思った以上にピーナッツだった。
NASA(アメリカ航空宇宙局)の探査機「ルーシー」が2回目の小惑星フライバイに成功し、なんともおいしそうな見た目をした小惑星の撮影に成功しました。「ドナルドジョハンソン」と名付けられた小惑星は、まるでピーナッツのようなユニークな形をしています。
この細長い小惑星は、約1億5000万年前に存在していた巨大隕石(いんせき)がバラバラになった際に生まれた破片のひとつです。ルーシーは2025年4月20日、この小惑星に約960kmまで接近し、驚くほど鮮明なクローズアップ画像の撮影に成功しました。
NASAのルーシー・ミッションを担当するTom Statler氏は、ルーシーが撮影した画像について、次のように述べています。
「ドナルドジョハンソンの初期画像は、ルーシーの驚異的な探査能力をあらためて示しています。トロヤ群小惑星に到達した際には、太陽系の歴史に新たな窓を開く可能性は非常に大きいでしょう」
ドナルドジョハンソンという小惑星の名前は、1974年に有名な類人猿の化石「ルーシー」を発見した人類学者ドナルド・ジョハンソンに由来し、「ルーシー」の名はNASAの探査機に引き継がれています。
この小惑星、直径は約8kmと比較的小さいのですが、数カ月前に探査機が約7,000万km離れた場所から画像を撮影したときには、直径は約4kmと推定されていたので、思っていたよりも大きかったようです。
下の画像は、ルーシーが数カ月前にとらえたドナルドジョハンソンの姿です。このぼんやりした光が、トップ画像のめっちゃはっきりしたピーナッツになりました。
Image: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL今年の2月、ルーシーは木星の近くにあるトロヤ群小惑星の探査に向けた準備として、メインベルト(小惑星帯)に位置するこの小惑星を先行して観測しました。
目的地はあくまでトロヤ群ですが、ドナルドジョハンソンは、目的地へ向かう途中で立ち寄るのに都合の良い位置にあったようです。下のGIF動画もドナルドジョハンソンをとらえたものです。
Image: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL今回のフライバイは、NASAの研究者たちにとってルーシーのカラー画像、赤外分光計、熱赤外分光計、高解像度モノクロカメラL’LORRIの機能テストを行なう絶好の機会になったといいます。これらの機器は、ルーシーが2027年8月12日にトロヤ群小惑星エウリュバテスをフライバイする際に、本格的に活躍する予定です。
ルーシーのミッションはまだ始まったばかりですが、すでに太陽系のはるか昔の姿を垣間見せてくれています。
ルーシーはこれまでにも小惑星のフライバイを行なってきました。2023年11月には、直径わずか790mの小惑星ディンキネシュ(ルーシーは、発掘されたエチオピアでは「ディンキネシュ」と呼ばれています)をフライバイしていますが、これは探査機が接触連星を観測した初めての事例だったそうです。
太陽系にはまだまだ正体不明の天体が数多く存在しています。トロヤ群の調査も含め、ルーシーは旅路の途中から、私たちに多くの「観測史上初」を届けてくれそうです。