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Vol.88 2011年を振り返ってみると…

  • 2011年12月22日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、今年最後の更新になるので、月並みではありますが、今年1年を僕なりに振り返ってみたいと思います。

 すごく個人的な話から始めると、僕は2014年に40歳になるので、その誕生日に向けて5カ年計画みたいなことを考えているんですね。それは40歳が人としてのひとつの完成形を示すタイミングかなあと思っていて、それは20歳とか30歳のときにはそんなことを考えているヒマがなかったということもありますが(笑)、とにかくそれに向けてしっかり準備し、自分にできるベストなものを積み上げて人生のひとつのピークを作ろうとしているわけです。2010年、2011年というのはその準備のための準備を進める、非常に重要な時期だったんですが、今年はその予定からは大きくはずれてしまいまいました。それでも、僕にとっていろんな意味でスタートの年になったのは間違いないと思います。少なくとも、何かが終わった年だというふうには僕は捉えたくないんです。で、何がスタートしたかと言えば、それは結局“いま、この時代に日本で生きるということを、どういうふうに自分で選ぶか?”ということとどう向き合うかということだと思うんですが、そういうことについてこれまでは僕はグレー層にいた人間だと思うんです。完全に流されているというわけではないし、完全に自分で何かをつかみ取っているわけでもない、ということですね。それが、2011年3月11日を契機にして、主体性を持って動くことにはなったかなと思うんです。僕以外にも、そういう人はけっこういると思うんですが。

 ここで言う「主体性」というのは、自分が所属している社会に対して主体的に動く、ということです。自分が所属している社会に対して何かの意志を表明したり行動を起こすといったことについて、それまではなんとなく飲みながらしゃべっていたようなことをパブリックにしっかりアナウンスする人、あるいはそういう組織を作ったり旗を振ったりする人はだいぶ増えたと思うんです。それは、悪意のある/なしにかかわらず、「みんなのため」と言ってきた組織や運動がいざというときに役に立たない場合があるということを、みんな痛いほど知ったからだろうし、そういうことに気づいた人が“このままでは嫌だ”と思って、まだ気づいていない人に気づいてもらおうと、いろんなことをやってるというのが現在の状況だと思います。だから、世の中を俯瞰してみれば、やはり新しい流れが起き始めていて、その新しい流れによって損害をこうむりそうな人たちが慌てて火消しにまわっているというふうに僕には見えています。

 繰り返しになりますが、“自分たちと社会”とか“自分たちと政治”ということを考える人がものすごく増えたと僕は感じています。で、考えてみれば、学校に行けばクラスがあるし、会社なら部署があるし、どういう立場でも人はなにがしかの組織に所属していて、ということはそこには“社会”があるはずなんですよね。でも、例えば“地域社会”とか、そういう話を始めると、“俺は関係ないな”みたいな反応を示したり、“誰かがやるだろう”と思ったりするということがこれまで多かったんじゃないでしょうか。僕自身もそうだったんですけどね。“政治”という言葉が出てくると、いきなり遠い感じがしてしまうというところがあったと思うんですけど、実際には例えば“ゴミ出しは月曜日っておかしくない?”みたいなことを考えるにしても、そこには“政治”ということを結びつけて考えるべきなんですよね。で、今年はそういうふうに発想する人がものすごく増えた1年だったと思うんです。しかも、その状況は、幸か不幸か、ブームみたいな感じにはなっていない。それは、すごくいいというか、面白いなと思っています。

ぼんやり学会

 大変な1年が間もなく終わりますが、先に書いた通り、この1年にもいいことの可能性が広がった部分があることを僕はすごく感じているし、だからこそ新しい年が良い1年になっていくことを信じています。

 この1年、この連載を読んでくださって、ありがとうございました。
 よい年をお迎えください。


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