【鎌倉イタリアン】シェフたちの止まり木、鎌倉駅西口の“小路”にあるバールで春らしいパスタやブルスケッタと冷えた白ワインを

  • 2025年4月11日
  • CREA WEB

春の鎌倉へ。

 鎌倉で旦那さんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。

 忙しい毎日のなかで、ほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、もしくはおうちで目一杯働いて、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に訊いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。

 ふっと時間が空いたとき、ひとりでふらりと出かけた鎌倉で、女性ひとりでお酒を楽しむなら? 今回は鎌倉で食べる、ひとりに優しいイタリアンをご紹介します。まずは女性店主が営む御成の小さなお店へ。


御成にある“人間交差点”的なバ−ル


カウンターの向こうはコックピットのような小さな厨房。

 春爛漫。暖かくなってきたので久しぶりにひとり飲みに出かけてきました。鎌倉って、なぜかしらイタリアンのお店がとっても多い街なんです。今回は、そんな鎌倉のイタリアでひとり飲みしてきました。

 どこの街にも人間交差点的なお店ってあるんじゃないでしょうか!? 鎌倉駅からすぐの小路を入ったところにある「Vicolo(ヴィコロ)」は、たいてい近所の誰かがカウンターでお茶しながら、おしゃべりを楽しんでいるところに出くわす、そんなところ。

 隠れ家のようなここにお店をオープンして9年。以前は鎌倉駅の東口にあった、古い小屋で立ち飲みのお店をしていました。その当時、オープンは昼のみ。なんと夜は別のイタリアンのお店で働き(家賃を稼がないと〜! と思っていたのだそうです)、昼は自分のお店を営業していたというわけ。


オーナーシェフの真智子さん。いつもこの笑顔で迎えてくれます。

 そんな頑張り屋さんのオーナーシェフの村木真智子さんは、イタリアのボローニャで7年間働いたのち、帰国。その後、友人のお店を手伝う傍ら、自らのお店もやりながらの数年を過ごし、現在の鎌倉駅西口から徒歩3分のお店をオープンするに至ります。そもそも、イタリアに行ったきっかけは大学を卒業後に、北海道の牧場内のジェラート屋さんで働いていたときにイタリアに研修に行き、水が合ったというのか、そんな感じでイタリアへ渡ったのだそう。

 実は今まで、なんとなくは知っていたけれど、そこまで突っ込んで話すことがなかった真智子さんの人生を改めて伺うと「人生何があるかわからないですよねー」と、真智子さん。わりと壮大な日々を過ごしてきたにもかかわらず、他人事のようにのんびりとした返事にガクッとなりますが、それが真智子さんなのです。


ファンの多い真智子さんのパスタ。「ホタルイカと菜の花のオレキエッテ」1,400円。盛りの良さも最高!

 誰にでも優しく、ゆるっとした返しでみんなを和ませてくれる人。それが真智子さん。聞いてるのか、聞いてないのかわからないくらいの立ち位置でいながら、肝心なときには「そうそう」とナイス合いの手! な人。

 だからなのか、ここへは、同業者が朝の市場での仕入れ帰りやアイドルタイムにお茶しに来るということがよくあり、私も何度もその現場に遭遇してきました。皆、何を話しているのかわからないけれど、クスクスと笑って、エスプレッソをクイッと飲んでは数分で「そんじゃ、また!」「今日も頑張ってね」てな感じに去っていく。

 そんな様子を横目に私はまぁまぁ長っちりで飲んできました。

ちょっと一杯にも、打ち合わせにも


つまみにすることもある、季節のポタージュ。今日は「新玉ねぎのポタージュ」550円。

 Vicoloは、レストランというよりは、バールというのが正しい感じ。イタリア食材も充実しているので、買い物がてら飲みに来る人もいるし、お茶しに来る人もいれば、軽く一杯の人もいる。はたまた、ブルスケッタや季節のスープをいただきつつ、軽くイタリアビールやワインを飲んでいく人も。常連さんばかりが行き来しているようですが、実は観光客の方も一人でふらっと来店しているのをよく見かけます。


定番の「アーティチョークとリコッタチーズのブルスケッタ」(750円)はワインのいいお供。合わせたワインはサルデーニャ島の白(グラス800円)。

 私はどちらかというと、長居する派。たまに2階で仕事をしながら、気付け的に白ワインを一杯。東京からいらっしゃる担当編集さんともここでの待ち合わせが多く、ランチどきならパスタとともにまた白ワインを一杯。パスタやおいしいオリーブオイルを調達しに来るときは、サクッとカウンターで一杯飲むという場合も。オリーブオイルが入荷したときにはオリーブオイルの味見をさせてもらいながらワインを飲んだりもしてきました。


2階のテーブル席。

 ここは、おいしくて楽しい場所。時折、湘南界隈の方が2階で味噌仕込みの会をしたり、ストレッチの会をしていたり、ときには画家の方の展示も。お店が、店名の“Vicolo”ではなくて“真智子の店”と通称されるのがよーくわかる、皆に愛される真智子さん。たとえ何も話さなくても、何も聞かずにそっとしておいてくれる感じもまたいいのです。


ここ最近の出来事をあれやこれやとしつこく話す私を優しく受け止めてくれる真智子さん。

 というわけで、買い物帰りに、打ち合わせのときに、ワークショップのときに、とついつい小路に足を踏み入れてしまう私。ちなみにVicoloとはイタリア語で“小路”のこと。今さらながら伺ってなるほど〜となりました。


しっとりした生地とふわっと香る柑橘の香りが最高の「オレンジのパウンドケーキ」。450円。

「人生って流れるように決まっていきますよね。この物件にたどり着いたのも友人を介してたまたまだったし」と、日々をゆるやかに受け止める真智子さん。そういうあなただからこそ、人は流れ流れてここに集まり、ぐるーっと何周もしながら皆がいい流れをつくっているんでしょうね〜。私も末長く、その流れに乗り、ぐるぐるさせてください。

 鎌倉にひとりでぶらっとおいでになったあなたもぜひ、この流れにのりにいらしてくださいな。きっとカウンターで横になった誰かが話しかけてくれると思います。

Vicolo(ヴィコロ)


鎌倉駅西口から徒歩3分。小路を入ってすぐです。

所在地 神奈川県鎌倉市御成町10-7
電話番号 0467-95-9049
営業時間 10:00〜21:00
定休日 月曜(祝日の場合は火曜)
Instagram @vicolo_kamakura

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

文=赤澤かおり
写真=榎本麻美

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