Vol.87　年末なので、あらためて“狭い意味”のエコに立ち返ってみる

　みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
　この連載は言うまでもなくエコについての連載であるわけですが、僕は新しい地域コミュニティのあり方を模索することがいろんなエコの課題を解決するひとつの道筋なんじゃないかと思っていて、それでここでもそういう話をしばしば書いてきました。そこに、東日本の太平洋側にあった地域コミュニティを根こそぎ駄目にしてしまうようなことが起こってしまったわけで、だから例えば南三陸のボランティアの人を支援することについて考えることは広い意味でのエコ問題だと僕は思っているんですが、今年の連載もあとわずかになってきたので、このあたりで一度狭い意味のエコ問題に立ち返ってみようと思います。
　まず、震災が起こってしまったことで、嘘をついていた人たちにとってはその嘘の構造がだいぶ明らかになってしまったということはあると思うんです。というか、全然無理筋の話でも、あるいは冷静に考えれば絶対そういう結論には成り得ない話でも、強く主張し続ければ、そっちのほうにみんなの意見が寄ってくるということが世の中ではたくさん起こってしまっているということをみんなが知ってしまいました。あるいは、どっちでもいいよと問題がある場合にはお金がたくさん動くほうというか、経済活動を伴うほうの選択肢に世の中は向かうんだなということも思い知ったと思います。

　ペットボトルの問題もまさにそうですよね。僕が思うに、ペットボトルの回収と再生をビジネスとして進めることが問題なんじゃなくて、本質的な問題は「それは資源のリサイクルだからエコなんだ」と言ってしまうことですよね。僕個人は、それは企業倫理的にアウトだと思っていますが、「ペットボトルはリサイクルできる」という言い方が嘘かと言えばそうとは言えない、ということだからこそ問題なんです。言い方を選ばずに言えば、卑劣なやり方です。そういうことは、世の中にいっぱいあります。だから、僕たちがいま生きている社会というのは、“資本主義か共産主義か”といった体制の問題とは関係なく、誰かに任せておけばやっていけるという状況ではないんだということを再確認するべきです。任せるなら、その結果として起こる最低最悪の状態を想定し、それを許容しなければいけない。それは、非常に大変なことですが、でも長年ぬるま湯に浸かってきた日本国民としては「自衛」ということをもっと意識すべきだと思うんです。
　「CO2を出せば地球は暖かくなる」という話がずっと言われています。仮にこの話を信じたとしても、じゃあ「現状の温暖化の原因はCO2である」となぜ言い切れるのかということをもう少し厳密に調べてみるということが「自衛する」ということのひとつの形だと思うんです。
　メタンガスとCO2を比べれば、実験室レベルの計測ではメタンガスのほうが21倍の温暖化効果があります（参考：http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11SE143.html）。だから、CO2を規制するのであればメタンガスも同様のキャンペーンで規制しなきゃいけないはずですが、それはやらない。そうすれば特定の業界を締め付けることになるから。それよりは、みんなを緩く広く規制するCO2のせいにするほうが反対勢力はうまれにくいから、そっちが選ばれているんだと僕は思っています。
　あるいは、食料問題だってCO2問題とつながっています。重量ベースで計算してみると、全世界で援助されている食料（600万トン）よりも、日本で１年間に捨てられている食料のほうが３倍もあるっていう。コンビニやスーパー、飲食店で売れずに廃棄されているものだけで700万トン（参考：http://www.maff.go.jp/j/study/syoku_mirai/pdf/data2-1.pdf）。それは、例えばコンビニに行くといろんなものを選べるという状況を維持するためにそういうことになっているわけで、その状況になんの疑問も抱かずに、ただ「CO2は削減しないといけない」と言っているのは生活を自衛できていない、ということになるだろうと思うんです。
　先日、たんぱく質の分子構造の解析を進めるのにデータ分析をネット上で競うゲーム形式にしたら、世界中のゲーマーが参加して、あっという間に作業が完了した、というニュースがありました。科学者が10年かけてもわからなかった構造を、10日以内という驚くべき速さで解明したそうです。万事こういうことなんだろうと思うんです。つまり、「自衛」の意識をみんなに広めるのもプレゼンの仕方次第、いろいろなエコの問題を、みんなの意識というまな板にのせる、そのやり方次第なんだろうから、僕もこの連載で僕なりの魅せ方というのをもっと考えていきたいと思っています。