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Vol.144 マイファーム代表・西辻一真さんとの対話その2

  • 2014年4月10日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、僕自身が最近いちばん興味があるというか、考えることが多い教育に関する話から紹介します。西辻さんをはじめ、若い世代のリーダーたちが僕と同じような思いのなかでそれぞれの取り組みに向かっているという話に、とても心強い思いがしました。

北山:僕の大学の後輩の今村久美さんがやっている「カタリバ」の取り組みについて、僕は彼女に会った当初から「その取り組みをマトリョーシカにすべきだ」と言ってるんです。あれは、かつてあった「近所のおにいさん、おねえさん」という存在を、地域を越えて提供しようという取り組みだと思うんですが、それを僕はアカペラでやろうとしているんです。歌が好きな人を集めて、大学生が高校生に教える、高校生が中学生に教える、というふうに広げていく、と。それから、僕は出身地である八戸市にある白山台中学校の校歌を書いたんですが、その曲は、1年生の男子、女子、2年生の男子、女子、3年生の男子、女子ですべてパートが分かれているんです。だから、入学式で全部のパートを揃えるためには、4月より前に小学6年生に教えに行かないといけないということになるわけです。そうすると、小学6年生と中学1年生の間にある、よくわからない微妙なギャップがありますけど(笑)、それをなだらかにできるんじゃないかなっていうことなんです。
西辻:今村さんにしても、「asobi基地」 の小笠原舞さんにしても、SFC出身だったら「みやじ豚」の宮治さんとか「フローレンス」の駒崎さんとか、みんな仲良しなんですけど、そういう人たちが何を考えているかというと、みんな自分がおかしいと思ったことを変えようとそのまま真っすぐやってて、でもその行き着く先はみんな同じなんです。この経験をマトリョーシカ風にどんどん伝えたい、と全員思っていますよ。そうすると、みんな教育に行き着くんですよね。そういう意味でも、やっぱり農業はすごくいいなと思うんですけど、僕がなぜマトリョーシカのようにということを思ったかというと、リーマンショック後の2007年から09年くらいまでは、ウチの農園に来るのは子ども連ればかりでした。リーマンショック後の先行き不透明なその時期、子どもを連れてきていた親たちの動機というのが、「子どもが大きくなったときに、万が一何かあっても野菜を作れるように」ということだったんです。で、いろんな作業のやり方を説明するんですが、子どもはあまり聞いていないんですよ(笑)。でも、親が聞いて、その受け売りを子どもに教えるわけです。この姿が僕はとても素晴らしいと思っていて、そういうコミュニケーションは農業でないとできないものだと思うんですよね。それでマトリョーシカということを意識するようになったんですが、加えて時代に応じてお客さんの層が変わっていくんです。最近、おじいちゃん、おばあちゃんが増えているんですけど、それは農業をやりたいということに加えて、仲間を作りたいということだと僕は感じています。2008年頃は、「ワシにかまわんでいいから、一人でやらせといて」という方が多かったんですが、最近のそういう年代の方はやたらと話しかけてきたり隣りの人に影響力をおよぼしていたり(笑)。そういう人が多いなということを肌感覚として感じています。そういう意味では、農業は社会をはかるバロメーターでもあると思います。
北山:僕が今AWSでやっているのは、歌を聴かせに行くということではなくて、一緒に歌おうということなんですね。歌に興味のある人に集まってもらって、アカペラを構築するっていう。で、一度ハモるとすぐに仲間になれるんです。そこはチーム・スポーツと同じだと思うんですけど、そういう仲間を増やそうとしているんです。これから10年くらいかけて、アカペラでコミュニティーを作ることの意義を広めていって、この後どこでどんな災害が起こっても、自分の家族のことのように心配し、心配されるほうも家族のように受け入れられる間柄をたくさん作りたいと思っているんです。そこで、最近はおじいさん、おばあさんが出会いを求めているという話を聞くと、これは追い風なんじゃないかなと思ってしまいます。日本人すべてをひとつの枠組みにはめ込むのは無理だということは、もうみんなわかってるじゃないですか。そこで僕は、「音楽」とか「アカペラ」というフィルターをかけて、そこに引っかかった人に、その引っかかった特性に合わせて自分たちでコミュニケーションを広げていくということが、それぞれの分野でできると楽しいだろうなと思ってるんですが、西辻さんは「農業」というフィルターに引っかかった人たちにどういうことをすればみんなが幸せになれるかということをすごく考えていらっしゃると思いました。そういうことを考えている人たちがつながって、そういう試みを民間で重ねていくだけでも、日本の幸せは増えるんじゃないかなと思います。

 僕がマイファームに注目したのは耕作放棄地の活用の取り組みだったわけですが、お話を聞いていると、マイファームがやっている農業学校にもすごく心惹かれました。「農作物の種を蒔いてから収穫するまでの一連のプロセスを必ず見てほしい」という基本ポリシーはすごく納得できるし、卒業生に必ず農地を紹介するという仕組みにもすごく共感しました。というか、納得したり共感したりしているだけでなく、ぜひマイファームの学校に参加したいと思っています。またやりたいことが増えてしまって、うれしい悲鳴の北山でした。

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