
京都の紅葉名所といえば、永観堂、東福寺、嵐山が知られています。でも、京都の人たちって、ふだんはどこで秋を楽しんでいるのでしょう。意外なようですが、京都御苑をはじめとする町なかにも紅葉の名所が点在。そのひとつに、今年の大河ドラマの主人公、紫式部の邸宅址とされる廬山寺があります。この秋は、平安の昔に思いをはせて、ふらりと京都をめぐってみませんか。
京都の町なか紅葉さんぽは、地下鉄今出川駅すぐの京都御苑からスタート。
かつて京都御所を囲むように並んでいた公家の邸宅跡を公園として整えたのが京都御苑。東西700m、南北1300mの広大な敷地は小川が流れる緑豊かな森となり、町のオアシスとして親しまれています。
どこを歩いても絵になる風景に出会えますが、この季節におすすめしたいのは敷地北東の京都迎賓館周辺。学習院発祥の地には、ひと際存在感のある大イチョウがそびえます。
さらに、京都迎賓館の北にある「母と子の森」の木陰にはベンチとテーブルが置かれており、近くの店でテイクアウトして、ピクニックを楽しむのもよさそうです。また、その付近は広い御苑の中で最も紅葉が遅いエリア。例年は12月初旬まで楽しめます。
京都御苑の東側にある清和院御門を出ると梨木神社があり、幕末から明治にかけて活躍した公家の三條實萬・實美父子が祀られています。
こちらの見どころは参道。カエデは茜に、萩は黄に染まり、また緑を保つ木々もあり、ここでしか見ることのできない色のハーモニーが奏でられます。その様子は、まるで映画のワンシーンのよう。
参道の先には拝殿。燃えるような赤い紅葉が両側から迎えてくれます。また、この秋は、付近に紫式部の暮らした邸宅があったことから、『源氏物語』ゆかりの御朱印が授与されます。錦に彩られた境内で、物語の世界に思いをはせましょう。
梨木神社の参道にたたずむ古い建物は、スペシャルティコーヒーの「Coffee Base NASHINOKI」。神社のご神水で淹れた香り高いコーヒーは、ここでしか味わえない一杯です。境内に湧く「染井の水」は、1000年以上昔の平安時代から使われていました。ふくよかな香り高い水を味わうには、冬でも「水出しコーヒー」がおすすめです。
白いのれんがかかる和風建築は、もともと京都御所にあった春興殿を梨木神社が譲り受けた歴史あるものだそう。縁側や庭先のベンチに腰掛けて、爽やかな風を頬に受けながら、至福の一杯を味わってみませんか。
梨木神社からは、寺町通りを挟み向いに門を構える廬山寺。山門の傍らには「紫式部邸宅址」の碑が立ちます。ここが、1000年を超えるベストセラー『源氏物語』を生み出した紫式部が育ち、結婚生活を送り、娘の賢子を慈しんだ邸宅の跡とされる地です。
ふだんから、本堂には紫式部に関する資料が展示されていますが、今年は特別拝観が行われます。そのひとつが、色彩豊かな源氏絵。病の祈祷のために北山へ出かけた光源氏が、密かに慕っていた義母の藤壺に似た少女を見初める場面は、この大長編小説の最初の山場です。
廬山寺の紅葉は少し早め。ちょうどこの特別公開の時期に合わせて、色鮮やかな紅葉が見られそうですね。
蘆山寺からは寺町通に沿って北へ進み、鴨川に架かる葵橋を渡って徒歩で約20分。まずは、下鴨神社の摂社である河合神社に立ち寄ってみましょう。
女性守護と美人祈願のご利益で賑わう境内ですが、実は散りイチョウの美しいスポットです。神門を入って右側にイチョウの大木がそびえています。
河合神社でお参りをすませたら、下鴨神社の参道でもある糺の森へ。樹齢200年を優に超える巨木が茂る原生林には、清らかな瀬見の小川が流れます。例年、紅葉の時期が遅く12月からが見ごろといわれることも。京都市内の紅葉のラストを飾る下鴨神社。ここの紅葉が終わると、京都はいよいよ冬を迎えます。
町なかの紅葉さんぽはいかがでしたか? 京都御苑、梨木神社、蘆山寺、下鴨神社、いずれも地元の人が足しげく通う穴場スポットです。カフェで一休みしながら、ゆったりと時間をとって訪れてみましょう。