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Vol.91 僕は今、猛烈に自分の人生を捉え直しています。

  • 2012年2月16日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 つい1ヶ月前にはこの連載でも決然と今年の抱負を発表したわけですが、その時点でもじつはちょっと気になっていることがありました。そして、その問題は、時間が経ってクリアになるどころか、むしろ疑念がますますふくらむような状況になっているようにも思えます。だから、いまの僕はどうしても思考を限定されて、どの方向にも踏み込んでいけない状態にあります。

 その気になる問題とは、言うまでもなく原発の問題です。昨年末に収束宣言が出されましたが、今年になって放射性物質の降下量は増えているという報道がありました。
参考:http://matome.naver.jp/odai/2132599146227931401
「原因は4号機なのではないか」と言われていたり、海外からも「非常に危険視している」という見解が伝えられたりしているなかで、“もし何かあったら、今後の人生をどうするのか?”というようなことをつい考え込んでしまうのが最近の僕です。

考える  ちょっと角度の違う話ですが、飲食店をやってる友人に聞いたところでは、東京では、超富裕層向けではなく逆に大衆向けでもない、といった感じの、少し高めでおしゃれなレストランがいま軒並みつぶれているそうです。理由は、そういうお店にやって来る層の人たちが都内からどんどんいなくなってるからだと。

 そういう話を聞くにつけ、僕はあらためて考えてしまいます。現在の自分の暮らしについて。そして、これからの自分の暮らしについて。僕は今、自分の人生を捉え直すということに入り込んでいますが、もちろんそれは簡単に答えが出る話ではありません。難しいです。

 でも、今年の重要なテーマのひとつは、「難しいですよね」というのを結論にしないということなので、そこで立ち止まっているわけにはいきません。実際問題として身の周りに難しいことがあまりにもあり過ぎるし、それは本当に難しい問題ばかりだから「難しいですよね」という話にしてしまえば、そこで思考停止できるんです。でも、そうするということは何もしないということ、つまり現状維持の方向に物事が進むということになります。現状維持に務めるのは楽だし、現状維持のために努力するのはリーズナブルな感じがするけれど、それでも“ホントは変えなきゃいけないんじゃないの?”と考えるべき局面があるだろうし、じつは今がそういう局面なんじゃないかと思うんです。ちょっと変な例えかもしれませんが、いま東京に住み続けるということは、「フェラーリが大好きだから、家賃3万円のアパートに住んで、それでお金を作ってフェラーリに乗ってる」というのと同じくらい物好きだということになってしまうかもしれないと個人的には思い始めています。

 加えて、そうした状況のなかで目にするいろいろな報道には強い怒りを覚えます。「ハードな現実を受け入れることは辛いから、辛くない方がいいでしょ」といった調子で、僕らを真実からほど遠いところに誘導しようとしているように感じるのですが、なんだか僕らはずいぶんとバカにされているんじゃないでしょうか。 

 毎日の暮らしを営む環境が、誰かが何かをしてくれて、気づいたら全部元通りになってるだろうと思うのはもうやめたほうがいい、と僕は思います。この連載でも「人間は慣れる動物だから」といつも言っていますが、それはつまり“良くも悪くも人間は与えられた環境のなかで生きていく”ということですね。でも、もうそれとは違う生き方を考えないといけない世の中になっちゃったということだと思います。震災前とは別の世界に生きていると考えるべきなんでしょう。そのことを震災から約1年経った今、あらためてものすごく強く痛感しています。


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