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Vol.93 大学の講師をやることになりました。

  • 2012年3月15日

 みなさん、こんにちは。絶賛ソロ・ツアー中の北山陽一です。

考える  今はもう身も心もどっぷりソロ・ツアーに浸って他のことは何も考えたくない!と言いたいところですが、じつはそういうわけにもいかなくて、というのは4月から僕の母校である慶応大学の湘南キャンパスで「うた」と題した15回の講座を受け持つことになりました。

「うた」と平仮名表記にしたのはもちろん意図があって、“歌”だけでなく、それにまつわるいろいろを広く、また多角的に考え、掘り下げていきたいなと思っているわけです。

 具体的には「うたの〜」あるいは「うたと〜」といった具合に、“うた”をツリー構造に分解していって、それぞれ相互に作用していくようなテーマ設定を考えています。歌をリズムで分けたり言語として分けたり母音と子音に分けたりというふうに、本当に細かく分解していき、例えばリズムの回では歌とは直接関係なくても、パーカッショニストがやるようなリズムの訓練を紹介したりして、そのリズムというものを歌のところまで引き寄せてくるというようなイメージです。実際のところ、歌のリズムと打楽器等の専門家が突き詰めているリズムとの間には、一般的な感覚からすると相当な差があると思うんです。和太鼓集団の人たちのグルーブ感と民謡のなかのグルーブ感の共通点を見出している人や、R&Bシンガーのリズムとそのバンドやトラックメイカーのグルーブの意識を結びつけられている人というのは結構なマニアだと思うんです。だからこそ、この講座では例えばそれを結びつけるお手伝いができたらいいのかなと思っています。

 あるいは、歌にはメロディーがあって、リズムがあって、歌詞があって、それぞれに強く相互作用がありますけれども、その関係性を無理矢理引き剥がして歌詞だけを取り出すとします。歌詞を伝えるためには、例えば“た”という音を発するのに、母音と子音とにできるだけ解像度高く分解し、その上で“T”と“A”をどう捉えているかということがすごく重要になってくるんですが、それは言葉を伝える表現としても大事であると同時に、リズムという観点から見てどこに収まるのかということも重要です。シンコペーションで”T”を入れる場合とアタマの拍で“T”を入れる場合とでは感覚が違うから、言語として言葉を表現するということにも影響してくるわけです。

 歌うときの姿勢も取り上げようと思っています。バレエのダンサーがただ立つということに使っている筋肉や姿勢についての意識がじつは歌にもつながっているし、そういう意識がないと歌をちゃんとコントロールすることは本当はできないんですよね。できてるとしても、無意識にやってるのであれば、スランプになったときにうまく対処できない。逆に、歌う姿勢についての意識がちゃんと確立されていると、スランプになってもその原因を突き止めやすくなるんです。呼吸についても、ヨガの先生や気功の先生が指摘する筋肉の使い方がある一方で、現代の日本人がほとんど失ってしまった日本古来の呼吸法というようなものもあります。また、一般に歌う場合は腹式呼吸がいいと言われますが、胸式呼吸にもじつは良い点があるし、さらには逆腹式呼吸や密息等、調べてみれば他にもまだまだたくさんの呼吸法があります。そういうことも紹介し、必要があれば体験もしてもらって、その結果として歌うということは誰にでもできるんだけれど、こんなに広いんだよ、こんなにいろんな要素についてすごく真剣に考えている人がたくさんいて、それをまとめたのが歌なんだよという話をしたいなと思ってるんです。理論的に、というよりは感覚として納得できるように、一度理論に分解して理解し、それを実践することでそれを身体に戻していくという形の授業ができたらいいなと思っています。

 と、構想は大いに深まっているんですが、それをどうまとめるか大いに思案中の北山でした。


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