サイト内
ウェブ

このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第11回 企業とNGO/NPOの協働は進んだのか

  • 2004年12月9日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

企業とNGO/NPOの協働は進んだのか〜環境を考える経済人の会21シェルパ・フォーラムから グリーンピースの環境保護活動と企業 グリーンピース・ジャパン事務局長 木村 雅史さん

中立、独立を貫くグリーンピース

 グリーンピースは1971年に米軍の北太平洋での核実験に反対する行動から始まっています。会員が世界で約170ヵ国280万人、約40カ国に事務所があります。グリーンピースは企業と政府からの資金援助を受けないというのが原則です。ですからこの280万人の会員からの資金援助で成り立っているといえます。

 89年に日本の事務所は活動を開始し、現在会員数が約5,000人です。ドイツやオランダでの50万、60万という数に比べると、非常に少ないのが現状です。

 グリーンピースは原則として、「非暴力直接行動」「政治的中立」「経済的独立」を掲げています。

 「非暴力直接行動」というのは、問題の発生している現地に身を置くことで、企業や政府に対して抗議の意思を示すという意味があります。環境問題は一般には見えない所で起きていることが多い。そういうことに対して抗議の意思を示すとともに起こっていることの証人となる。そしてここが大事なんですけれども、情報をできる限り世界中に出していくということです。

 次に「政治的中立」ということで政府からお金をもらわないということはもちろん、不偏不党を貫くということです。国の政府であれ国際的な機構であれ、それらに対して働きかけないといけないので中立ということは非常に大事です。

 最後の「経済的な独立」も本当に大事なところですが、要するに政府からだけではなく、企業からの資金援助も受けないということです。これは政治と一緒なんですが、企業が私どもにとっては働きかける対象であるということです。

 最終的には私どもは自由な個人に立脚しているということです。この三つの原則があることで中立性あるいは独立性がある、選択できる戦略の幅が広くなります。科学調査や分析については独立性が保たれたときに信頼が獲得できるということにもなります。

ドイツから始まったノンフロン冷蔵庫の開発

 90年以降、モントリオール議定書でフロン規制が強化され、それに対して代替フロンを各企業が使い出しました。ところが代替フロンは二酸化炭素(CO2)に比べて約1,400倍の温暖化効果がある。代替フロンもフロンも使わない社会をグリーンピースは提唱してきました。

 グリーンピース・ドイツの地球温暖化問題の担当者ウルフガング・ローベックがプロパンやブタンという炭化水素ガスを冷媒に使う研究者を見つけました。そして当時東ドイツのDKKという、つぶれそうだった会社に研究者を紹介し、こういった冷媒で冷蔵庫を作らないかと委託しました。そして92年に「グリーンフリーズ」という冷蔵庫が10台ほどできました。最初はこんなもの絶対に商品化しないと、どこの企業からも言われていたんですが、まずグリーンピース・ドイツがグリーンフリーズの予備注文をとるキャンペーンを行うと7万件の注文が来たということです。

 これで市場の要求があると判断した各メーカーが作り始めたのです。今ではドイツでは市場のほぼ100%が炭化水素を冷媒にしたものです。逆に言いますと、代替フロンを使った冷蔵庫はないということです。ヨーロッパ全体での市場占有率は30%ぐらいです。もう一つ大事なことなんですが、代替フロンの導入には高度な技術と多額の資本投下が必要なので発展途上国では使いづらい技術です。それに対して炭化水素であればどこでも手に入るので発展途上国への技術移転がされやすく、中国やインド、キューバ、アルゼンチンといった所で生産されています。こういった技術移転への寄与が認められ、グリーンピースは97年に国連オゾン保護賞を受けました。

企業を変えたグリーンピースの働きかけ

 そういった世界の流れの中で、日本では93年にほとんどの国内メーカーに対し日本でもグリーンフリーズを作ってくれと働きかけました。一方で「グリーンフリーズ消費者アンケート」を実施したところ、9割がグリーンフリーズを購入してもいいという回答がありました。なおかつ各メーカーに「グリーンフリーズを作って!」というハガキを送ることを呼びかけました。松下電器は当時、断熱部分については炭化水素ガスに切り替えていましたが、冷媒部分については炭化水素の可燃性を理由に代替フロンを使っていました。97年の京都会議で代替フロンが温暖化防止の規制対象になった後、98年からは冷蔵庫のシェアが一番の松下電器に焦点をあてて消費者の声を届けるキャンペーンに切り替えました。

 ここでグリーンピースの大きな戦略が見えてくると思います。まず国際的取り決めをつくると各国や各地域の市場に方向性が出る。このケースの場合、京都議定書で代替フロンを使ってはいけないとなると、市場で代替フロンを使わないという一つの方向性ができる。そしてグリーンピースは各国で各企業にプッシュしていく。98年の場合は消費者と一緒に松下電器にプッシュしようということを日本の一つの戦略として考えたのです。

 具体的にはまずグリーンフリーズの早期の商品化を求める署名を松下グループで冷凍空調事業を行う松下冷機に提出し、本部の事務局長が来日し、同社に直接早期の商品化を要請しました。それからいろんなパフォーマンスをやりました。例えば大阪市内の電気街でペンギンに扮して松下電器に早く作ってくれというアピールをしました。それからエコプロダツ展で松下電器の冷蔵庫を「地球温暖化冷蔵庫」と非難しました。このあたりが松下電器とグリーンピースがかなり緊張していた頃だと思います。これは後で聞いたんですが、この時期に松下電器の内部でグリーンピース対策が全社的に行われていたそうです。

 最終的には松下電器の1号機は2002年の2月に出されました。そして去年の末には300以上の冷蔵庫についてはすべてノンフロンあるいは代替フロンを使わない冷蔵庫に生産を切り替えたということです。今は他のメーカーもフロンも代替フロンも使わない冷蔵庫を販売しています。

 グリーンピースは、企業が持続可能な社会をつくる一つの重要なプレーヤーであると考えています。そういう意味で企業に変わっていってもらいたいと思っています。松下電器の例では、同社がグリーンフリーズを作ったからといって、松下電器全部を支持することをグリーンピースはしません。つまり、一つの企業を良いとか悪いとか言ってしまうのではなく、企業が持つ技術あるいは製品については支持する時もある。一方で、例えば原発を作っていることに対しては反対をします。要するに環境を破壊しない、あるいは環境保護に役立つという技術については積極的に支持していくという姿勢です。

 ですから例えばシェルという会社はかなり早くから風力発電などの持続可能なエネルギーをやってきました。そちらについては支持する活動を展開している一方で、石油の新規掘削についは抗議活動をするという状況が出てきます。これはグリーンピースの企業に対する考え方の一つであるということです。

 環境や持続可能な社会について敏感な市民の声を適確に受け止めて変化できる企業こそが、生き残れると言っても過言ではないでしょう。また、グリーンピースが企業の社会責任について評価するとき、それはいわゆる社会貢献活動ではなく、家電メーカーならその製品が持続可能なのかという“本業”について問題にしています。“本業”での勝負を期待します。

(2004年2月27〜28日東京都内にて)

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。