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Vol.112 2012年版「みなさんの質問に答える」その1

  • 2012年12月13日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 今回は、みなさんから寄せられた質問のなかからスタッフがピックアップしたものに2回に分けてお答えする企画の第1回です。早速、最初の質問です。




京都のシティホテルで仕入を担当しています。シャンプーやコンディショナー、スリッパなど少し使って捨てるってことに勿体無さを感じながら、使いまわせない現実に焦りすら覚えています。自分がお客様の立場で、誰が使ったかわからないものよりはさらの方が良いに決まってますし、だからと言って本当に勿体無いことを繰り返してます。改善をいつも検討していますが、なかなかホテルの格を意識しすぎて答えがないままです。環境のみを大きくうたうことも、やはりリゾートに来られた方には自由に過ごして貰いたいとも思ったり。タオルの洗濯工場へも見学に行って少しでも使い回しをしてもらえたらとは考えますが、ホテルにきた時くらいは思いっきり使ってと感じたり。いろいろホテルに泊まられててどう感じておられますか?何か具体的な突拍子もない意見をお伺い出来ればと思います。昨年の大震災の時には歯ブラシやスリッパどうやって被災者の方々に届けられるか本当に悩みました。会社をあげて、環境と自分たちが考えるホテルの格との板挟みです。違った立場からのご意見がお聞きしたいです。宜しくお願い致します。


最近は、例えばシャンプーやボディソープをボトルで置いてあるホテルも増えていますよね。それは、「高級ブランドのシャンプーやボディソープを用意していますよ」ということをアピールする意味合いももちろんあるとは思いますが。で、僕個人はそういうボトルの形で提供されるものを気持ち悪く感じるかと言えば、まったくそんなことはないですが、この話のポイントは、利用する側の個人的な感覚にどう対処するかということよいも、一人分を小分けにした形のものではなくボトルタイプを提供していることをどうアピールするか、というところにあると思うんです。つまり、エコを進めることから生じるマイナスをどう減らすかという守りの発想ではなく、エコを切り口にホテルの新しいブランド価値やプロモーションツールを作れないかと考える攻めの発想に切り替えてはどうでしょうか、ということです。

 現実的な可能性はとりあえず考えずに思いつくままに書いていくと、例えば何も言わない人には従来通りの一人用を提供するんだけれど、オプションとしてシャンプーの銘柄を選べるみたいなサービスを用意することにすれば、そのサービスを選ぶ人はボトルタイプの形で提供されても気にしないと思うんですよね。

 あるいは歯ブラシなら歯科医さんと提携して、いろんなものをラインナップしておいて、お客さんに最適なものを提案してあげて、それを買ってもらうとか。で、チェーンのホテルだったら、そのデータを共有しておいて、もしお客さんがその歯ブラシを持ってくるのを忘れても、すぐに最適のものを提供してあげられるようにしておく、みたいな。それから、地元の特産品に竹細工があったら、そのひとつとして耳かきを綿棒といっしょに用意しておく、みたいなプロモーションのチャンスのひとつと捉えるとか。

 そういうふうに発送を転換すれば、現場で日々いろんなことを経験している方なら、いろんなアイデアがどんどん出てくると思うんですよね。ホテルの外の企業とか、京都だったら伝統工芸の職人さんみたいな人とか、そういう人たちと何か一緒に考えてみるというのはありだと思います。

 ところで、少し話は逸れるかもしれませんが、しばしば出くわすホテルの説明で個人的にすごく嫌いなのは、例えばシーツを換えなくていいと伝えたらエコポイントが加算されるみたいなサービスがありますけど、現実的にはシーツを換えないで済むとホテルは経費が削減できるから、その何割かをお客さんに還元します、ということですよね。それなのに、「環境に配慮して」みたいなことだけの話にしてしまっているのは、なんかちょっとズルイ感じがします。そこのところは正直に言ってもらったほうが気持ちがいいし、それだったら自分もエコにいいことをやるかっていう選択に結果としてはつながっていくと思うんですよね。

 それはともかく、これがきっかけで何か企画が通ったら、せっかくなんで泊まりに行きますから、ぜひご案内ください。





いつも興味深く読ませて頂いています。以前から質問しようと思っていたのですが、何故こうもゴミの分別が自治体によって違うのでしょうか? 環境やリサイクルを目的としていたのなら何故?以前、北山さんがゴミ焼却の見学へいらして“分別は意味がない”ーというような事を書いていらしたような気がするのですが。

そもそもプラスチックを不燃ゴミとして出しましょうということになったのは、焼却炉の性能に因る部分が大きいですよね。川崎市などは立派な焼却炉があったから、つい最近までゴミの分別自体がなかったと聞いています。ただ、そのあたりは自治体それぞれの事情もあるはずで、僕は自分が住んでいるところの分別ゴミの行方や分別に関する事情は調べたので、ぜひみなさんも自分が住んでいる地域の事情を調べてください。その上でどうするべきか悩んだら、“こっちのほうが気持ちいいから、こっちにしよう”という決め方がいいんじゃないかなとは思います。というか、そういうところで気持ちいい/悪いを感じられないというか無頓着に過ごしてしまっていることが、現在の分業社会の悪い部分を支えていると思うから、そこは感度良くいい/悪いを判断してほしいと思いますね。大切なのは、そういう情報をキャッチするアンテナは自分の意識の持ち方次第でちゃんと立てられるということですよね。そのことを理解した上で、“自分は立てない”という選択をする人がいてももちろんかまわないと思うんですが、そもそもアンテナは自分次第で立てられるということに気づいていない人がまだ多いんじゃないかなという気がします。

