昨年、難関国家資格で知られるファイナンシャルプランナー1級を取得したことで話題となったお笑いコンビ・サバンナの八木真澄さん。
物価高、円安などが生活へ直撃している現在ですが、八木さんは「お金の仕組みを知っているか知らんかで、生活はめちゃくちゃ変わります」と断言します。そんな八木さんへファイナンシャルプランナーの資格を獲得した経緯や、「お金」の価値観について伺いました。
――ファイナンシャルプランナーの資格を取ろうと思ったきっかけを教えてください。
全国で講演会をやりたかったというのが1つの理由です。3年前にテレビのレギュラーがなくなって、営業を中心に仕事をしていきたいなと思っていろいろと考えていた時に、ファイナンシャルプランナー1級の資格を持っている芸人はいないなと。これ、取れたら話題にもなるし、講演会もできて収入になるかなと思ったんですよね。
お金で困っている芸人を救いたいという思いも、もちろんありました。芸人って、お金の知識がない人がめっちゃ多いんですよ。僕は勉強する前から結構詳しかったんですけど、資格を持ってないとアドバイスしても信用してもらえなくて。だったら資格を取って、説得力をもってアドバイスできたらという思いもありました。
――若い頃から勉強されていた?
30歳から日経新聞を読んだり、お金に関する本を読んだりしていました。元から、経済的に苦労したくないという思いがあったんです。単純な話、お金の仕組みを知ってるか知らんかで、生活ってめちゃくちゃ変わるんですよ。例えば「小規模企業共済」っていう個人で積み立てられる制度があるんですけど、やってない芸人ってたくさんいるんです。「貯金してるから大丈夫」ってみんな言いますけど、税金が安くなるのにやってないって、僕からすると意味がわからなくて。
――貯金していたとしても、税金の対策をしていなかったら知らない分、損していることにはなりますもんね。八木さんが若手だった頃は、お金に苦労している芸人さんも今よりもっと多かったと思います。
僕はその頃も貯金はありましたし、徹底してお金の管理をしていました。当時、心斎橋筋2丁目劇場っていう若手の劇場に出ていたんですけど、みんな、金ない金ないって言っていて。そら、そうなりますよね。昼飯を外に食べに行ったら、お金はかかりますからね。だから僕は1年目から家で弁当とお茶を作って、劇場に持って行ってました。
――お茶は相方の高橋茂雄さんが若手の頃、よく話されていたあの“八木茶”ですね。
そうです(笑)。ティーパックで3回まで取ってたから、芸人仲間みんなに薄い薄いとツッコまれて、八木茶と呼ばれてました。
お弁当も自分で作れば、3食で500円くらいしかかからない。例えばチャーハンなんてめっちゃ安く作れるじゃないですか。カレーもそう。作り置きしておけば、1食100円くらいなんですよ。移動も電車代がもったいないから、全部の現場へ原付で行っていました。
――税金などの制度だけでなく、日々の生活を工夫することでお金の無駄使いを防ぐということですね。
たとえばディズニーランドに行くとき、最初に予算を考えていれば「入場料が〇〇円で、食事にかかるお金は〇〇円。ということは、お土産は何個買えるな」って事前に計画して計算しているから満足して帰れるじゃないですか。けど、事前に計画を立てない人は高いレストランに行った後、お土産が欲しくなったときにお金が足りないことに気付く。もしくはお金がないのにさらにお土産も買ってしまう。生活も同じです。人生でいくらかかるのかを知らないでお金を使うのは、ディズニーランドで残りのお金がないのにたくさんお土産を買ってしまっているのと一緒なんです。
こう考えると、計画性がないって、めちゃくちゃ怖いことでしょう? そういう人のために人生設計の全てを見るのがファイナンシャルプランナーの役割なんです。
――具体的に、八木さんが実践しているお金の工夫はありますか?
