
ものづくりのまち・蔵前にある人気ショップ「Kakimori(カキモリ)」と「Inkstand by Kakimori(インクスタンド バイ カキモリ)」。ステーショナリーを購入できるだけでなく、自分好みのオーダーでノートとインクが作れるのも人気の理由です。簡単にスマホやパソコンで文字が打てて送れる現代に、温かみのある“手書き”という文化に触れてみませんか。
手作りの製品や技術が大切に引き継がれている蔵前のまち。昔から続く町工場が点在し、その環境に惹かれて新たにオープンするお店も多く、ものづくりのまちとして知られています。
地域の人のつながりが強く、暮らしと営みの距離が近い、懐かしくて新しい蔵前ならではの空気――。そんな蔵前のまちの一角に「Kakimori(カキモリ)」と「Inkstand by Kakimori(インクスタンド バイ カキモリ)」はあります。
「Kakimori」と「Inkstand by Kakimori」は、もとは蔵前の別の場所でオープンしましたが、大変な人気で週末には行列ができるほどに。そこで、倍の広さほどの現在の場所に、2017(平成29)年に「Kakimori」が、2021(令和3)年に「Inkstand by Kakimori」がその中2階に移転。天井が高く、広々としたスペースで新たなスタートを切りました。
「Kakimori」が人気なのは、さまざまなデザインの表紙や中紙、付属のパーツをセレクトして、オリジナルのノートをオーダーできることも理由のひとつ。
オーダーノートは、まず表紙と裏表紙のセレクトからスタート。革、ファブリック、紙など多様な素材が60種類以上もそろっていて、なかには季節限定のものも。すてきなデザインのものがずらりと並んでいて、最初から迷ってしまうほどです。
次のステップは中紙。無地のほか、ドット、罫線、方眼などが入ったものもあって、30種類ほどラインアップ。試し書きもできます。
その次は、リングと留め具です。リングと留め具は数種類あるほか、留め方もセレクト可能。色も複数あるので、表紙に合わせて組み合わせを考えるのも楽しいですね。
そのあとは、店員さんに一式渡して、穴を開けたり、リングを通したり……製本機を使っての手作業です。混み具合いにもよりますが、30分から1時間ほどで、自分だけのノートができあがります。
ノートは使い切っても、表紙はそのままで中紙だけ交換することが可能。一部のページを残したり、前回とは違う種類の紙に替えたり、アレンジもできるので、自分に合った使い心地のよい一冊に育てていけそうです。
奥の階段を上った中2階には「Inkstand by Kakimori」があります。「Kakimori」がプロデュースする、万年筆やペンに使うインクをオーダーメイドで作れるインク専門店です。
カウンターの上には、ベースとなる顔料インクやビーカー、ガラス棒などが並んでいて、なんだか理科の実験のよう。顔料インクは伸びのよいなめらかな書き心地が特徴です。この17種類のベースカラーを使って、自分が作りたい色をイメージしてインクを調合していきます。
まず、好きな色のインクをスポイトで吸い上げて、ビーカーに少量ずつ入れ、ガラス棒で混ぜ合わせていきます。たくさん混ぜると色がにごってしまうので、使えるインクは3色まで。インクができたらガラスペンで試し書きを。45分の時間内なら、比率を変えた調合を繰り返し試すこともできます。
イメージどおりの色ができたら、インクの比率のメモに基づいて店員さんがインクを調合して瓶に詰めてくれます。インクのオーダーは本数制限がないので、同じ調合でも違う調合でも、何本でもオーダーすることが可能。アシンメトリーなぽってりとした形の瓶に入ったオリジナルカラーのインクに愛着がわきます。
「Kakimori」には、オリジナルのものをはじめ、個性のある魅力的なステーショナリーが数多くそろっています。万年筆からクレヨンまで種類豊富な筆記具や、ノート、メモ帳、封筒、便せん、インクなどが店内に並ぶ様子にワクワクさせられます。
筆記具だけ取っても、日本各地の職人さんや工房と協力して作ったつけペン、作家さんが手作業で作ったボールペン、ガラス工芸の伝統が根付くドイツのラウシャ村の職人さんが作ったガラスペンなどなど、ストーリーがあるものばかりです。
また、サンプルが用意されているので、実際に書き心地を試したり、店員さんに相談したりすることで、相性のいいベストなものに出会えます。
自分へのごほうびやふだん使いにはもちろん、心のこもったプレゼントにもぴったりなステーショナリー探しができそうですね。
スマホやパソコンで簡単に文字のやり取りができる現代に、ゆっくりと時間をかけて、温かみのある“手書き”を楽しんでみませんか。