 そのことを踏まえて質問に戻ると、「自治体によってなぜ分別の仕方、考え方が違うのか?」というのは政治問題です。しかし、分別の仕方、考え方にいろいろな違いがあるということは、自分の生活の直接関わることだから…。まあ、政治問題も自分の生活に直接関わることではあるんですが、ただちょっと違いますよね。で、分別にいろいろあって、例えば自分の住んでいるところはすごく細かく分けなきゃいけないのに隣町はそういうことがない、と。そこで、いちばん単純な対処法は自分が気持ちいいやり方をやっている地域に引っ越せばいいと思うんですけど、でもいま住んでいるところを動きたくないとか動けない事情があるというのであれば、それは地域の政治家にはたらきかければいいと思うんですよ。あるいは、「少したくさん税金を払うから分別しなくてもいい設備を整えなさい」という運動を起こすとか(笑)。そういう極端な考え方まで含め、幅を持った考えのなかで捉え直すというか、とりあえず景色がいいとか交通の便がいいとか、そういうことと同じと言うのは言い過ぎかもしれないけど、それでも尺度は同じにして語られていいテーマだとは思っています。

 ちなみに、これとは別に「ペットボトルの分別に関する、最近の北山の考えは?」という質問がありましたが、僕のスタンスは変わっていません。買わないというのが基本で、事務所のスタッフが用意してくれるお水のペットボトルを家に持って帰るときには燃えるゴミで出してます。フタさえはずしておけばつぶれる物だから、刻んだりもしません。まあ、ペットボトルの分別の行方については、そろそろまた調べる時期かなとも思っていますが。
で、ゴミの分別について調べることもいいきっかけになると思うのですが、ぜひ考えてほしいと思うことがあります。それは、生まれ育った土地を愛するということはすごく大事だけれど、でも同時にライフ・スタイルおよび住む場所を自分で選ぶということも考えるべきなんじゃないかということです。実際問題として、自分が生まれた土地が今後30年、50年の間、自分が愛した土地のままであり続けるかと言えば、それはかなり難しいと言わざるを得ない地域がたくさんあると思います。おそらくは、右肩上がりの経済発展を望むことは難しく、しかも社会の利益がこれまでのようにほぼ社会主義的に再分配されることがなくなっていくでしょうから。そういう状況で、いちばん豊かな暮らしを過ごせるのは第一次産業に従事する人たちだろうと僕個人は考えていますが、そういうことまで含めてそれぞれが自分なりの豊かな生活というものをイメージして、そのためのライフ・スタイルを考えていくということが必要だと思うし、そのなかには住む場所を選ぶことも含まれると思います。逆に言えば、どんなところに住んでいようと自分な好きなスタイルで生きられるというのはすごく贅沢なことというか、社会全体がすごく余裕がある時代の話であって、現実にはスタイルに合った場所に行くか、今いる場所に合わせた生き方をするかのどちらかにしないといけないんですよね。





北山さん、こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。【Vol.96 新しい季節だからこその、失敗のすすめ】の回で、今の学生さんは“失敗することを恐れている人がすごく多いな”ということがあります。とおしゃっていましたが、企業の採用担当者をしている私も、それはすごく感じますし、北山さんが【僕が例えば企業の採用担当だったら「失敗したことがありません」と言った時点でその人間は絶対採用しないですよ(笑)。】というのもすごく共感できました。なので、「若き失敗のすすめ」にも、もちろん共感できるわけなんですが、今の子たちは、失敗をした後、中々立ち直れない・心折れてしまう子が多いなあとも感じています。そういった中で、失敗を勧めるのって中々難しいことだなと思っているんですが、北山さんは学生の皆さんや、若い世代の方と接する時に、何かフォローをされていることや、心がけていらっしゃることはありますか?

僕は、僕の枠組みの中でやることについては、リスクを取ってくれ、やりたいことをやってくれ、と。それで失敗したら、責任はオレが取るということにしています。成功したら、手柄はあなたのものですっていう。そういう親分が減ったんだと思うんですよね。逆に言えば、失敗を恐れている人の多くは、自分が犯した失敗のために自分の上司なり先輩なりが責任を取ってくれる、謝ってくれる、というようすを見たことがほとんどないんだと思うんです。形だけ、でなく、愛を持って、という意味です。愛を持って叱られたのに、それを受け止められない後輩や部下もいるようなので、もちろん一概には言えませんが。

 採用担当者がすごく難しいだろうなと想像するのは、学生たちがそれこそリスクを取りたくないから、みんながみんなマニュアルに則った一様な対応を見せるんだと思うんですよ。で、それは現代の教育システムを考えても就職システムを考えても、リスクテイカーが出てくる可能性というのは残念ながら低いわけで、だったら育てればいいというふうにも思います。で、どうやって育てるかと言えば、それは例えば英語を話せるようになろうと思ったら英語しか通じない環境に身を置くのがいちばん速いというのと同じで、リスクを取ってやっていかないと何も成果が生み出せないような環境に置けばいいんだと思うんですよね。その上で、JAXAの人にインタビューしたときにも言ってましたが、育てる努力が報われるとは思わない、ということが大事だと思います。それから、「このリスクを取ると、最悪の場合はこういうことになるよ」ということをしっかり伝えるべきですよね。だから、同じ組織で動いている若者に対してどういうフォローをしているかと言えば、それはとにかく対話することだと思います。

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