スーパーに行った時は食品のポテンシャルを考えながら買い物をします。お揚げさんは値段のわりにいろんな料理に活用できるから買っていい。カレーのルーとか豆腐もそう。あと、卵、もやし、ミンチ(ひき肉)……。費用対効果のいい食材を使って、味を変えながら料理するんです。
散髪もそう。僕、奥さんに髪を切ってもらってるんですよ。もちろん奥さんはプロじゃないんですが、美容師さんの修行が3年くらいやと考えると、同じ年月、僕の髪で練習すればうまなるんちゃうかなと思って(笑)。もう4〜5年切ってもらってますから、うまいですよ!
寿司も、高い店には行きません。テイクアウトのお寿司を買ってきて、家できれいなお皿に並べるんです。で、ええ箸を用意して、お琴のBGMをかけて、メニューは高級店を真似して手書きで書く。これ、1500円くらいでできますよ。
――お子さんが、どこかに遊びに行きたいと言った時はどうしているんですか?
「ひらかたパーク」の年パスを買っています。行くからには徹底的に楽しむと決めて通い詰めたら、子ども達がお化け屋敷を怖がらなくなって、3万点以上で景品がもらえる高難易度のシューティングゲームも、我が家は全員クリアしました。挙句、子どもが「パパ、もう嫌や。ひらパー行くの」って言い出しました(笑)。
――それくらい遊びつくしていると。お金をかけない生活の楽しみをいろいろと実践されていますが、八木さんの真似をするのはなかなか大変そうです……。
25歳くらいの頃、バイトをしていたカラオケボックスの店長が言うてたんです。
「お好み焼きな? どうやってうまいこと作るか知ってるか? 高い豚(肉)を入れたからってうまなるわけじゃない。お好み焼きに向いてるのは安い豚。ソテーで食う豚とお好み焼きに入れて食う豚は違うんや」って。
これ、名言だと思ってて。なんでも用途に合わせて選択すれば、節約を節約と思わずに生活することができるんです。
――たしかにスーパーでの買い物も散髪もお寿司も、節制の術ではあるものの、八木さんの生活の満足度はとても高そうです。
お金の正体って言うなれば、サービスとかモノをゲットするために必要なものじゃないですか。ということは、お金という存在をなるべく経由せずに何ができるかを考える。そのために「自分にとって何が大切なのか」明確に基準を持つことができたら、自然と支出は減りますよ。
僕の場合、趣味はトレーニングとランニングなんですけど、両方そこまでお金がかからない。絵を描くのも好きなんですけど、それもペンと紙があればできる。大きなお金はほとんど必要ないです。
――たしかにブランドもののトレーニングウェアや高い画材に興味がなければお金はかかりませんね。八木さんの生き方の哲学に触れたような気がします。
『年収300万円で心の大富豪』という本ではそのあたりの哲学をもっと語ってます。3月に出した『FP1級取得! サバンナ八木流 お金のガチを教えます』には、僕が今伝えたいこと全部、詰め込みました。今回はリアルに役立つことや節約にまつわるテクニックもいろいろと載せています。ひとつ、ヤバいやつがあるんです。それは百貨店で安く買う方法。これは広く知られたら絶対に仕組みが変わってしまうと思う。今のうちに読んで節約の役に立ててもらえたらと思います。
八木真澄(やぎ・ますみ)
1974年8月4日生まれ。京都府出身。立命館大学産業社会学部卒業。94年に学生時代の後輩・高橋茂雄とお笑いコンビ・サバンナを結成。2023年にAFP(アフィリエイテッド ファイナンシャルプランナー)、2024年にFP1級(ファイナンシャル・プランニング技能士1級)、一種外務員試験に合格。
FP1級取得!サバンナ八木流 お金のガチを教えます
著 サバンナ・八木真澄、ほんださん(本多遼太朗)
定価 1,760円(税込)
KADOKAWA
年収300万円で心の大富豪
著 サバンナ・八木真澄
定価 1,760円
KADOKAWA
文=高本亜紀
撮影=鈴木七絵