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vol.11 僕はどうして自転車に乗るのか?

  • 2008年12月4日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 いきなりですが、今回は自転車の話をしたいと思います。温暖化の問題が注目されるようになってCO2の排出ということが大いに問題視されている昨今、エコな移動手段として自転車がクローズアップされてきているのはご存知の通りです。で、僕自身、都内での移動手段は基本的には“マイ自転車”を利用していることもあって、今回のネタとしてピックアップしてみました。ただし、僕が自転車に乗り始めたのはエコとはまったく関係なくて(笑)、単純に乗りたかったからなんですよね。

 自転車というものに対して、憧れは以前からあったんです。ロードレースの映像とか見るとかっこいいじゃないですか。他のものの力を借りずに、自分の力を動力にしてあんなに速く走れるというのはいいなと思ったし。僕が乗ってるのはいまだにドロップ・ハンドルじゃないですけど、それでも実際に乗るようになってみると、本当に楽しいんですよね。単純に、“この坂、前はけっこうきつかったのに今日はラクだな”って感じるのはうれしいし、いろんなことを発見できるんです。

 自転車に乗っていると、選んでない情報に当たるんですよね。高速移動していると、ちょっと考え事してる間にすぐ目的地に着いてしまいますが、自転車くらいのスピードで移動していると目からも耳からもノイズがいっぱい入ってくるんです。そのノイズが大切なんじゃないかなあって思って。

 それに、もちろん体も鍛えられる。身体能力が高くて困ることはないですからね。僕の仕事はコンサートとレコーディングという2つの作業を中心に回っているわけですが、普通に仕事してるとその2つの時期には運動量にすごく差があるんですよ。ツアー中は単に与えられた仕事をやっていくだけで体ができていくんです。でも、レコーディングの時期はやっぱり3時間ぶっ続けで体を動かすというようなことはないですから、体力は確実に落ちていくんです。だから、生活習慣のなかでに楽しく体を作るということを入れていければいいなと思ったことも、自転車に乗り始めた理由のひとつでした。

 マイ自転車を手に入れる際には、「ある程度ちゃんとした自転車を買わないと意味ないよ」と、自転車に乗ってる仲間から言われました。自分に合っているものを見極めるうえでやはり最初の自転車というのはすごく重要で、それを踏まえたうえで2台目を考えなさいって。僕自身はまだ2台目を考える気にならないというか、ラッキーなことに1台目がすごく自分に合ってたんだと思うんですが、それにしても自転車を選ぶ際に値段ってわりと重要なポイントですよね。僕がいま乗ってるのは、13、14万円くらいのもので、チネリというメーカーです。アスリート系のバイクを普通に買うと50万円くらいするんですけど、たまたま僕が買おうとしてた時期にセカンドラインというか、そういうクラスのものをチネリが初めて出したんで、それを買ったわけです。そこで、やはり三日坊主で終わる可能性もありますよね。やっぱり体力的にきついし、雨が降ったら乗れないし。でも、それくらいの金額を出して買うと、なかなか簡単には止められません(笑)。それに、たとえば明日ゴスペラーズのライブ・リハがあるんですけど、そのスタジオまで仮にタクシーで行ったら4000円くらいかかるんです。往復で8000円ですよね。ということは、リハを10日やったら8万円。そう考えていくと、その13、14万円という値段も、“清水の舞台から飛び降りる”というような話でもないなと思って。というか、いままでオレはそんなことにお金を出していたのか…、みたいな気分になりますね。

 というようなわけで、僕自身は自転車ライフをすごく楽しんでいるんですが、自分も自転車に乗っているという人の話を聞いていると、いろいろと愚痴を並べ立てる人が時々います。「自転車に乗るのも大変なんだ」みたいな。そんなに大変なんだったら止めれば、と僕は思うんですけどね(笑)。それに、これだけ自転車がエコにもいいということがよく言われるようになると、いまさらクルマに乗るわけにはいかないという雰囲気もありますよね。

 エコそのものへの取り組みについても、同じようなことを感じることがけっこうあります。「地球環境にいいっていうからやるけど、面倒くさいよねえ」なんて文句を言う人がよくいますが、僕なんかは“だったら、やるなよ”って思うんですよね。そんなにストレスを感じるということは目的意識が足りないんだろうから、目的意識をその程度しか持てないことはやらなくていいんじゃないですかと思うんです。

 僕が自転車に乗ることについては、たとえば親が「危険だから、止めてくれ」と言ってたりもして、じつは自転車に乗ることを止める理由もすごくたくさんあるんです。でも、そうした理由よりも、最初に書いたように乗りたい気持ちのほうが大きいから僕は乗っているということですね。要は、どれを自分の理由としてピックアップするかということです。エコ活動も同じで、やるにしても、あるいはやらないにしても、自分のなかにはっきりと理由をみつけてほしい。特にエコ活動の場合、やるのはいいことだとされる理由はたくさんあるわけですが、それをやらないという意思表示をすることに理由をみつけるのがすごくむずかしいという状況が今はあるのも事実で、そのことには、はっきり言って、違和感を感じています。

 エコについて、習慣にしてしまえばラクだという話がよくあります。確かに、人間って慣れの動物で、慣れればたいていのことはできてしまう動物だし、思考停止の状態でルーティン・ワークにしてしまえばラクですよね。でも、僕としては“なんで私はこれをやろうと思ったんだっけ?”ということをつねに意識してほしいなと思うんですよね。

 僕自身、その“なんで私はこれをやろうと思ったんだっけ?”ということがすごく重要で、ずっと興味がありながらいまだに始められてないのが走るということなんですが、それは僕が走るために走るということがどうもよく理解できていないからなんです。でも、あれだけ愛好者がいるものってきっと理由があるはずなんですけど…。

 最後に、教えてgooの企画で、僕が投げかけた質問にとてもたくさんの答えを寄せていただいて本当にありがとうございます。次回は、その答えのなかからいくつかピックアップしながらお話を進めたいと思います。どうぞ、お楽しみに。


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