雑誌や単行本、テレビなどで、簡単でおいしくできる家庭料理のレシピを提案し続けている料理家の飛田和緒さん。家族のために、訪れてくる友人たちのために、と日々もまた、本作りをするときと同じように、気づけばいつも台所に立ち、誰かのためにごはん作りをしているそう。
新刊『台所の相談室』では全国から寄せられた料理の“お悩み”に答えていますが、ここでは特別にCREA WEB編集部からのご相談にも答えてもらいました。新生活を始めた方にもおすすめのコツが満載です!
今回は家計にやさしく、食卓がおしゃれになるお話です。
――輸入食材店やワゴンセールでびっくりするほど安いトマト缶を見つけると買ってしまうのですが、おしゃれな料理を作らなくちゃ! と気負ってしまって使いこなせていません。どうしたらおいしく食べられますか?
たしかに、家にあると便利なもののひとつですね。私もついつい手が伸びます。何もないときにもこれさえあれば、いろいろ助けになりますので、ストックしておくのはいいと思います。
私は時間があるときにトマト缶を使ってトマトソースを作っておくようにしています。作り方はいたってシンプル。炒めたニンニクとトマト缶をひたすら煮るのみです。
トマト缶にはホールとダイスの2種類がありますが、どちらを使ってもOK。特に決まりはありません。味はおんなじです。
まず、ニンニクをオリーブオイルで炒めてベースにします。いい香りが立ちのぼります。オイルはちょっと多いと思うかもしれませんが、これもおいしさのため。
あとはコトコト煮詰めるだけ! 半分くらいになるまでなので、ぐっと煮詰まります。
――びっくりするくらい簡単ですね。煮詰めたトマトの味が濃い!
時間があるときに作って、何もないときに使おうと思うんですが、意外と便利なのですぐ使い切ってしまうことがほとんどです。
冷凍保存もできますが、なるべく早めに使うようにしてください。煮詰めることで味が濃くなり、コクが出ます。
――パスタソースとか、お肉や魚にかけてもおいしそうですね。
パスタにするときはきのこ類やチーズを加えても。わが家では、娘がインスタントラーメンに加えたり、夏のそうめん時期にはめんつゆに豆乳とトマトソースを加えてつけ麺のつけ汁にするのが、ここ数年の私のお気に入りです。
今回はにんにくを加えましたが、何も加えず、そのままを煮詰めてもおいしいですよ。その場合、味噌汁に加えたり、お米を炊くときに加えてトマトご飯にしたり、和風のアレンジも広がります。
――新年度の新たな台所仕事はこんなことから始めてみるがいいかもしれませんね! 簡単、かつ役に立つストックレシピ! 皆さんもぜひ作ってみてください。
・ニンニク:1片
・オリーブオイル:大さじ3〜4
・トマト缶:2個(800g)
・塩:ひとつまみ
(1)にんにくはみじん切りにする。
(2)厚手の鍋に(1)とオリーブオイルを入れ、火にかける。にんにくがこんがりしていい香りがしてきたらいったん火を止める。
(3)油の温度が落ち着いたらトマト缶を加える。再びに火にかけながら木べらやフォークなどでつぶし、煮立ったらふたを少し開けてし、10分ほど煮る。途中、かき混ぜ、同様に少し開けてふたをしてさらに10分煮る。これを繰り返し、合計30分ほど煮る。
(4)仕上げに塩を加えて混ぜる。
飛田和緒(ひだ・かずを)
料理家。東京都生まれ。神奈川県葉山で海と山に囲まれ、家族とともにのんびり暮らしている。地元の野菜や魚など、地域の産物と季節のものをこよなく愛し、おいしくいただくことに専念している。日々の暮らしが楽しくおいしくなる常備菜、保存食作りが得意。ライフワークともいえるみそ作りは年々熱が入っている。主な著書に『みその本』(KADOKAWA)、『ごはんできたよ!今日、何作ろう!?何食べる!?ある日の献立、つまみとおかずとごちそう、〆も一五〇品』(朝日新聞出版)、『お餅の便利帖』(東京書籍)などがある。
台所の相談室
定価 1,870円(税込)
KADOKAWA
文=赤澤かおり
撮影=榎本麻美