天王星の謎がどんどん暴かれるのかも。
2025年4月7日、天王星が約400光年彼方にある恒星の前を通過し、一直線に配置されるとても貴重な瞬間が訪れ、この貴重な機会を逃すまいと、NASAの科学者総出で調査を行なったそう。
約1時間にわたって起きたこの現象は「恒星掩蔽(えんぺい)」と呼ばれるもの。天王星の大気がその恒星の光を屈折させ、最終的に完全に遮るまで、徐々に光を暗くしていったのだとか。
逆説的に聞こえるかもしれませんが、この過程こそが、未知な天王星の内部の観測を可能にしたといいます。
今回、北米各地の18の観測所にて、30名にもおよぶ天文学者がこの現象を観測。その後、この観測で得られたデータをもとに、研究者たちの手によって、時間とともに恒星の光がどのように変化したかを示す「光度曲線(light curve)」が作成されたそう。
この光度曲線から、温度や密度、気圧といった天王星の成層圏に関する情報を高度ごとに読み取ることができたのだとか。
NASAの惑星科学者、William Saunders氏はリリースでこのように語っています。
NASAは今回の天王星の観測結果を利用し、大気の周りのエネルギーがどのように動いているのか、そしてとてつもなく熱い上層部がなぜそれほどまでに高温になるのかを解明しようとしています。
他の研究者は天王星の環や、大気の乱流、そして太陽の周囲を周る軌道の正確な測定にもこのデータを活用する予定です。
太陽から20億マイル、約32億キロも離れているのにもかかわらず、天王星の上層大気は物理法則では説明できないほど高温になっています。今回の光度曲線によって、その謎も解くことができるかもしれません。
NASAがこれほど大規模かつ、さまざまな科学者と協力して天王星の掩蔽観測を行なえたのは、今回が初めてのことだそう。というのも、2024年11月にアジアにある望遠鏡で、天王星の恒星掩蔽を事前に捉え、リハーサルを実施できていたことが功を奏したのだとか。
このリハーサルのおかげで、掩蔽が起きるタイミングの精度を高められたとともに、天王星を捉える位置を約202キロ更新できたといいます。
一見わずかなズレに見えますが、地球の反対側にある太陽から32億キロも先の、しかも動き続ける星を複数の望遠鏡で正確に捉えるには、その“わずか”がとても大きなズレとなってしまうんです。
NASAは、2031年にも起きると予測されている次なる大きな掩蔽現象に向けて、すでに準備を始めているそう。しかも今回よりもさらに明るい恒星が通過するということで、航空機や宇宙空間からの観測も視野に入っているのだとか。
技術の進歩に合わせて、次々と解明されていく天王星の謎。今度はどんな謎が明かされることになるのか、今から楽しみです。
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