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Vol.22 “カタリバ”から妄想する新しい地域コミュニティの広がり

  • 2009年5月14日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 先月は、進学や就職は自分の考えや生活をリセットするいいチャンスだというお話をしましたが、エコの取り組みもその例外ではありません。僕自身は、最近ペットボトルは分別するのをやめて、燃やすゴミとして捨てることにしました。僕なりにペットボトルの処理について勉強した結果、今の時点ではそうするほうが合理的だと思ったからです。もちろん、僕の考えが絶対正しいとは思っていませんし、これからまた新しい知識を得て考えを改めるかもしれません。みなさんがそれぞれに自分のスタンスを持ってくれればいいと思うのですが、とりあえずゴミの問題というのはとても身近な問題だし、新しい環境でのエコ事始めテーマとしてはいちばん考えやすいかもしれないですね。例えば、自分が出したゴミはどんな炉で燃えているのか、どういう流れで処理されているかを追跡してみるというのは面白いかもしれない。ゴミの処分場などの見学も、クラス単位とかなら申し込めるはずだから、ぜひやってみてください。

 ところで、先日、大学の後輩から聞いた話で、また妄想がいきなり広がってしまいました。その後輩は、“カタリバ”というNPOをやっていて、これは高校と大学が協調して1コマ45分から120分の語り合う場を作るという取り組みです。具体的には、大学生が高校に出かけて行って自分の経験を話す、と。高校生の側も、大人には言えないけど少し年上のお兄さん、お姉さんになら言えるようなことを話したり、1年前、2年前に受験した人に進路のことを聞いたり、大学生がどんなことを考えてるかということを質問したりする。まさに「語り場」です。

 その後輩の彼女がこういう取り組みを始めたのは、彼女自身の経験がきっかけになっています。僕や彼女が通っていた慶応大学の環境情報学部(SFC)は、自発的な問題発見の能力を学生に問うという、画期的なテーマのもとに創設された学部なんですが、おかげで、そんな学部に入学した彼女は愕然としたそうです。それまでは大人が用意した枠組みのなかで与えられた課題に答えるだけでランキングされていたのが、突然“すべて自分で考えなさい”ということで放り出された形になったからです。そういうことって、普通は社会に出て初めて経験することですよね。ところが、SFCに進学すれば大学で経験することになるわけですが、それならば、そういう世界があるということ、そこには責任と自由があるということを、さらに前倒しして高校時代にガイドしておけば学生にしても気の持ちようが違ってくるだろう、と彼女は考えました。加えて、そうした話を、自分の体験談として、しかもすでに成功した人じゃなくて身近な世代の人が伝えるということの効用を考えたわけです。

 僕がそのプロジェクトをとてもいいなと思ったのは、地域コミュニティを新しく作っていくひとつのきっかけになると思ったからです。この連載でも地域社会との関わり方についていろいろ書いてきましたが、家族の人数が少なくなっていたりコミュニティのつながりが希薄になっている地域では子ども同士の関係にもいろいろな弊害が生まれていますよね。そういう意味でも、“地域のお兄ちゃん、おねえちゃん”みたいな存在が必要だろうと僕は思っていました。例えばいとこのおにいちゃんとか近所のおねえちゃんとか、そういう大人と子どもの中間的な年齢の人たちから進学先の話や就職の話を聞けるような環境が以前ならありました。ところが、最近では子どもと大人とにバッキリ分かれてしまったせいで、そういう情報や体験の伝達がむずかしくなっている状況があると思います。この“カタリバ”はそういう状況を変えていくきっかけになると思ったんです。そして、そこから僕の妄想が広がっていったわけですが、その話は次回に。

 ところで、この連載も早いもので間もなく1周年を迎えます。その記念にというか、2年目に向けて読者のみなさんとさらにコミュニケーションを深めるために、7月に質問特集を行うことにしました。この1年の連載の内容に関する素朴な質問、率直な反論などをどんどんお寄せください。よろしくお願いします。


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