キュリシティ、サボってなかった。
火星を走行中の探査車キュリオシティの姿が、史上初めて軌道上から撮影されました。荒涼としたモノクロの風景のなかに、人類の存在を示す小さな黒いドットがぽつりと浮かんでいるようです。
2月28日、火星ではSol(ソル)4,466日目、地球ではうるう日に当たるこの日に、キュリオシティが疾走する姿を軌道上から初めて捕らえました。
写真には火星の地表に約320mにわたるタイヤ跡の先に、ちっちゃな黒いドットのようにキュリオシティが映っています。
NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」に搭載された高解像度カメラ「HiRISE」だからこそ可能な軌道上からの隠し撮りみたいなものなのだとか。
これまでにもHiRISEがキュリオシティを撮影したことはありましたが、移動の真っ最中を捕らえたのは今回が初めて。キュリオシティのログとタイムスタンプを照らし合わせたところ、21m移動している途中だったことが確認されました。
キュリオシティの最高速度は時速約160m。地球の乗り物に比べたら、ウサギとカメのカメどころじゃない遅さかもですが、ガソリンスタンドもない火星で、文句も言わずにコツコツ進んでいるキュリオシティは、タフで頼もしい限りです。
画像には、2月2日から11回の走行で進んできたキュリオシティのタイヤ跡が、火星の地表にしっかり刻まれているのを確認できます。
今、キュリオシティはゲディズ渓谷を出発して、次の科学調査のターゲットである岩だらけのエリアを目指しているところだそう。
目的地では、古代の地下水によって形成された可能性のある「ボックスワーク」と呼ばれる網目状の岩石構造が見つかるかもしれないとのこと。
一見するだけではわかりませんが、モノクロの画像に写っているキュリオシティは、急な斜面のふもとに位置しているそうです。画像では上から下へ向かっているので、逆に斜面を下っているような印象を受けます。
この後キュリオシティは、その急斜面を登って次なる目的地を目指して進んでいきます。キュリオシティが目的地に到着するまでにどれくらいかかるかは、今後の地形やナビゲーションソフトに加えて、NASAのエンジニアたちが定期的に更新する走行計画に左右されます。探査車を操縦するエンジニアチームが、科学者と協力して調査の優先順位を決めているとのこと。
興味深いのは、通常HiRISEカメラが撮影した画像は、中央部分がカラーになっているそうなのですが、今回はたまたまキュリオシティがモノクロのゾーンに位置しちゃってたみたいです。そんなわけで、残念ながら色鮮やかな火星の絶景を見ることは叶いませんでした。
それでも見知らぬ惑星の急な坂道をひたむきに登る小さなキュリオシティの孤独な旅路を240km上空から捉えた画像には、言葉を失うほどの力を感じます。
うん、きっとこの写真はモノクロでよかった。
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