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Vol.79 この1ヶ月半の間に被災地で見聞きしてきたこと その1

  • 2011年8月18日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 この1ヶ月半の間に、僕個人としてだけでなく、ゴスペラーズとしても被災地に出かけて、歌ってきました。

 僕が初めて被災地に入ったのは3月末でしたから、それからすでに数ヶ月の時間が経過したわけですが、この間に状況が進展しているのかどうかというのは、正直に言って、よくわかりません。例えば、6月にゴスペラーズの村上(てつや)やミュージシャンたちと出かけた二本松などは内陸にあるので目に見える被害はそれほどありませんでした。それに、僕らがお邪魔したJICAの施設は、本来は青年海外協力隊として海外に出かけていく人のための訓練所だったので、そこに避難している300人弱くらいの方は個室で暮らしてるんです。だから、避難所としてはかなり環境はいいほうだと思うし、温泉街が近いので、比較的早い時期にお風呂に入れるようになったり、施設のシャワーも使えるようになったとか、現代の日本における人間として最低限度の環境というのは早い時期に確保されていました。それでも、やっぱり雰囲気は暗かったですけどね。生活環境が苛烈だからどうで、比較的恵まれてるからどうだっていうのは…。そりゃあ、差はありますよ。ありますけど、それは限界を超えたうえでの差なので、差なんてないんだとも言えますよね。つまり、ストレス源のダルマ落としみたいなもので、何かが改善されたと思ったら、また違うストレス源がストンと落ちてくるような状況で、余裕はないですよ。

 瓦礫撤去の問題についても、進んでいるかと言えば、おそらくは進んでるんでしょうが、やはり問題は多いようです。南三陸のボランティア・センターの人たちに聞いた話では、瓦礫撤去については基本的には建設会社が入札して自治体から瓦礫を買ってるんだそうです。だから、その意味では瓦礫は私有物であるわけで、ボランティアが触るにも許可が必要なんです。で、重機を使って作業している業者から言えば、瓦礫撤去の作業はじつは自分たちのものを集めているだけなんですよね。その上で、ボランティアが撤去の作業をやるにしても、とにかく目の前にあるものを動かしていけばいいっていう話でもなくて、外から来た人たちは遠慮があるからなかなか作業が進まないようです。明らかに壊れてどうしようもないような置物でも「これ、どうしたらいいでしょうか?」って聞いてくる、と。それに対して「捨ててください」と言えるのは、やっぱり現地の人なんですよね。だから、どうしても現地の人が監督しなきゃいけないんだけど、でもその監督作業も無償でやらなきゃいけないというのが現状です。

 この問題については、僕らの仲間と試算しているところなんですが、仮に瓦礫撤去を指導する現地の人を時給1000円で20人雇用したいするとします。1日の作業時間を6時間として、週休2日で作業を進める、と。1チームが10〜20人のボランティアで、1軒の広さの土地で作業すると2日できれいになるそうで、そのペースで1ヶ月間やると240万円かかるんですが、広さとしては220軒分くらいになるんです。240万円というのはけっこうな金額ですけど、でも話を持っていく相手によっては出ない金額でもないだろうと思うんです。あるいは、「あなたが1000円払えば、これくらいの広さがきれいになって、しかもそのお金は現地の人の収入になります」というような枠組みを作るのもいいんじゃないかなとも考えています。僕たちが立ち上げた会社「ALWAYS WITH SMILE」(AWS)でやれればいいんですが、まだ体制が整っていなくて、いろいろな可能性を検討しているところです。

 次回も、この1ヶ月半の間に被災地で見てきたこと、聞いてきたことについてご紹介します。

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