スマホやパソコンが身近になりすぎた現代、目の疲れや視力低下に悩む人は多いもの。そんな中、「何歳からでも視力はよくなる」と話すのは、『最新の視力研究で導き出した 何歳からでも目がよくなる方法』(アスコム/眼科医・松岡俊行 監修)の著者であり、視力2.0を誇る“日本一目のいい博士”平賀広貴さん。今回は平賀さんに、今日から実践できる視力回復を期待できるケア方法について聞きました。
「視力は年齢に関係なく回復しますよ」と語るのは、自身も裸眼で視力2.0を維持する平賀広貴さん。コンタクトやメガネが手放せない人にとって、その言葉はまさに目からウロコ。でもなぜ、私たちの視力は低下してしまうのでしょうか。
「視力の悪い人に特に多いのが、“軸性近視”というタイプ。これは眼球が前後に伸びてしまうことで、ピントが合いにくくなる状態になっているんです。パソコンやスマホを長時間見続ける現代人に多く、近年では子どもの7割が近視ともいわれています」
子どもの頃に「テレビやゲームばかりしてると、目が悪くなるよ」と、親に注意されてきた人も多いはず。実は、あれは半分正解、半分誤解なのだそう。
「テレビやゲーム自体が悪いのではなく、問題なのは“屋内で長時間、近くを見る”という行動です。置き型のテレビは見る距離があるのでまだマシなんです。本当に視力に悪影響なのは、スマホやタブレットを顔の近くでずっと見ること。しかも屋内の光は外に比べて圧倒的に暗い。外の光は10万ルクス、室内は500ルクス程度。私たちの目は本来、外で狩りをする生活に適応してきたので、光が足りないと機能が低下しやすいんです」
そして、「一度下がった視力は戻らない」と思われがちですが、実は生活習慣を変えることで、何歳からでも視力が回復できると平賀さん。
「視力低下の多くは“目の使いすぎ”や“姿勢の悪さ”など、生活の中に原因があるんです。遺伝要素もゼロではありませんが、生活習慣の影響の方がはるかに大きい。だから、生活を変えれば視力を回復させられるんです。実際に40代女性の方が生活習慣を改善し、わずか一ヶ月で裸眼視力が0.02から0.2に回復した例もあるんですよ」
平賀さんいわく、視力を回復するために大切なのは、「血流」「食事」「休息」という生活の基本を整えることなのだそう。
「特にスマホやパソコンなどの“近業”が多い現代人は、目を酷使しがちです。遠くを見たり、目を閉じたり、軽くマッサージをしたりして、定期的に目の緊張をほぐしましょう」
「脳疲労も視力低下の要因。人は脳に入る情報を整理しきれないと、目も機能低下を起こしてしまうんです。入ってくる情報量が多くなりがちなスマホやパソコンの見すぎを回避するため、紙に書く習慣をつけるのもいいと思います」
「常に眼鏡やコンタクトをつけっぱなしだと、ピントが固定されて視力が改善しにくくなります。特にメガネの度数が-3.0未満の軽度な近視の人は、近くを見るときは眼鏡を外すクセをつけると、近視が進行しにくいし、改善してくる人もいます。」
「全身の筋肉量を増やし、血流を良くすることも視力回復には大変効果的です。太陽の光をしっかりと浴びつつ、自然と遠くの景色を見ることができる屋外のジョギングもとても良いですね」
「血流改善に大切なのが食事。特におすすめなのが、普段の食事に取り入れやすいニンジンとキャベツです。ニンジンに含まれるビタミンAは、光を感じる網膜機能をサポートしてくれます。また、キャベツはビタミンCも豊富で、目の中にある水晶体の健康維持にも役立ちます。手に入りにくい食べ物は続きませんよね」
細かい文字を読みにくい、手元が見づらい……。40代に差し掛かると気になりはじめる老眼。これは目の水晶体が硬くなることが原因だと平賀さん。
「目のピント調節機能を担う目の奥にある水晶体。この弾力性が加齢によって失われるため、ピントをうまく合わせられず、手元や細かい文字がぼやけて見えます。この水晶体を硬くする一因となるのが紫外線です。そのため、日中に外出する際は、サングラスをかけてUVケアをするといいですよ。おしゃれなものを選んで“かけたくなる習慣づくり”をするのがおすすめです」
また、食事に気をつけたり、運動を取り入れたりと、生活を見直すことも効果的だそう。
「特に女性は筋肉量が少ないため、老眼を感じやすい傾向にあります。運動や筋トレをして体を鍛えることが、目の健康にもつながります。また、老眼の進行を遅らせるビタミンCを多く含むピーマンやブロッコリー、柑橘類などを意識的に摂取することも効果的です」
平賀さんが最後に教えてくれたのは、「近視=悪いことではない」ということと、意識の転換の必要性。
「現代人に多い近視は、近くを見ることに特化した視覚特性を持っているということ。デスクワークや細かい作業には向いているので、“短所”じゃなく“強み”として考えていいんですよ」
そして、目の疲れにも気づくことも大事だと平賀さんは言います。
「夕方に目がかすむのは“疲れてますよ”という体からのサイン。自分の生活リズムや目の使い方を見直すきっかけにして、無理をしないワークスタイルを整えていくと、自然と視力も安定してくるはずです」
今日からできる小さな工夫を少しずつ。日々の目を労るやさしい習慣が、私たちの暮らし全体を整え、視力の回復に導いてくれるかもしれません。
平賀広貴(ひらが・ひろき)さん
裸眼視力2.0の日本一目がいい博士。株式会社ブライトアイ代表。1980年生まれ。2008年東北大学理学研究科化学専攻博士課程修了。株式会社東芝研究開発センターを経て2023年に独立。12歳から科学者を志し勉学に励むも、なぜ自分だけ視力が落ちないのか不思議に思っていた。特許76件、論文15件、第25回井上研究奨励賞や東芝イノベーションアワードなどの受賞13件。
本業の傍ら、人間の視覚や「見る」とは何かを独自に探求し、目と脳、身体をアップデートし続け、「裸眼視力2.0」をキープしている。JAXA宇宙飛行士候補者選抜試験では、その視力の良さに検査員に驚かれた。現在はこの知見を活かし、脳と健康の指導を行っている。長男と次男も視力1.5以上をキープ中。
文=船橋麻貴
写真=aflo(イメージマート)