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Vol.28 みなさんの質問に答える その3

  • 2009年7月30日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
 今回が、寄せられた質問にお答えする1周年企画の最終回です。

<「ぼんやり学会」Vol.6 北山塾のゴミ分別ミーティングで考えたこと>に関して
vol6でCSRについて触れられていますが、どうしても利益優先になってしまうのが現状ではないかな?と思ったんですが、どうすればそういったところまで考えられるようになると思われますか??
20代・女性

 僕は今、ちょっと風邪気味で、そういうときには親孝行どころじゃないと思うのと同じような話だと思うんですが(笑)、これだけの不景気で、しかも何かあるとすぐ株主が文句を言うような状況のなか、“企業は社会に及ぼす影響に責任を持たなければいけない”という理念だけでCSRを果たそうとするのは難しいですよね。

 個人的には、CSRって、本当だったら「CSRですよ」って言わなくていいと思うんです。「責任」という言葉が入っているから解釈が難しくなっているだけで、要するに「情けは人のためならず」というか、「社会との共生」のことだと思うんですよね。常にみんなが幸せであることを誠実に求めていくことが、生態系における取り分を守って生きている野生動物のように、結果としてバランスのとれた永続的繁栄につながっていく、と。自己(すなわち社会全体)の繁栄のために必要なことであって、元来誰かに報告するようなことではないはずです。

 今、敢えて「CSRだ」と言ってるということは、それは時流に乗ったプロモーションだと思うんです。若干ニュアンスが違って聞こえるかもしれませんが、これも大事なことだと思います。潜在的な顧客層をつかむというかマーケットを広げるという意味でもとても効果的だと思いますしね。

 僕もそうでしたが、どうもボランティアは純粋にボランティアでなければいけないとか、利潤追求活動は金の亡者のすること、みたいな単純でわかりやすい考え方に陥りがちです。でも、もっと微妙にバランスを変えていいと思うんです。ボランティアであればあったでいいけど、ないのは良くないという話でもないし、単純にビジネスというだけ毛嫌いする人が多すぎるかなというふうに思います。

 この質問は、どうしたら企業が自身の所属する社会のことまで考えられるようになるか?ということだと思うんですが、そのためには消費者が自分たちの感じていることをフィードバックしてあげることも大事だと思います。例えば、同じお金を使うなら地域社会としてはこういうことを求めていますというふうにニーズを明らかにしてあげたほうが効率は上がるはずだし、効率があがればCSRを進めることの意味も広がっていくと思います。

<「ぼんやり学会」Vol.14 「環境」について考える、ということのぼんやり学会的意味>に関して
北山さんこんにちは。私は今大学で環境問題について学んでいるのですが、北山さんもおっしゃっているように「環境」の意味が広すぎて正直戸惑っている部分も多いです。連載の記事とは離れてしまう質問かもしれませんが、「持続可能な社会」とよく言われますが、経済と環境は両立できると北山さんは思われますか?人間がこの大量生産・消費社会に暮らしている限り、両立はあり得ないと私は思うのですが…。このようなネガティブな考え方をしていてはだめなのでしょうか。
20代・女性

 ネガティブな考え方をするのが駄目とは限らないと思います。その考えを突き詰めていけば、なぜ両立しないのかという原因がわかるだろうし、原因がわかれば、何をどう変えれば両立するようになるのかがわかるはずですから。

 この方の場合は、言葉の意味を一生懸命解釈して、経済というものと環境というものが今使われている意味において相容れないと感じているということだと思います。

 試しに視点を変えてみましょう。20代ということは、この方はこれからの社会を作っていく世代であるわけです。環境という言葉や経済という言葉の意味を両立できるような意味に変えていけばいいんですよ。実際、それぞれの言葉の意味は50年前とは全然違っているわけですから、それは夢物語ではなく現実的な計画だと思います。科学技術が進むことでも、満足とか豊かさとか経済の仕組みとか人間の欲望とか、そういうものは変わっていくはずですしね。

 逆に言うと、最終的には両立しないと困るわけですから(笑)、両立させないといけないんです。人間が社会全体として生き残っていくためには両立させることが必要なんです。両立しないということが確定してしまうと、極端に我慢できる人しか生き残れないという世界になってしまうかもしれませんからね。

 発想の転換をはかる意味で、明治時代の環境問題とか江戸時代の環境問題をちょっとかじってみるだけでも思わぬ発見があるかもしれないですよ。

 というわけで、みなさんの質問のなかから緑のgooスタッフがピックアップしたものを3回に分けてお答えしたわけですが、お答えしたものだけでなく、頂いた質問には全部目を通しました。それで、改めて思ったのは、この連載は読者の方が自分の体や暮らしぶりについて、よく自覚して、より良くすることを考えるうえでのきっかけとして役立ててもらっているんだなということです。一人一人の人に具体的な答えを提示するのは不可能だということはわかってもらえると思います。「僕の場合はこういう答えに至りました」ということはひとつの例としてあげられるかもしれないけれど、「みんなこうしましょう」というようなことは言えないですよね。「ぼんやり学会」は、“基本的な考え方を自分の暮らしに具体的に落とし込む方法を一緒に考えませんか”という連載なんだなということをここで確認して、2年目もがんばっていきたいと思います。ひき続き、よろしくお願いします。

 

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