Vol.56 早春の南三陸町へ

　この3月は震災から3年の節目ということもあり、全国のたくさんのラジオ局の皆さんが「南三陸ミシン工房のうた」をオンエアしてくれました。僕自身もゲストで出演したり、遠方の場合は電話で生出演ということも多く、ミシン工房のことだけでなく南三陸町のこともお話しするので、きちんと伝えなくてはと毎回身が引き締まります。おかげで南三陸町観光協会が配布しているフリーペーパー「南三陸」はすっかり熟読。それにしても登場する方の10人に1人くらいでしょうか、「三浦さん」という苗字の方が多い町です。

　3/8の都内でのライブに続き、3/22は南三陸町の「ホテル観洋」でも、チャリティ・ミニアルバム「南三陸ミシン工房のうた」リリース記念ライブを行いました。仙台から車に乗り、三陸道を通って石巻を過ぎて気仙沼の手前まで、約1時間半。南三陸へ向かうのは、僕はこれで5回目です。

（写真：東京工芸大学 細川晋さん）

　前日から南三陸を訪れていた東京工芸大学アニメーション学科の学生の皆さんと先生方。制作してもらったミュージックビデオを、iPadやスライド上映で紹介しました。昨年も一緒に行かせてもらったのですが、ここで感じたことを作品にしてくれて、そしてまたこうして南三陸に帰ってきてくれたのが嬉しいです。皆さんの作品は、YouTubeのHARCOオフィシャルチャンネルで1本ずつ公開しています。ぜひご覧下さい！

（写真：東京工芸大学 小柳貴衛さん）

　ライブの前には、やはり南三陸ミシン工房のおかあさんたちとのトークを。今回は佐藤廣子さん、佐々木洋子さん、牧野きくさんにお話を伺いました。洋子さんはもともとお魚屋さんだったということもあり、海の幸の話で盛り上がりました。なんといってもタコで有名な南三陸、そのおいしい旬の時期の話や、タラ、カレイ、アイナメ、そしてワカメや海苔、「まつも」という海藻も特産物だそうです。南三陸町は遠洋漁業というよりは、近海・沿岸の漁と養殖を中心に漁業が行われてきました。同時にこの時期は菜の花や、こちらでは「バッケ」と呼ぶふきのとうなど、山の幸も豊富だそうです。

（撮影：小柳貴衛さん）

　ライブは3/8同様、ギター石本大介くん、ヴィオラ田中景子さんとの3人編成。ホテル観洋ロビーの、白いピアノのあるステージで歌いました。町内や近隣から、若い世代の方も多く足を運んでくれていたのが嬉しかったです。ライブの途中では、スライドで歌詞を映しながら「早春賦」をお客さんと一緒に歌いました。ホテルのスタッフの方や、偶然そこに居合わせた方も歌ってくれました。「氷解け去り、葦はつのぐむ〜」。

（撮影：小柳貴衛さん）

　ライブの後は総勢14人で、今年の1月に竣工したばかりのミシン工房へ！お仕事のお邪魔をしたうえに、ちゃっかり「お茶っこ」にも混ぜていただいて、どやどやと押し掛けた感じになってしまいましたが、おかあさんたちは笑顔で迎えてくれました。今まで訪れたときは、おもに家庭用ミシンをそれぞれ持ち寄っていたのですが、今では大きな工業用ミシンや圧着用の機械、倉庫なども出来て、すっかり工房としての貫禄が漂っていました。

　アルバムでは「さんさんきらきら」という曲も作ったくらいなので、復興仮設「さんさん商店街」での「キラキラ丼」も欠かせません。工房訪問のあとは、少々値は張りますが、震災前から受け継がれるその“A級グルメ”を全員でしっかりといただきました。

（撮影：細川晋さん）

　今年の3/11に発売されて、現在僕が読んでいる本がこちら。「震災復興と地域産業 5 小さな“まち”の未来を映す『南三陸モデル』」。これによると町の中心部は平均4メートルの嵩上げ、つまり盛り土などが行われるそうです。防潮堤と合わせ、おそらくこれから本格的な復興が始まっていくのだと思いますが、この週末は観光客も多く、さんさん商店街やそこに到着するBRT（バス高速輸送システム）を中心に、町は活気づいて来ているように感じました。こうして縁あって出会えた町の復興を願ってやみません。

　これからも「南三陸ミシン工房」から聴こえてくるミシンの音や、おかあさんたちの笑い声を頼りに、南三陸へ遊びにいきたいと思います。ミニアルバムはネットショップ「南三陸復興ストア」でも取扱いがスタートし、ミシン工房の作品や南三陸のたくさんの特産品とともに並んでいます。また、僕のホームページではHARCOバージョンの「おらほもあんだほもがんばっぺし！BAG」とのセットも引き続き販売しています。この春のお出かけに、ぜひどうぞ！

（撮影：細川晋さん）