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Vol.37 新しい技術や新製品の情報を聞くと、まずはワクワクしますが…。

  • 2009年12月3日

 

 みなさん、こんにちは。15周年記念ツアーがいよいよ佳境に入ってきたゴスペラーズの北山陽一です。
 まずは、前回からの続きで民主党の政策に関して。事業仕分けについては賛否両論あるようですが、改革の時期にはある種の乱暴さは必要だとしても、それでもとりあえず科学技術関係だけは死守してくれよというのが正直な思いです。
 ただ、そうした政治の動きをよそに、民間ではしっかりといろいろな研究開発が実を結んでいるというニュースを目にします。例えば、三菱重工業がYS-11以来の飛行機「MRJ」を開発していますが、この「MRJ」をアメリカのトランス・ステーツ航空が100機購入を決めたとのこと。相当、燃費がいいらしんですが、デザインもツバメみたいでかっこいいです。飛行機と自動車それから、この連載の第25回でも紹介した音力発電の研究の実用化が進んでいるという報道もありました。さらには、ギネスブックに申請中のようですが、電気自動車の無充電走行距離の記録が更新されました。その記録を達成したクルマは、ガソリン車からエンジンを取り替えただけで、電池は床下に並べてあるので、外観をパッと見る限りでは普通の軽自動車です。それで600キロ近く走ってしまうわけですからね。「電気自動車は走行距離の短さがネック」と言われていますが、その課題はクリアされたということになるかもしれません。でも、問題の本質はそういう単純な話ではなく、考えるべきはエネルギーの効率的な利用ということであるようです。たとえば営業車を選ぶ場合に、50キロくらいしか走らなくて充電しに戻ってこれる状況なら500キロも走行を続けられるキャパシティを持つガソリン車よりも電気自動車のほうが有効なんじゃないか、というようなことですね。もう少しバランス良く設計を考え直す必要があるというわけなんですが、個人的にはユーザーがそういうことをできるようにすればいいと思うんです。現状でも、「ガソリンを満タンにしないでたとえば20リットルだけ入れることを繰り返しながら乗るのと、満タンにして無くなるまで乗る乗り方とどちらが効率的か?」みたいなことはみんないろいろ試していますよね。それが電気自動車でも同じように、たとえば自宅の駐車スペースに充電用のポッドが用意してあって、“今日は○○まで行くから余裕を持って4つ入れておくか”みたいな。あるいは“今日は長く走るからたくさん積むのでうまく重心をバラけるように配置しよう”とか。そういうことができるとクルマに乗るのがもっと面白くなるかなあって、その記事を読んでまた夢想していました。
 要は、ある程度の手間ひまを楽しめるかどうかということなんです。そして、その手間ひまを楽しめる精神こそがエコのいろいろな問題に対するひとつの答えになるんじゃないかと僕は考えています。実際、プロセスを減らすことが合理的だとか便利だということにとかくなりがちですが、そもそもその「便利」とか「合理的」がいいのか?と改めて考えてみると、かなり微妙な気持ちにさせられたりします。例えば手紙を書くということが完全には無くなってしまわないのはもちろん理由があるだろうし、もっと言えば字は下手くそなのに、それでもていねいに礼状を書くということをおろそかにしないことでしっかりビジネスの成果をあげている人がいたりすることに注目すべきだと思います。この数十年の間は、「便利」とか「合理的」は良いことだとされてきたわけですが、そうじゃない方向に軸を傾けていくのがエコなんだとすれば、たとえばクルマに乗るときに“今日のオレの走り”というものをイメージして、それに合わせて乗るたびに自分のクルマをカスタマイズするような意識が求められているのかもしれません。もちろん、「そういうことはコンピュータに計算させて、それを採用する」というのもひとつのスタイルなんだろうけれど、でも“これくらいの燃費で走りたいな”みたいなことをなんとなく考えて、それに沿って自分で電池の数や配置を工夫したりするスタイルがあっていいと思うし、そうなれば、走り方も変わると思うんです。
 だから、新しい技術が生まれ、それによっていろいろな新製品が届けられるなかで最近僕が改めて思うのは、“時間や労力の浪費とか非合理的とされていたものがじつは美しいプロセスだったのではないか?”というようなことをもう一度問い直す時期なのかなということです。
 次回も、もう少し“新しいもの”との付き合い方について書いてみたいと思います。どうぞ、お楽しみに。

 

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