
富士山のふもとに広がる山梨県富士吉田市。最近ではドラマのロケ地として話題となり、富士山が道路正面に見える商店街がある町です。その一角にオープンした人気店「富士吉田金精軒 富士茶庵」は、信玄餅が有名な「金精軒」の姉妹店。富士山を見渡せるカフェも併設し、朝食のおにぎりセットや信玄餅のスイーツが味わえますよ。6月からは限定の水信玄餅も登場。話題のスポットへ出かけてみませんか。
国道139号上にある富士吉田市の「本町通り」は、その大きさに驚くほどの富士山が望めるエリア。道路の両側にはレトロな雰囲気の商店街があります。「富士吉田金精軒 富士茶庵」は、その通り沿いにたたずむ和モダンなカフェ&ショップです。
「富士吉田金精軒 富士茶庵」は、「信玄餅」や「大吟醸粕てら」で知られる老舗和菓子店「金精軒」の姉妹店として、2023年4月にオープン。以前は「井出商店」の名称で、お米屋さんを営んでました。1883(明治16)年の創業以来、機織りの町ならではの糸の卸問屋や、うどんや小麦粉の卸業、お米店など、時代に合わせた地元密着の仕事をしてきたそう。
「井出商店」の井出社長のお母さまの実家が「金精軒」で、「井出商店」時代も信玄餅を卸していた縁があり、カフェを造るにあたり姉妹店「富士吉田金精軒 富士茶庵」として建物も建て替え、新たにスタートを切ったそうです。スタイリッシュな建物は「金精軒」と同じ設計士の方が担当。1階がショップとテラス席、2階がカフェになっています。
「2階は富士山が見えるカフェにしたかったんです。カフェから眺められるのは、市内でここだけ。カフェは地域密着が目的で、地域の人に利用してもらおうと、朝から営業を始めました。今は各地から、海外からもお客さまが来ています」と店長の井出絢子さん。
富士山に向かって、大きなパノラマ窓が造られています。「カウンター席がおすすめですよ」と井出さん。窓に向かって造られたカウンターは、富士山を独り占めしているような贅沢な席です。
「富士茶庵」ならではのメニューは、朝食タイムにしか味わえないおにぎりの朝食です。お米屋さん時代に取引があった魚沼産コシヒカリを使い、井出さんが握る大きめのおにぎりは、ほろほろと食べられるように、ふっくら握っているそう。具材は焼鮭、梅、卵黄そぼろ、昆布、ツナマヨの5種類から2つ選べます。卵黄は地元「小林鶏卵」のこだわりの卵を使用。醤油とみりんで味付けしているので濃厚な味わいです。中にはそぼろがたっぷり。のりは井出さんの地元、東京都大田区の寿司海苔問屋「田庄」の上質なのりを使っています。
おすすめのセットは「おにとん御膳」。おにぎり2個、お新香、信玄餅ヨーグルト、珈琲か黒豆茶、それにおにとんの“とん”にあたる豚汁がつきます。豚汁は地元製造の鰹節でだしを取り、具もたくさん入った一杯。おにぎりとの組み合わせにホッとします。
朝食の「信玄餅ヨーグルト」は単品でも人気のあるデザート。モチモチした金精軒の「信玄餅」の甘みとヨーグルトの酸味のバランスがいい一品です。トッピングのグラノーラは、河口湖でヴィーガン系スイーツを製造する「mayo菓子店 タイヨウtoツキ」の抹茶玄米グラノーラを使用。サクサクした食感がアクセントになり、グルテンフリーで体にもやさしいです。
カフェ限定スイーツとしてもう1品おすすめなのが、信玄餅と香ばしいきな粉を使った「信玄アイス」。きな粉をまぶした「甲州信玄ラスク」、抹茶玄米グラノーラ、バニラアイス、黒蜜を添え、オリジナルスイーツに仕上げています。毎朝、北海道産黒豆を煮出して淹れる無添加の「焙煎黒豆茶」と一緒にどうぞ。黒豆のさっぱりした甘みがいいですよ。
山梨県の銘菓として知られる「信玄餅」。金精軒には大きく3タイプの信玄餅があります。黒蜜ときな粉をまぶしたお餅を風呂敷風のパッケージで包んだ、モチモチの「信玄餅」が定番。
「極上生信玄餅」は「信玄餅」より大きなお餅です。山梨県のブランドもち米「梨北米」を使った生信玄餅は、砂糖を通常より減らしているため、素材のおいしさも感じられ、やわらかで、つるんとした食感。きな粉は香り高い山梨県北杜市産大豆を使っています。濃厚な黒蜜は別包装なので、まずはお餅から味わってみるのもおすすめです。
6~9月の金・土・日曜、祝日にしか味わえないのが夏季限定の「水信玄餅」。名水と少量の寒天で作る水菓子で、透明感あふれる信玄餅です。ぷるんとした食感で、ほどよいやわらかさ。口の中に入れるとすぐになくなってしまいます。消費期限は30分だとか。
「富士茶庵」の店内でも作られていて、こちらは富士山から湧き出た富士吉田のおいしいお水で作っています。金精軒の台ヶ原店と韮崎店とは水が違うので、食べ比べてみるのもいいですよ。人気商品なので、予約がおすすめです。
1階のショップには金精軒定番の銘菓やどら焼きのほか、大福などの生菓子がずらり。「大吟醸粕てら」も人気のお菓子です。山梨県内にある「七賢」ほか4軒の酒蔵が造る大吟醸の酒粕を使用したカステラは、卵白のみで焼き上げているため真っ白。シフォンケーキのようにふわふわで、お酒の芳醇な香りが広がります。
カフェではショップでお菓子を購入すれば、お皿に乗せてカフェで食べられるように用意してくれるのも、うれしいサービスです。
ショップの奥には地元・富士吉田で製造した織物雑貨が並びます。富士吉田は1000年以上続く織物の産地。近年は「ハタオリマチ」として、各織物工場のファクトリーブランドも作られています。お気に入りのアイテムを探してみては。
「富士茶庵」の真っ白なのれんは、織物工場「前田源商店」のオーガニックコットンで作ったものだそう。こちらにも注目してみて。
「当時は通りに休むところがあまりなかったので、みんなが楽しい場所になったらいいね、ホッとできる空間を提供できたらと思っていました。家にいるようなくつろぎ感を楽しんでもらえたら」とカフェを作った理由を話す井出さん。2階には靴を脱いであがることで、開放感も感じられます。カフェでゆっくり富士山を眺めて過ごしてみてはいかが。