さあ、韓国工芸の美しい世界へ!【おすすめの現地ショップ4選】箸とスプーンは「福と健康」、花瓶は「平和と安定」いま韓国で買うべき民芸品たち

  • 2025年5月8日
  • CREA WEB

 好評発売中の「CREA」2025年春号では、韓国の伝統を再解釈し、モダンにアップデートした食や韓屋宿をはじめ、癒しの「済州島」やカルチャーの街「坡州」まで、2025年の韓国をたっぷりと取材しました。グルメ・カルチャー・ファッション・コスメまで、全108ページの大ボリュームでお届けする本誌から一部を抜粋してご紹介。


 新しいトレンドが生まれては消え、常に目まぐるしい進化の中にある韓国。

 しかしいま、自国の伝統や文化を再評価しようという人々が現れはじめ、韓国がまた新しい表情を見せています。さあ、韓国工芸の美しい世界へ。


ミニマルな線と形が織りなす多彩な白の世界へ

◆【西村】日常餘百(イルサンヨベッ/일상여백)


巨匠の大壺から、新進作家の漆器やガラス器まで取り揃える。

 店内に足を踏み入れた途端、ミニマルで有機的な線と形が織りなす、多彩な白の世界に包まれる。


李朝時代に祭祀で用いられた伝統の形。高台皿W88,000〜。

「日常・余白美・百年・百品の意味を込めて“日常餘百”と名付けました」

 こう語るのは、大学で陶芸を学んだ後アメリカに渡り、子育ての傍ら韓国工芸の蒐集を始めたというハン・シニョンさん。


上は平皿に、下は深皿にもなる。青い釉薬の繊細なニュアンスが美しい高台皿W600,000〜。

「こちらは伝統の高台皿をモチーフにした器ですが、実は上と下に分かれて、2つのお皿としても使えます。こんな風に伝統を再解釈して、現代の生活に馴染むように工夫された作品が好きです」


ガムコッさん作の湯呑W30,000、イ・ゴンムさん作ウッドトレイW160,000〜。

 戦争や侵略の影響もあり、民藝に関する記録は決して多くないという。しかしいま、その少ない資料を辿って、伝統的な暮らしに関心を寄せる若手作家が増えているのだとか。


シニョンさんの私物コレクション。

「音楽や文学が世界に羽ばたいている。次はKクラフトの番ですね」

日常餘百(イルサンヨベッ/일상여백)


日常餘百(イルサンヨベッ/일상여백)。

所在地 ソウル特別市鍾路区紫霞門路17ギル12-15(서울특별시 종로구 자하문로 17길 12-15)
電話番号 02-743-7001
営業時間 10:00〜18:00
定休日 月曜
Instagram @ilsangyeoback

目に見える華やかさよりも意味を大切にする文化

◆【清潭洞】好好堂(ホホダン/호호당)


大学で伝統の食文化を学び、好好堂を開いたジョンウンさん。

「15年前は、ポジャギをつくれる工場がほとんどなくなっていて、それなら自分でつくりたいなと思ったんです」

 高級エリア清潭洞に店を構える好好堂。店主のヤン・ジョンウンさんはドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』の衣装も手がけた韓服職人の家に育ち、幼いころから伝統への関心が強かった。


婚礼に用いる巾着。色にそれぞれ意味があり、五穀を入れて新郎が新婦に贈る。

「目に見える華やかさよりも意味を大切にする文化。色、柄、すべてに意味があります」


購入品はポジャギで丁寧に包んでくれる(有料)。

 近年は、DiorやNONFICTIONなど国内外の有名ブランドからもポジャギのオーダーが相次いでいる。

「他国の文化に憧れる風潮が強い時期もありましたが、少しずつ韓国的な文化が見直されはじめているのを感じています」


『イカゲーム』で話題の伝統遊び・コンギ。好好堂伝統遊びセットW118,000。

 その言葉通り、店内は、孫の誕生日祝いや友人の結婚祝いを求める人々で賑わっていた。

好好堂(ホホダン/호호당)


