラして怒ったり。物事がスムーズにいかないと、つまり、つまずくことがあると許せないみたいな。完璧主義を求めてしまっているという印象。

規格外の野菜を加工・販売する『農家のだいどこ』という活動を始めたのですが、規格外の野菜って見た目は多少崩れているかもしれませんが、とてもおいしいんです。

今の日本は形がほんの少し悪いだけで『こんなものを売りつけやがって!』と怒る人もいますし、賞味期限がちょっと過ぎただけで捨ててしまう。私が子どもの頃は全然違ったと思います。

もちろん、みんなが努力して今の日本を築き上げてきたと思いますし、それこそ素晴らしいと思う点はたくさんありますが、この30年くらいの間にどこか窮屈になっちゃった気が。

最近は“多様性”が謳われる世の中ですが、人間以外も多様性があっていいんだ。そして、今を生きる子どもたちはお互いに許し合え、広く寛容な世界になるといいなと思いますね」


▲ワンピース/e's yarn

ヤミー●料理研究家。料理教室『Yummy’s Cooking Studio』主宰。テレビや雑誌、レシピ開発などで活躍する他、KALDIマニアとしても有名。規格外などで出荷できない農作物を加工・販売する「農家のだいどこ」の活動にも精力的に取り組む。

撮影/中村彰男 スタイリング/江邉良介(e's yarn) ヘアメイク/髭田湊英 取材・文/濱田恵理

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