好好堂(ホホダン/호호당)。

所在地 ソウル特別市江南区狎鴎亭路72ギル17 2F(서울특별시 강남구 압구정로 72길 17 2F)
電話番号 02-543-0430
営業時間 10:00〜19:00
定休日 月曜
Instagram @hohodang_official

儒教が生んだ節制の価値観が現代の余白美に繋がっている

◆【桂洞】NR CERAMICS(エナル セラミックス/엔알세라믹스)


中央上はヌリさんが韓紙でつくったランプ(非売品)。

 その形は、風のようで、葉のようで、波のようでもある。

 NR CERAMICSは陶芸家のイ・ヌリさんが、2018年に立ち上げたライフスタイルブランド。洗練された店内には、オリジナルの器のほか、彼女がセレクトしたポルトガルのカトラリーやジュエリー、アフリカの古家具などが並ぶ。


ヌリさん自ら制作したシリーズ「ABSTRACTION」W100,000〜。

「箸とスプーンは福と健康、花瓶は平和と安定という意味があります。韓国ではよく贈りものとしても使われますよ」


マットな質感で手のひらにしっくり馴染む。カップSサイズW20,000。

 日常の中でアートを感じてほしいと、合理的な価格設定を実現したのも、ヌリさんのこだわりだ。


棚上中央の白い壺は早朝の霧をイメージ。ラウンドベースL・フォグW300,000。

「韓国らしい美といえば、李朝白磁の満月壺が思い浮かびます。儒教的な節制の価値観が色濃く反映された作品です。少なからず、私もそうした東洋の美意識には影響を受けていると思います」

NR CERAMICS(エナル セラミックス/엔알세라믹스)


NR CERAMICS(エナル セラミックス/엔알세라믹스)。

所在地 ソウル特別市鍾路区桂洞ギル99-1 2F(서울특별시 종로구 계동길 99-1 2F)
電話番号 070-4907-7755
営業時間 13:00〜18:30
定休日 月〜水曜
Instagram @nrceramicsofficial

日本作家と韓国作家それぞれの美意識が共鳴する

◆【漢南洞】WOL 漢南(ウォル ハンナム/월 한남)


黒を基調とした店内。

 WORK OF LIFE、また韓国語で“月”の意味が込められた「WOL」。オーナーのチョ・ソンリムさんが実際に使ってよかったものだけを集めたショップで、2023年にオープンした。


店員のイ・ジヘさん。

「6年前、日本の新潟へ旅行に行った際、燕三条の包丁に感動したことがきっかけで、工芸に関心を持つようになりました。日本と韓国の美意識には共通する部分がとても多いと感じています」


漆を巧みに使う鍛金作家パク・ミギョンさん作の漆箸W48,000。1本1本異なる色とパターンを持ち、好きな組み合わせを選ぶのも楽しい。

中神牧子さん作のワイングラス(左)W125,000、カクテルグラス(右)W160,000。

 そんなソンリムさんの考えが滲むように、静謐な空間には、韓国作家と日本作家の作品が混じりあい、心地よい調和を奏でている。


埼玉を拠点に活動するキム・ドンヒさん作のガラスのプレートW120,000。

 三清洞にはWOLのギャラリーもあり、ソンリムさんが注目する作家の展示を不定期で開催。韓屋を改装した美しい空間で、こちらも旅程が合えばぜひ足を運びたい。

WOL 漢南(ウォル ハンナム/월 한남)


WOL 漢南(ウォル ハンナム/월 한남)。

所在地 ソウル特別市龍山区梨泰院54ギル74 3F(서울특별시 용산구 이태원로 54길 74 3F)
電話番号 0507-1480-8089
営業時間 12:00〜19:00
定休日 日〜水曜
Instagram @wol.co.kr


 ご紹介したお店を含む、ソウル&済州島の観光スポットがまるわかりのGoogle Mapはこちら! 続きは「CREA」2025年春号でお読みいただけます。

文=CREA編集部
写真=岡本佳樹
コーディネート=ソ・スミン、ソン・シネ(TANO INTERNATIONAL)

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